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黒沢清をして「“これはまったく新しい映画だ”と呟いてそれで済まされるものか」と言わしめた問題作が10周年で湧くアジア最大の映画祭であるプサン国際映画祭でのワールドプレミアを経て日本に上陸する。『天然性侵略と模造愛』と名づけられたその作品は、浅野忠信初監督作品『トーリ』を精緻に解析したドキュメンタリー『ソラノ』でもその才能の新たな一面を披露した山岡信貴の最新劇映画である。13年にわたり、4本の長編劇映画をたったひとりで作り上げ、ベルリン国際映画祭をはじめ、全世界の映画祭からの招待が続くアンダーグラウンドの異才―――山岡信貴。
既存の方法論から逸脱した語り口はある意味難解ではあるが、その濃密に作りこまれた映像世界による未知の体験に魅せられ、リピータとなる観客も数多い。『天然性侵略と模造愛』はこれまでのジャンル分け不可能な山岡作品とは違い、一見、SFサスペンスの装いをまとっているが、その枠にとどまることのない深遠なテーマ性とあたかも映画史を一人で作り変えようとするかのような気迫に溢れる斬新な映像作品に仕上がっている。映像のデジタル化が進み、映画の製作そのものに無限の選択肢が生まれつつあるが、デスクトップ1台で作り上げられたこの作品のもつ圧倒的なスケール感と完成度は、21世紀の映画の可能性についての新たなページを開くことになるであろう。
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恋人のマヒルに働かせて、自分はのんびり自堕落な生活を楽しむ青年ナナセ。ある日、不思議なメッセージをきっかけに彼の身辺に異変が起こり始める。どうやら、ナナセそっくりの男がいる。それもひとりやふたりではない。それらの異変の裏にちらつく20年前に失踪した生物科学者の父の影。そして、地球外から来た謎の生命体の死骸…。些細な事件はやがて生物としての人類の危機へとなだれ込んでゆく。
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