『市民ポリス69』早見あかりさんインタビュー
エネルギッシュな活動で注目を集めているアイドルグループ・ももいろクローバー。そのメンバーとして活躍する早見あかりさんが『市民ポリス69』で本格的女優デビューを果たします。
柳沢きみおさんの同名コミックを原作に、独特な作品世界作りで定評のある本田隆一監督がメガホンをとった『市民ポリス69』は、いまより3倍ほど物騒になった東京が舞台。増加する都市犯罪を100人の一般市民が“市民ポリス”として取り締まるという突飛な設定のもとで繰り広げられる、異色のアクション・コメディとなっています。
早見さんが演じるのはコンビニの美少女店員・桃。69番目の市民ポリスに選ばれた主人公・芳一彦治郎の運命を大きく変えるきっかけとなるヒロインです。芳一役の酒井敏也さんをはじめとする個性派俳優陣の中で、純粋で清楚だけどなにか秘密のありそうな桃を、撮影時15歳とは思えない多彩な表情でしっかりと演じています。
いま、新たなフィールドへと羽ばたこうとしている期待の新星に、初挑戦のヒロイン役について、そしてこれからの目標について、お話をうかがいました。
早見あかり(はやみ・あかり)さんプロフィール
1995年生まれ、東京都出身。2008年からアイドルグループ・ももいろクローバーのメンバーとして活動を開始。ライブやCDリリースをおこない、2010年12月には単独コンサートを成功させる。同じく2010年には、フェイクドキュメンタリー・ホラー映画『シロメ』(2010年/白石晃士監督)にももいろクローバーとして映画初出演。また、個人としてもモデルなどの活動をおこなっており、2010年の角川文庫・夏の100冊フェア「発見! 角川文庫2010」のイメージキャラクターに起用され話題を集めた。2011年1月、4月10日開催のコンサートをもってももいろクローバーを脱退することを発表。
「“こうやって一から作品を作っていくんだな”というのがわかりました」
―― 映画とは少し雰囲気が変わられていますね。
早見:はい、髪形が変わってます(笑)。
―― 今回『市民ポリス69』への出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?
早見:すごい嬉しくて、楽しそうだなっていう期待もあったんですけど、共演者の方を教えてもらったときに「ヤバイな」って思いました(笑)。酒井敏也さん(芳一彦治郎役)も佐藤二朗さん(コンビニ店長・岡田役)も、いろいろな作品で印象深い役で出ていらっしゃるのを観ていたので、自分が視聴者として観ていた方たちと共演者になるというのはビックリして「大丈夫なのかな?」っていう不安もすごくありました。
―― 『市民ポリス69』はちょっと変わった世界のお話ですよね。内容についてはどう思われました?
髪型がショートとなって映画とは違った雰囲気の早見あかりさん
早見:最初は脚本を読んでもまったく意味がわからなかったです(笑)。読んでいるうちに途中から「ああ、この世界は女子高生が強盗をするのが当たり前の世界なんだ」って気づいて、とんでもない世界だな思って(笑)。でも、いま、この世の中ではありえないことが当たり前の世界だから、逆にそれが面白いなって思いました。
―― そういう世界にはすぐなじめましたか?
早見:楽しかったです、すごく(笑)。この映画はシュールな笑いがすごく多いと思うので、自分もすぐ笑いそうになるってこともあったんですけど、すごい楽しかったし、あと、銃撃戦をやったりとか、普段生きている世界とは違うことだったので楽しかったです。
―― これまでもいろいろなお仕事をされてきたと思うのですが、長編劇映画の現場を経験されていかがでしたか?
早見:「こうやって一から作品を作っていくんだな」というのがわかりました。この映画を通して、お芝居ってやっぱり自分だけど自分じゃない違う人になれるというのが楽しいなって思いました。
―― やっぱり、今回演じた桃という役は、実際の早見さんとはかなり違うキャラクターですか?
早見:うーん……でも、桃の“バイトをしている普通の女の子”という部分とかは、そんなにかけ離れてはいないと思うんですよ。私は15歳で桃は18歳の設定なので歳は離れているんですけど、まったく別物ではないじゃないですか。だからちょっと自分のところも残っているので、逆に面白かったですね。銃を向けられて逃げる場面があるんですけど、そのときはほんとにちょっと怖かったから、けっこう素の私が逃げているところがあったりするので、そういうところも楽しかったです。
―― 映画の監督さんは怖い方もいらっしゃいますが、本田隆一監督はいかがでした? 現場で怒られたりとかはありませんでしたか?(笑)
早見:怒られたりとかはなかったです(笑)。監督が思い描く桃ちゃんと、私が脚本を読んで考えていた桃ちゃんとが、あまりずれていなかったんですね。だからよかったなと思いました。監督からは「芳一さんに対する桃ちゃんは、ほんとに純粋な女の子っていう感じなんだ」と言われて、そういうふうに演じようとしていました。
「声のトーンを変えたり、顔の表情とかに気をつけました」
―― 主演の酒井敏也さんと実際に共演されてみていかがでしたか?
早見:最初は「どうしよう」という気持ちばっかりだったんですけど、酒井さんは撮影の合間にアドバイスをしてくださったりとか、カットがかかったあとの休憩時間とかは普通に優しくしてくださったりしたので、初日の撮影ですごく安心しました。
―― 酒井さんとの共演シーンで、お姫様みたいな格好をしたところがありましたよね。あそこの撮影はどんな感じでした?
『市民ポリス69』より。早見あかりさんが演じる桃は、酒井敏也さん演じる芳一とロマンティックな雰囲気に……
早見:私はももいろクローバーでよくコスプレなんかもするので、いろいろな格好をするのはすごく好きなんです。しかもあのシーンではすごくドレスがフワフワフワってなっていたし、すごく重いんですけど本物っぽくて、髪の毛もグルグルでウィッグを付けたりしていて、楽しかったです。
―― 酒井さんのほかに、佐藤二朗さんや津田寛治さん(輝也役)との共演シーンも多かったですね。おふたりの印象はいかがでしたか?
早見:佐藤さんは、とにかく面白いなって。脚本に書いてあるのを読んだら別に面白いところじゃないセリフでも、佐藤さんが演じているだけでなぜかすごく面白く聞こえたりとか(笑)。演技をしているときも面白いんですけど、演技をしていないときも面白くって、すごくいろいろな話を振ってくれたりして、会話していて楽しかったです。
津田寛治さんは、すごくカッコよかったです。津田さんの演技で印象に残っているところがあるんです。それはコンビニに入ってきて缶コーヒーを一気飲みするところで、そこがすごくカッコよかったですし、私は飲み物を一気飲みするのがすごく苦手なので「すごいなあ」って思いながら見ていました(笑)。
―― 酒井さんと津田さん、佐藤さん、共演なさる相手によって桃のキャラクターがちょっとずつ違うかなという印象を受けたのですが、演じられるときに意識はしていらっしゃいましたか?
早見:監督さんにも「桃はちょっと表裏のある女の子なんだ」というのは最初に言われてて、自分でも脚本を読んでいると「態度が違うな」って思ったんです。セリフが文字で書いてあるのを見るだけでも言葉が全然違くって、だから、自分の中でも声のトーンを変えたり、顔も、芳一さんと話すときは笑顔だけど、津田さんの役と話すときはけっこう無表情だったりとか、そういうところに気をつけました。
―― 佐藤さんとのシーンでは、けっこう醒めた感じでツッコミを入れたりするところもありますよね(笑)。
早見:変わったセリフを掛け合いでやったりするので、すごく変だなと思いました(笑)。よくわからないことを延々と喋るようなお芝居なので(笑)。
―― あそこの掛け合いって台本に全部書いてあるんですか?
早見:ありました!(笑)
―― あ、佐藤さんのアドリブとかじゃなかったんですね(笑)。あれって笑わないようにやるのって大変だったんじゃないですか?(笑)
早見:そうなんですよ、笑わないように気をつけなきゃって思って(笑)。笑ってNGになったことはなかったんですけど、私がセリフを言っているときは、佐藤さんの顔が「ふーん、ふーん」って言いながらどんどん近づいてきて、佐藤さんが言っているときは、なに言っても佐藤さんが面白いんですよ。だから大変でした(笑)。
―― ほかに印象に残っているシーンはありますか?
早見:銃撃戦のところかな。逃げ回るところが楽しかったです。
―― では、そこはご覧になる方にぜひ注目して観ていただきたいところですか?
早見:そうですね、銃撃戦はもちろんですし、ほかにもシュールな笑いがいっぱいあるところを観てもらいたいですね。銃撃戦の間にも面白いことをやっていたり、大きな笑いじゃなくて「クスクス」って笑えるところがいっぱいあると思うんですよ。そういうところを楽しんでもらえたらと思います。
「演技って“なんで自分なのに違う人になれるのかな?”って思えるんです」
―― 今回は桃というヒロインを演じられましたが、今後はどんな役を演じてみたいですか?
早見:今後演じてみたいのは、主役じゃなくて、メチャメチャいっぱい出てくるわけじゃないんだけれど、その人がいないと成り立たないというような、物語のキーパーソンになる人をやってみたいですね。それと、今回は普通に「女の子」というところで自分と被る役だったんですけど、いろいろな役をやってみたいので、殺人鬼とか、ほんとにまったく自分とは無縁の役もやってみたいです。
―― いままでご覧になった映画やドラマで、具体的にこんな役をやってみたいという役ってあります?
早見:殺人鬼ではないですけど、L(※)みたいな役をやってみたいです。ちょっとよくわからないじゃないですか、ずっとお菓子食べていたりとか(笑)。よくわからないけど印象深いし、普段の早見あかりとはまったく別のものをやりたいです。
取材時には映画の中では見られない表情も見せてくれました
―― ブログを拝見したんですが、ご自分のことを「男っぽいサバサバ女子」と書いていらっしゃいましたよね。ちょっと意外だったんですけど。
早見:でも、ほんとにそうなんですよ(笑)。
―― そういう「サバサバ女子」の部分をお芝居で出してみたいとかはありませんか?
早見:そうですね、等身大の自分みたいな役もいいなと思います。学園ものとかで、ちょっと男の子っぽい女の子みたいな役もあるなって思うんです。でも、そういう役よりは殺人鬼とかのほうをやってみたいかな(笑)。自分は自分じゃないですか。演技って「なんで自分なのに違う人になれるのかな?」って思えるから、まったく別の人のほうが面白いっていうのがあるんです。でも(着ている制服を示して)普通にこんな感じの役もやってみたいですよ(笑)。
―― お仕事をされる上で、目標になさっている方はいらっしゃいますか?
早見:柴咲コウさんです。柴咲さんって、役者さんもやってるし、歌手もやっているし、雑誌とかでスチールもやっていらっしゃるじゃないですか。私の将来的なおっきな夢で、いろいろなことができる人、マルチな人になりたいということがあるので、いろいろなことをやるのはカッコいいなあと思います。
―― なるほど、柴咲さんはさっき早見さんがおっしゃっていたような役も演じられていますしね。では最後になりますが、早見さんのこれからの活動への抱負をお願いします。
早見:すごく大きな夢なんですけど、女優さんだけとかモデルさんだけとかじゃなくて、ひとつのことに縛られないでいろいろなことができる人になりたくて、たとえば「この映画ではすごい演技をしてすごい女優さんなのに、なんで同じ人がバラエティ番組で粉を被っているんだろう」みたいな(笑)、そういうなんでもやる人になりたいです。なんでも挑戦したいですね!
- ※:大場つぐみ原作・小畑健作画による人気コミック「DEATH NOTE」の登場人物。実写映画版『デスノート』『デスノート the Last name』(いずれも2006年/金子修介監督)およびスピンオフ映画『L change the WorLd』(2008年/中田秀夫監督)では松山ケンイチさんが演じた
(2011年2月7日/スターダストプロモーションにて収録)