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『ケータイ刑事 THE MOVIE3 モーニング娘。救出大作戦!〜パンドラの箱の秘密』安藤尋監督インタビュー

安藤尋監督写真 腕利きの刑事も頭を悩ます難事件を解決するのは、女子高生にして刑事の“ケータイ刑事”! 主演女優が続々とブレイクしたことでも知られるBS−TBSの人気ドラマ「ケータイ刑事」シリーズが、3度目の映画化を果たします。4年ぶりの劇場版『ケータイ刑事 THE MOVIE3 モーニング娘。救出大作戦!〜パンドラの箱の秘密』は、銭形海(ぜにがた・かい)、銭形命(ぜにがた・めい)、銭形結(ぜにがた・ゆい)と、スクリーン初登場となる6代目から8代目までの“ケータイ刑事”三姉妹が勢揃い。人気アイドルに迫る危機に挑みます。
 メガホンをとったのは、シリーズ第1作「ケータイ刑事 銭形愛」からテレビシリーズの演出を手がける安藤尋監督。海役の大政絢さん、命役の岡本あずささん、結役の岡本杏理さんと、いま大注目の3人の若手女優が共演するのに加え、日本を代表するアイドルグループ・モーニング娘。が本人役として出演するという華やかな趣向に富んだ作品を、幅広い層が楽しめるエンターテイメントとして完成させています。
 人気シリーズを初期から支える監督の明かす「『ケータイ刑事』の作り方」とは?

安藤尋(あんどう・ひろし)監督プロフィール

1965年生まれ、東京都出身。大学在学中から映画制作に携わる。フリーの助監督として様々な作品に参加し、1993年に監督デビュー。その後、劇場用作品のほかビデオ作品、テレビドラマなども手がける。同名コミックを原作とした劇場公開作『blue』(2002年)は国内外で高い評価を受け、大きな注目を集めた。そのほかのおもな劇場公開作品に『ZOO』(2005年)『僕は妹に恋をする』(2006年)など。
「ケータイ刑事」シリーズにはシリーズ第1作の「ケータイ刑事 銭形愛」(2002年〜2003年)から参加し、第5作「ケータイ刑事銭形雷」(2006年)を除く全シリーズに参加。第3作「ケータイ刑事 銭形泪」(2004年)ではチーフ監督をつとめている。

「楽しく笑顔で事件を解決していくのが大事な作品だと思います」

―― 今回の劇場版の企画はいつごろからスタートしたのでしょうか?

安藤:ぼくがプロデューサーの丹羽(多聞アンドリウ)さんから声を掛けてもらったのは(2010年の)2月、3月ころだったと思います。丹羽さんから「近々いいことあるよ」というメールが来ましてね(笑)。「なんだろう?」と思っていたら、しばらくして「『ケータイ刑事 THE MOVIE 3』をやることになったけどどうなのよ?」という話がありまして「もちろんやらせてもらいます」と。だから、企画自体はもっと前から動いていたと思います。

―― では、監督が加わった時点で作品のおおまかな内容は決まっていたのでしょうか?

安藤:そうですね、海、命、結の3人でいくというのも決まっていましたし、ホン(脚本)もある程度できていました。ドラマもそうなんですけど「ケータイ刑事」に関しては、丹羽さんと脚本家の方が大体の外枠を作っていって、かなり煮詰めてから監督が呼ばれるというかたちで最初のシリーズの「ケータイ刑事 銭形愛」のころからやっていますので、映画に関してもそれは同じスタンスでしたね。

―― 今回の劇場版をどういう方向にするかという上で、一番ポイントとなったのはどんなところでしょうか?

安藤尋監督写真

安藤:やっぱり、この3人を集めたということが一番大きかったと思いますね。銭形海の大政絢は、テレビのドラマでは3クール「ケータイ刑事 銭形海」をやっていますし、舞台版の「ケータイ刑事」もやっていて、シリーズの中では大きなウェイトを占めているんです。その大政を中心に据えて、「銭形命」をやった岡本あずさがいて、放映はドラマのほうが先になっていますが映画の撮影で初めて「銭形結」を演じる岡本杏理がいて、ずっとやってきている大政と、中堅でやってきているあずさと、まったく初めての杏理という、この3人をコラボレーションさせるのが一番大きなことだったと思うんですね。それと、その中にモーニング娘。を絡ませて話を作っていくということも、企画としてはすごく大きいことだったと思います。

―― そういう中で、監督から出されたアイディアはありますか?

安藤:あんまりないんですよ(笑)。やっぱり、今回の脚本の林(誠人)さんは一番「ケータイ刑事」を書いているチーフライターですし、丹羽さんと林さんのおふたりで作ったものを「あとは好きなように現場で頼むよ」というノリなんで、ぼくが「こうしましょう、ああしましょう」ということは現場的にはあるんですけど、脚本の段階ではあまりないんですよね(笑)。

―― いま「好きなように」というお話がありましたけど(笑)、とはいえ「ケータイ刑事」って作り手のみなさんにとっては、けっこう難しい作品ではないのかなと思うんですよ。というのは「ケータイ刑事」って事件や犯罪が起きても絶対に深刻にならない作品ですよね。そうやってある種の軽さを保つというのは、けっこうエネルギーのいることではないかなあと。

安藤:ああ、たしかにそういうひとつの不文律というのはありますね。丹羽さんがテレビシリーズを始める当初に言っていたのは、丹羽さんの娘さんが小学生だったんですけど「その子たちの世代が楽しんで観られるものであるべきだ」ということだったんです。娘さんの世代が楽しく観られて嫌な気持ちにならないものでなければダメだという丹羽さんの意志が「ケータイ刑事」の大きな枠として、ドラマにしても映画にしてもずっと流れていると思うんです。だから、新しい監督が参加したときにも、そういう部分は必ず守ってやってきたというところがありますね。テレビでは毎回毎回、殺人事件が起きていますし、今回の映画にしても、よくよく考えたら「こいつどう考えても重罪だろ」ってとんでもないことをやっていたりするんですけど(笑)、そういう罪を描くよりは、それを解決していく銭形姉妹たちのほうにスポットを当てていくという方向で作品の色が決まっているんですよね。どれだけ彼女たちがイキイキと楽しく笑顔で事件を解決していくかというのが大事な作品だと思います。

「いろいろと遊べるのがこのシリーズのよさで、現場的にも楽しいところ」

―― では、そのイキイキと事件を解決する女優陣についておうかがいしたいと思います。銭形海役の大政絢さんと、銭形命役の岡本あずささんは、以前にテレビシリーズでお仕事をされているんですよね。

安藤:ええ、大政とあずさに関しては1話ずつやらせてもらっていますし、ほかの監督がやっていたものも観ていましたので、イメージはすごく持っていたし、そういう意味ではやりやすかったですね。特に大政は女優として北海道から出てきてすぐに「ケータイ刑事」を3クールやっていたと思うので、くる日もくる日も「ケータイ刑事」漬けの日々で、ほんとにすごかったと思うんですよね。ぼくは最初の「銭形愛」からやっているといっても毎回チョコチョコとやらせてもらっているかたちなので、そういう意味では、大政はぼくよりよっぽど「ケータイ刑事」の世界観を知り尽くしているし「銭形海はこういう女の子だ」と肉体化していると思うんですよね。それに、ドラマをやってから2年くらい経っていて、最初会ったころは「ああ、新人の女優さんだな」という感じだったのが、ほんとに堂々としてましたね。彼女は設定では次女ですけど(※1)、今回の映画では下にあずさと杏理がいて、自分が長女の役割なんだという意識をすごく強く持っていてくれて、自分がこの現場を引っ張っていかなきゃならないという気持ちをすごく感じたんです。だから絶対にぶれないし、弱音も吐かないし、ほんとに『THE MOVIE 3』の“座長”だったと思います。

―― 大政さんは「ケータイ刑事」のあとでいろいろな役を演じていますが、その面で変化はお感じになりましたか?

『ケータイ刑事 THE MOVIE3』スチール

『ケータイ刑事 THE MOVIE3』より。銭形海(演:大政絢)、命(演:岡本あずさ)、結(演:岡本杏理)の三姉妹は難波警視総監からの指令で捜査にあたる

安藤:幅もできていると思ったし、大人になりましたよね。やっぱりこのころの女の子って、ちょっと見ない間にすごく大人っぽくなったりするから、ちょっとドキッとするっていうか(笑)、ちょっと驚くくらい大人になっていたなという印象が強いですね。

―― 命役の岡本あずささんはいかがでしょう?

安藤:あずさは、前に会ったころと近い印象ではあったんです。それは成長していないということではなくて、彼女の持っている、ある“ノーブルさ”というかな、それを変わらずに持っている感じがしました。すごく素直に現場の中にスッと入ってくるし、周りをよく見ていて気のつく子なので現場をなごませるというか、ムードメーカー的なところがあって、すごくやりやすいです。それでいて、彼女も自分が「ケータイ刑事 銭形命」を1クールやってきたという自信もあったと思うんです。それと同時に、上にはお姉ちゃんである大政がいて、下に初めての杏理がいて、そういう中ですごくバランスをとっていたと思います。面倒を見るというわけではないんでしょうけど、杏理に気をつかいながらお姉ちゃんともうまくやっていくというか、すごく潤滑油になっていたという印象があります。

―― 結役の岡本杏理さんは、テレビシリーズより映画の撮影が先で、これは歴代の「ケータイ刑事」で初めてのパターンですね。

安藤:そうなんですよ。だから映画で“銭形結”を作っていくということで、ぼく自身も「どうしようかな」という気持ちがあったし、杏理も多少戸惑いはあったと思うんです。だけど、杏理は一見おっとりしているように見えて、わりと度胸がよくてしっかりしたところがある子で、戸惑っていたのは最初のほんとにちょっとの間だけですね。現場が回ったら、わりとすんなり自分の中で役を作っていったというか、たぶん「銭形結をこういうふうにしたいな」というのが彼女の中にもあったと思うんです。その中で、ぼくも「なるほど、結ってこういう子かもな」というところがあったんです。だから、杏理自身が結を自分に引き寄せていったところはあるんじゃないですかね。最終的にひじょうに堂々とやってくれたし、やっぱり「ケータイ刑事」の世界観をすぐわかっていましたね。シリアスな部分とコメディタッチの部分が同居していて、たとえば謎解きのときにはシリアスにやらなくてはならないし、でも全体的にはコメディタッチに包まれているという世界観を、彼女はひじょうに早いうちに理解してくれたなというのはありますね。

―― 共演者も個性的な方々ばかりですが、あれだけ芸達者なみなさんが揃っていると、現場的には楽なんでしょうか、大変なんでしょうか?(笑)

安藤:どっちもですね(笑)。やっぱり、みなさん自分の役どころを理解してくれていているので、役作りという意味での演出はしなくていいので、そういったところは助かりますよね。ただ、あんまりそうやっているとやりたい放題になってくるので、そこをどうやって抑えるかと(笑)。でも、助けられる部分は大きいですね。みなさんアイディアも出してくれるし、すごい楽です。たとえば、大杉漣さんは今回が「ケータイ刑事」シリーズに初めての出演なんですけど、キングウリドンアというわけのわからない役をですね(笑)、すごくしっかりキャラクターとして作ってくれて、ひじょうに助かりました。

―― 大杉さんの役は、試写で拝見して「たぶん脚本はここまで細かく書いてないんだろうなあ」と思いました(笑)。

安藤:アハハハ(笑)。そうですね、あそこらへんは完璧に大杉さんのアイディアですね。最初はぼくもどうしようかなと思ってて「大杉さんがなんかやってくれっかなあ」と思っていたら、ほんとにやってくれて(笑)。大杉さんの撮りは1日だったんですけど、ほんとにいろいろアイディアを出してくれて、膨らませてくれるので楽しかったですね。ぼくもだんだん「あ、キングウリドンアっていてもおかしくないよな、いるよな」って思ってきましたから(笑)。
 やっぱり、俳優部さんもいろいろと遊べるのがこのシリーズのよさだと思うんですよね。それをこっちは見守りつつ、いいところをもらっていくという、そういうのが現場的には楽しいところかなと思います。

  • ※1:海、命、結の3人は、5代目ケータイ刑事・銭形雷を長女とする四姉妹という設定。ちなみに初代の銭形愛から4代目・銭形零までも四姉妹で、海たち姉妹とは従姉妹という設定

「モーニング娘。のファンになりました。サインを貰っておけばよかったなって(笑)」

―― 今回の劇場版の大きな目玉となるモーニング娘。の出演ですが、モーニング娘。を「ケータイ刑事」の世界に登場させるにあたって意識されたのはどんな部分でしょうか?

安藤:最初は「モーニング娘。が出るよ」と言われても自分の中で漠然としていて「どうしようかな?」と思ったところはあったんです。ただ、今回の映画ではモーニング娘。がモーニング娘。として出るというかたちなんですよね。もちろん、それは架空のモーニング娘。にはなっちゃいますけど、彼女たち自身という設定で出てくるので「あくまでモーニング娘。でいいんだ」というかたちでやることができたんです。だから、この「ケータイ刑事」の世界の中にモーニング娘。がいて多少違和感があったとしても、それはそれでいいんじゃないかなと。この世界に馴染ませようというよりは、あくまでも「なぜかモーニング娘。がいて、なぜかさらわれてしまって」という位置づけでやらせていただきました。

―― 昔のテレビドラマで、当時のアイドルや人気スポーツ選手なんかが本人としてゲスト出演することがありましたよね。そういうエピソードって妙にワクワクしたりして、今回の劇場版でその感覚を思い出しました。

『ケータイ刑事 THE MOVIE3』スチール

『ケータイ刑事 THE MOVIE3』より。移動中のバスから姿を消してしまったモーニング娘。の行方は?

安藤:ありましたね(笑)。たしかに、そういうところはありますね。もう「ケータイ刑事」の枠というのはガッチリ作りこんであるので、いまおっしゃっていただいたような“ゲスト感”とでも言うんでしょうか、モーニング娘。という存在自体がデカいわけだし、すごくオーラもあるので、その人たちが違和感も含めて入り込んで来てくれるほうが逆に面白いなあというのがありましたね。変にモーニング娘。を「ケータイ刑事」の世界に馴染ませるよりは「なんか知らないけど、モーニング娘。がいてケータイ刑事と一緒に画面に映っているよ! 銭形たちと喋ってるよ!」というほうが、モーニング娘。がモーニング娘。として出てることの意義があると思ったんです。

―― 実際にモーニング娘。とお仕事をされていかがでしたか?

安藤:すごくね、ファンになりました(笑)。サインとか貰っておけばよかったなって。さすがに立場上、言い出せなかったんですけどね(笑)。ほんとに礼儀正しいし、可愛いし。普段話をしてみると、たしかにあの年代の普通の子たちだなって思うんです。だけど、踊って歌ってとなると、途端に近づけないなっていうオーラを発しているし、やっぱり、ぼくなんかはあんまり接点のない人たちでしたね(笑)。すごい楽しかったですよ、モーニング娘。という存在とお仕事ができて。「ああ、俺が“踊って”と言ったらモーニング娘。が踊ってくれてるよ」みたいな、ちょっと得したなって感じでしたね(笑)。でもサインは貰えなかったけど(笑)。一言で言うと、ほんとにいい子たちなんですよ。それに尽きますね。すごくプロ意識も強いし、8人いますけど(※2)全然一糸乱れずにプロとして現場にいて、なにか言えばスッと入っていける子たちですし、現場的にもひじょうに楽でしたね。助かりましたよ。

―― これはご覧になった方のお楽しみだと思うので具体的には書きませんが(笑)、ラストが個人的にすごく好きな感じでした。昔のGSブームのころの映画なんかでもあったと思うんですけど、フィクションとリアルがちょっと交錯するみたいな、胸躍る終わり方だと思います。

安藤:ありがとうございます。ラストは大枠としてはああいう感じと決まっていたんですけど、ぼくとしてはなんとかして完成した映画のようなかたちまでいきたかったんです。撮影のスケジュールなどの問題もあってああいうかたちにするのは難しいんじゃないかという話もあったんですけど、あそこまでいけたのはよかったと思っています。「虚構と実体がひとつの空間にいる」じゃないですけど、おっしゃっていただいたように「ケータイ刑事」の世界と現実が結びつくみたいなワンカットが撮れてよかったです。

―― では最後に、今回の作品を手がけられての感想と、ご覧になる方へのメッセージをお願いします。

安藤:そうですね、ぼくはドラマのほうでは「銭形愛」からずっとやってきていて、今回は映画という媒体でやらせてもらって、すごく嬉しかったというのがまずありますね。もちろん「ケータイ刑事」というひとつの世界観としては変わっていないんですけど、やっぱりテレビは30分なのが映画は90分近くありますし、いろいろな仕掛けも含めてボリュームアップしています。映画でしか出てこないキャラクターもいますし、大ネタ小ネタや、モーニング娘。とのコラボも含めて、見どころはたくさん詰めこんだつもりなので、そういうところを楽しんでもらいたいと思っています。ツッコミを入れてもらっても構いませんから(笑)。
 そして、大政絢と岡本あずさと岡本杏理という3人がひとつの空間の中に出てくるのは、この映画でしか観られないと思いますので、そこは絶対に見逃さずに観てほしいですね。

  • ※2:映画の撮影がおこなわれた2010年5月時点。その後メンバーの卒業と加入があり、2011年2月現在は9人編成

(2010年12月24日/BS−TBSにて収録)

作品スチール

ケータイ刑事 THE MOVIE3 モーニング娘。救出大作戦!〜パンドラの箱の秘密

  • 監督:安藤尋
  • プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ
  • 脚本:林誠人
  • 出演:大政絢 岡本あずさ 岡本杏理 モーニング娘。 ほか

2011年2月5日(土)より池袋テアトルダイアほか全国順次ロードショー

『ケータイ刑事 THE MOVIE3 モーニング娘。救出大作戦!〜パンドラの箱の秘密』の詳しい作品情報はこちら!

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