|
|
|
遥かなる北の原野に新たなる国の建設をめざして、ヒロイン小松原志乃は、ゼロから旅立った。
明治維新という国家の激変によって、故郷を追われ、北海道移住を命じられた淡路・稲田家の武士とその家族たち。豊穣温暖な美しい島から、未知の国・北海道へ船旅半月。そこには想像を遥かに超える苦難の数々が待ち受けていた。
構想十年。北海道の大自然を舞台に、原野開拓に挑む人々の愛と闘いの歳月を描く壮大な感動ドラマが遂に始動。早くも大きな話題を日本映画界に投じている。
この作品は、北海道の原野に赴いた稲田家主従が、武士という過去の身分を捨て、未曾有の困難を克服して開拓に取り組み、雄々しく未来を切り開いて行く波乱に満ちた物語。知られざる北海道開拓史に新たなスポットを当てながら、真摯な日本女性像とその周囲の人々をスクリーンに描き出す群像ドラマでもある。
酷寒の荒地にまみえ、決して屈することなく開墾の日々を生きる志乃と多恵母子。やがて札幌へと赴いて行方知れずとなる夫の英明。残された二人を陰ながら見守り助ける会津藩残党・アシリカとアイヌ老人・モノクテ。夫探しの旅で危機に陥った志乃を助け、牧場経営を伝授するアメリカ人の牧畜技術者・ダン。移民団を陰で牛耳る商人・倉蔵。映画はこうした登場人物を配して、時代の激変と北海道開拓史を組み込みながら、ダイナミックな群像ドラマを構築して行く。
キャストは大作に相応しい豪華陣。主人公・志乃を演じるのはこの作品が111本目の出演作となる吉永小百合。その他渡辺謙、豊川悦司、柳葉敏郎、石田ゆり子、石原さとみ、平田満、香川照之など多彩なキャスト陣が顔を揃えます。
スタッフは、脚本に女流シナリオライターの第一人者・那須真知子。監督には「ひまわり」「GO」で数々の受章に輝いた行定勲が、「世界の中心で、愛をさけぶ」に次いで初の歴史エンターテイメント大作に挑戦。
北海道・夕張市を拠点として北海道開拓に生きた人々の雄々しき姿を、四季を通じての長期ロケーションによって描く一篇。<北の元気印>を全国に発信する記念碑的作品である。
|
|
|
|
|
日本を大きく激変させた明治維新。それは武家の妻であった一人の女性、小松原志乃の運命をも大きく変えずにはおかなかった。
幕藩体制の終わりと共に、明治政府によって北海道移住を命じられた四国淡路の稲田家主従五百四十六名。明治四年、この移民団は半月に及ぶ船旅の末、言葉も凍てつく北の原野に辿り着いた。
志乃の夫、英明は先遣隊として、すでにこの地に赴き、荒地の開墾に挑んでいた。北海道に自分たちの新しい国の建設をめざす夫の理想と情熱。志乃はその前向きな姿勢に心からの信頼と共感を抱いていた。娘の多恵も鋤や鍬を振るう父を仰ぎ見ていた。原生林の生い茂る酷寒の荒地と闘う志乃たちに、次々と困難が襲いかかってきた。実験田の稲は無残に枯れ、第二次移民団の乗った船が難破。また食料倉庫の火災、そして廃藩置県による武士階級の崩壊など、幾多の試練が相次いだ。失意と絶望の末、淡路へと逃げ帰る者が続出したが、英明をはじめ有志達は、この地に踏み止まる決心を新たにした。志乃も率先して苦難に耐え、一族の心をひとつにまとめていったが、やがてこの地は政府開拓使の支配する所となった。一方ではこの役人に取り入って、倉蔵という商人が土地の顔役に成り上がっていった。このままでは未来がない。英明は農業技術の導入を目的に単身、札幌へと旅立った。だが、半月ほどの約束が何故か遥かにそれを越え、そのまま帰ることがなかった。あらぬ噂が飛び交い、志乃と多恵は孤立したが、二人はあくまでも愛する夫、父を信じて待ち続けた。一方、この志乃と多恵母子の苦境を陰ながら支えてくれる人物が居た。旧会津藩士で五稜郭の残党であるアシリカとアイヌの老人モノクテだった。北海道をさすらうこの謎めいた男たちは、北の原野で生きぬく術を母子に伝授した。やがて志乃と多恵は、行方知れずの英明探しの旅に出た。途中で猛吹雪に遭遇したが、危ういところをアメリカ人の牧場主エドウィン・ダンによって九死に一生を得た。志乃はこの地で外国産の馬に魅入られ、ダンのもとで牧場の経営に打ち込んでいった。
そして五年の歳月が経ち、志乃と多恵は小松原牧場を作るに至った。そうした折、開拓使と結託し、町を牛耳る実力者となっていた倉蔵が志乃を呼びつけて、反政府軍の鎮圧に必要な馬を大量に供出せよと要求してきた。未来にようやく明るい兆しを見出した矢先のことだった。
政府に追われる身のアシリカが、志乃に別れを告げて、再びさすらいの旅に発とうとしたとき、突如、イナゴの大群が襲来し、作物をことごとく食い荒らした。天地を覆うイナゴと壮絶な戦い。明日への希望を失うことなく、開拓地の人々が再建へと着手したそのとき、志乃の前に一人の男が姿を見せた。今や政府役人として移民団を圧するその人こそ、忘れもしない夫、英明だった。時は人間の運命を変えて、いよいよ大きな波乱を呼んでいった。
|
|