1945年8月、満州にソ連軍の侵攻が始まった。
11年前、森田波子は夫・勇太郎と共に小樽から満州・牡丹江に渡り、「森田酒造」を満州有数の造り酒屋に育て上げ、栄華を極めていた。3人の子供を持ちながらも波子は、かつての恋人である軍人・大杉に再会すると胸をときめかせ、関東軍秘密情報機関の謀報員・氷室に密かに想いを寄せる、自分の意志のままに生きる女だった。しかしその栄光の日々は、永くは続かなかった。勇太郎の留守中、ソ連軍が満州に攻め込み森田酒造は崩壊。波子は2人の子供を抱え、軍用列車にもぐりこむと、夫の行く先である哈爾浜へ向かう。命からがら辿り着いた波子はそこで日本軍の敗戦を知る。夫との再会に喜んだのも束の間、勇太郎は波子の元を去る。そして、落胆する波子の前に現れたのは、阿片で全身を蝕まれた氷室だった…。
|
|