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ひとりは正義を守る立場と仁義を重んじる組織の人間としての立場の間で揺れ動く潜入捜査官。ひとりは野望を剥き出しにして組織の頂点に登りつめようとする幹部。そしてひとりは、暗い影をひきずりながら己の道を歩む男。誰もがそれぞれの過去を背負い、暴力に彩られた世界を生きている。しかし彼らの数奇な運命は、一発の銃弾を合図に予想も出来ない結末へと進んでいく――。
『ミナミの帝王』シリーズや『BRII』などで圧倒的な存在感を誇示し、今やその名を知らぬ者はない竹内力。時の流れに媚を売らず、テレビ出演もせず、頑ななまでに独自のフィールドで孤独な戦いを繰り広げる男。そんな“最後の大物”がついに動いた。自ら製作総指揮を務め、劇場映画の製作に乗り出したのだ。勧善懲悪からは程遠いキャラクターの深い造形、二重三重に張り巡らされた複雑な設定、そして息苦しいほど濃密で、あまりにも映画的なその世界観…。一体誰が“イヌ”なのか? そして暴力の果てに明らかになる驚くべき真実とは? 出演者は男だけというこの『捨て犬』は、アクションの概念を超えた壮絶なバイオレンス・エレジーであるとともに、『レザボア・ドックス』『インフェルナル・アフェア』を彷彿とさせる衝撃的で重厚なドラマである。さらには映画本来の持つとてつもない面白さに満ち溢れているのである。
出演は、男の哀しみを一身に背負った神崎に竹内力が扮するほか、『アイデン&ティティ』などで際立った存在感を見せ、今後、活動の拠点をハリウッドに移す野村祐人が潜入捜査官・谷原を演じ、悪に手を染めることに嫌悪感を抱きながらも仁義の世界に魅了されていく複雑な心理を絶妙に体現する。また威厳と狡猾さをあわせ持つ組織の幹部、鬼頭に『DISTANCE』『あずみ2』などで強烈な個性を発揮、邦画界が誇る名優として活動を続ける遠藤憲一。クライマックスでの神崎と鬼頭の死闘は本編のハイライトとして観る者の記憶に刻まれるだろう。監督はガンエフェクトのエキスパートとして数々の作品を手掛けた浅生マサヒロ。初監督作とは思えない骨太で巧みな手腕により、この暴力と男気に満ちた作品を完成させた。
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潜入捜査官として吉田組の中枢に潜り込んだ谷原(野村祐人)。彼は対抗組織の仕組んだ自殺弾を見破ったことから、冷酷さの中にも一本筋の通った男、神崎(竹内力)の庇護を受け、次第に非道の世界にへと脚を踏み込んでいく。一方、吉田組幹部の鬼頭(遠藤憲一)は、神埼がかわいがっていた弟分が実は警察の“イヌ”だった過去を根に持ち、神崎潰しの機会を窺っていた。そんな中、台湾の組織との大掛かりの取引がおこなわれる。これを機に組を乗っ取ろうと画策する鬼頭。捜査の最終段階としてこの取引を盗聴するように命じられた谷原。鬼頭の思惑に薄々気づきながらも沈黙を守る神埼。緊張が頂点に達したとき、あるアクシデントをきっかけに壮絶な銃撃戦が勃発、むなしい抗争の果てに衝撃的な真実が次々と明かされていく…。
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