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理解を超える出来事に出会ったとき、人々は恐怖し、混乱します。空を飛ぶ少年が本当に日常の生活の中に出現したなら、人々はどのように反応するでしょうか。『空を飛んだオッチ』は、空を飛べる少年という空想的な主人公を登場させながら、あくまでもリアルな日常と人々に視線が向けられた異色のファンタジー映画です。
1994年「帰郷」で直木賞を受賞した海老沢泰久が86年に発表した「空を飛んだオッチ」を原作に、降旗康男監督の作品に助監督として関わり、多数のテレビ映画を監督してきた澤村正喜が劇場作品の監督に初挑戦。子供たちが本来持っている無限の可能性と、それを閉じ込めてしまいかねない大人たちをチクリと風刺した映画に仕上げました。
かつて日本のどこにもあった美しい大自然を求めて岐阜県飛騨地方でオールロケーションがおこないました。のんびりとした懐かしい風景と村の人々。それがこの映画のもうひとつの「主人公」です。
主人公・オッチのおばあちゃん役を演じるのは日本映画界を代表する女優のひとり、倍賞千恵子。163本目の出演作であり、孫のいるおばあちゃん役を演じるのは初めての挑戦となりました。
そして映画をさらに盛り上げるのは、倍賞の夫でもある小六禮次郎の音楽。映画では初めての夫婦コラボレーションとなりました。夏川りみの歌う「天の子守歌」が小六禮次郎の音楽と合わせて郷愁あふれる映像をいっそう盛り上げています。
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オッチは小学5年生でおばあちゃんとふたり暮し。ある日、メジロ捕りに行くとオッチはうっかり、大きな木から落っこちた。でも不思議なことにかすり傷ひとつ負わなかった。地面にぶつかりそうになったとき、体がなぜか浮かび上がった。オッチは大喜びでおばあちゃんに空を飛べたことを話した。おばあちゃんは決して人に言ってはいけないという。でもオッチは飛びたくてしようがない。体育の授業でちょっとその力を使った。先生もみんなもびっくり。バスケットの選手にも選ばれた。町の小学校との対校試合でも大活躍、すっかり英雄になってしまった。
そんなある日、空を飛んでいるところを同級生のキヨシに見られてしまった。キヨシはいんちきだって騒ぎ出す。最初は信じなかったみんなも、本当だとわかるとオッチのことを気味悪いとか宇宙人とか言いはじめた。でもクラスでただひとりオッチのことをうらやましいと言ってくれたのがまりっぺだった。彼女は足が悪く思うように歩けない。体育の授業も最初から見学に回される。
夏休み。オッチとまりっぺは一緒に昆虫採集をしたり川で泳いだりした。こんなに楽しい夏休みは初めてだった。そんな楽しいときもつかの間、まりっぺのお母さんもオッチのことを警戒して、もう彼女に近づかないでくれと言うのだ。やりきれない哀しみのどん底にオッチは突き落とされる。
そして夏休みがあけてまもなく、事件はおきた…。
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