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女性へのナンパ言葉も哲学的な人生論も気取らずに口にする徹。対照的に寡黙な中野。タイプは異なりながらも仲の良いふたりの青年だったが、ふたりの他人への接し方の違いは、彼らと周囲の人々を意外な方向へと誘っていく。
徹を演じるのは『ぼくのおじさん』『KT』などの筒井道隆。デビュー作『バタアシ金魚』の主人公・カオルの十数年後ともいえる人物像を限りなく自然体で演じきっている。中野役には『リリイ・シュシュのすべて』『アニムスアニマ』の忍成修吾、徹に一方的に好意を抱かれる恵美子を『いぬのえいが』『蕨野行』の清水美那。さらに遠藤憲一、高橋里奈、本田博太郎、不破万作、夏八木勲ら日本映画に欠かせない個性派が揃った。
監督は『刑事物語2 りんごの詩』『生きてみたいもう一度・新宿バス放火事件』などの脚本を執筆、1986年に『THE MODS IN 夜のハイウェイ』で監督デビューした渡辺寿。本作では脚本も担当し、人と関わりたいと欲しながらうまく関わることができない現代の人間像を柔らかな言葉のキャッチボールと浮遊感溢れる瑞々しい映像で描き出している。
登場人物たちは他者との関係性を見失い、常識から外れた行動を起こしたりしながらも、大人としてそれぞれの結論を導き出そうとしていく。これは不安定な現代の大人たちへ向けた「大人の青春映画」である。
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警察官の橘徹(筒井道隆)は留置所の看守係。交番勤務の中野(忍成修吾)と独身寮の相部屋で生活している。ふたりは道ですれ違うと冗談を言い合うようないいコンビだった。看守から刑事課に転属することになった徹は、看守として最後の夜、留置所でブルースバンドのライブを開き、得意のブルースハープを披露し、警察官とは思えないような軽妙なMCを飛ばす。
刑事となった徹は、同僚の裕子(高橋里奈)に軽口を飛ばしながら連続窃盗事件の捜査のため鑑識課の作業を手伝っていた。容疑者が捨てたゴミの中から見つけたバラバラの名刺のかけらを合わせていくと、そこにはデザイン事務所の社名と“吉岡恵美子”という名前があった。徹は先輩の刑事・下田(不破万作)とともに恵美子(清水美那)を呼び出し事情を聞こうとするが、恵美子は自分は財布を失くしただけで、窃盗の被害にはあっていないと言い張る。その態度は何かを隠そうとしているようだった。徹はそんな彼女に個人的に興味を抱き出す。彼女のあとを付けてストーカーまがいの行動をとるが、恵美子からは冷たくあしらわれてしまう。それでも懲りずに恵美子を追う徹は、恵美子が中年の男・服部(遠藤憲一)と会っているのを目撃する。
そんな中、女子大生が自宅で殺害される事件が発生する。第一発見者は巡回中の中野だった。現場に駆けつけた徹はある事実に気付く。そして、連続窃盗事件と女子大生殺人事件、ふたつの事件の繋がりが、徹の周囲の人間関係とも複雑に絡み合っていく。
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