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出逢った女は色町で生きる娼婦だった。女を追って男は色町に辿り着くが、女は男の前から行方をくらます。一年後、別の娘を“町”の女として働かせる男の前に、再び女が現れた…。
出逢いと別れを繰り返し、愛と嫉妬、猜疑心が絡み、もつれていく。架空の色町“忍山”を舞台に、肉体で生きる女たちと、彼女達に運命を感じた男の、悦びと哀しみに満ちた官能ラブストーリー。
監督は、アウトローとして生き続ける男女の世界を可笑しくも切なく、濃密さと軽妙さを交えて描き、高い評価を得ている望月六郎。男と女の大胆な感情表現と繊細な関係性をフィルムに定着させる技は、神代辰巳たちが活躍したロマンポルノ時代の魂を継承している。本作でも『鬼火』『恋極道』『皆月』に引き続き、熱く、破天荒に生きる男たち女たちの哀愁漂う恋模様を独自の視点で描き尽くしている。
原作は山之内幸夫が自身の弁護士生活の中で関わった人物から耳にした話を下敷きにした「実録女師」。関西方面に現在もある、売春を町の生業とする地域で生きる人々のバイタリティに満ちたエピソードは一見破天荒だが、そのそこに流れるあまり人間らしい感情は望月監督がもっとも得意とするものであり、彼らの心情に寄り添ったまなざしで演出されている。また出演者たちも脚本を読み込んだ時点で、各キャラクターの生き方に深いシンパシーを感じたと述べ、その様子は画面からも感じ取れる。本作のタイトルは、奥田瑛二が撮影終了後にこの作品を語ったコメントの中で作品の世界観を見事に語った言葉から決定したもので、タイトル題字も奥田の手によるものである。
作品内でさまざまなドラマを巻き起こす登場人物たちは、相手を想う激しい気持ちをそれぞれが内に抱えている。内面を感じさせる演技で、この物語を成立させているのが主演の役者たちだ。
偶然に出逢った女・一美に惚れ抜き、ホストとして出逢った恵利に惚れこまれ、絶えず翻弄される続ける茂を演じるのは北村一輝。ワイルドなセックスアピールと、時折浮かべる哀しげな表情で主人公の感情を繊細に表現している。
娼婦を生業としながらも茂の一途な愛を受け止めるが、あらゆる意味で先の行動が読めない魔性の女・一美を演じるのは高岡早紀。行動、考えが突飛に見える一美の中に、メスの本性を匂わす妖艶な演技で存在感を発する。
援交を持ちかけながら逆に茂に襲われ、愛に目覚める恵利に吉井怜。茂を深く愛するゆえの暴走を見せ、凄まじいまでの執念を見せる。
色町で娼婦たちに愛されながら、男女の道を説く中沢には奥田瑛二。茂に多大な影響を与える“忍山”の中心人物であり、三人の女に愛される役回りを自然体で演じている。
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とあるクラブで茂(北村一輝)は一美(高岡早紀)と出逢った。茂は一美に運命を感じ必死に迫るが、一美は色町“忍山”で生きる女だった。そこはカラダを糧に生きる女たちと、女たちを愛し守る男たちが生きる、時代から取り残された色町だった。町を出てふたりで新たな生活を始めようと茂は望むが、一美は行方をくらます。一美が出所したヤクザの夫の元へと去ったことを知り、力づくで取り戻そうとする茂だったが、一美は茂については来なかった…。
一年後、大阪でホストをしている茂の前に恵利(吉井怜)が現れる。茂に惚れた恵利はその無茶苦茶な性格でどこまでも茂を追い掛け回す。生活を壊された茂は結局、恵利を連れ“忍山”に逃げ込むことになった。三人の女の面倒を見ながら生きる中沢(奥田瑛二)をはじめとする個性的な面々と、一転穏やかな日々を過ごす二人。だが茂がほかの女の面倒をみていることが我慢できない恵利は、激しい嫉妬故の行動をとってしまう。そのことを茂に咎められると、恵利は未練を残しながら去っていった。
そんな茂の前に、夫が再び刑務所に入った一美が現れる。かつての想いがくすぶり続けていた茂は、二人での生活を始める。しかし、一美の夫をネタにした脅迫が“忍山”を脅かす。裏で糸を引いているのは茂を思い続ける恵利だった…。
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