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別れた妻にカメラを向けた――『サオヤの月』は、もう一度愛するものと向き合うことで、家族とは何かを考える、超私的ドキュメンタリーだ。
監督は、数々のピンク映画や、石井聰亙、斉藤久志などの作品に参加してきた藤川佳三。助監督をやめた彼は、物干し竿を売る商売を始める。そして、自主映画『STILL LIFE』を製作後、協議離婚の末、妻・幸子と別れることになる。独り身になった彼は、家族の再生を図るべく、別れた妻と子供たちにカメラを向け始めた。衝動的に始めた映画作りは、妻との関係から、次第に両親との問題も浮き彫りにしていく…。
私的なドキュメンタリーであるが、彼ら(佳三と幸子)の姿は、男女間に存在する普遍的な問題を映し出す。壊れた夫婦が、過去と対峙し互いを見つめ直すさまは、誰もが抱える、身近な者に対して抱く気持ちの揺れをあらわにする。愛する想いとは? 愛される感覚とは? そして、家族という単位とは?… 相手と向き合うことで、気付かなかった自分を発見する作品でもある。
クラリネット奏者・大熊ワタルとシカラムータが、『豚の報い』に続いて音楽を担当している。
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2001年2月、藤川佳三とその妻・幸子は、協議離婚の末に別れた。佳三は、現実から逃げるように東京を離れ、旅をしながら物干し竿を売っていた。喪失と逃避の中で佳三が考えたこと、それは、もう一度、元・妻と向き合うことだった。東京に帰った佳三は、自分と由希子の日常にカメラを向ける。最初は受け入れなかった幸子も、カメラ越しの執拗な問いかけに渋々付き合い始める…。
過去を振り返るふたり。付き合い始めた頃から結婚生活のこと。互いを撮ることで、夫婦の間に存在した、心と体の問題があらわになる。そしてふたりの心がすれ違い。重ならないさまをカメラは映し出す。佳三は、毎日のように幸子と話をし、次第に自分自身の問題も考え始める。幸子から発せられた「家族の家出」を足掛かりに、ふたりは子供たちを連れて「さおだけ屋」の旅に出る。昔、同じように旅をした思い出の場所でキャンプをして泊まり、再び「家族」をやり直そうとする。そして、佳三は元・妻と子供たちを連れて実家に行くという暴挙に出るのだが…。
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