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武士の一分

2006年12月1日(金)より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー

2006年/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/121分
イントロダクション
 2002年、山田洋次監督が時代劇に挑んだ『たそがれ清兵衛』は、父と娘の絆を描き、日本アカデミー賞15部門を総なめにし、米国アカデミー賞外国語映画部門にもノミネートされ、語り継がれる傑作となった。2004年、『隠し剣鬼の爪』は身分違いの若い男女の純愛をテーマに据えて、ベルリン国際映画祭コンペティション部門など世界各国の映画祭で上映され、海外の観客の共感を再び集めた。そして2006年、木村拓哉とコラボレーションを組んだ藤沢周平原作・山田時代劇三部作の最後を飾る『武士の一分』が、いよいよヴェールを脱ぐ。
 山田監督が「ストイックなまでに自身を見つめる目には、思わず引きずり込まれる魅力がある。高倉健さんに初めて会ったときのことを思い出した」と絶賛する木村拓哉が演じるのは、失明によって過酷な運命を余儀なくされる主人公、三村新之丞。ウォン・カーウァイ監督『2046』でカンヌ国際映画祭に参加するなど、いまや日本のみならず世界的なクリエイターからも熱い視線を注がれる存在だ。魅力の「目力」を封ずる盲目の剣士、城下でも名の知れた剣の使い手という役作りに、彼が幼少から通った剣道の腕は遺憾なく発揮された。復讐の心を決めた新之丞がひとり庭で闇雲に木刀を振り回すシーン。道場で師匠に教えを乞うシーン。そしてクライマックスの果し合いで見せる「秘剣谺返し」の技など、文字通り付け焼刃でない、木村の太刀捌きが繰り出すリアルな殺陣は見ものだ。
 愛する夫を必死に支える献身的な妻・加世に、元宝塚歌劇団主演娘役の檀れい。銀幕デビューとなる本作では、清潔感あふれる可憐さと、しなやかな強さを併せ持つ女性像を好演している。彼女が演じる「無償の行為」は恋愛の価値観が違う、今の女性たちにも深い共感を呼ぶだろう。
 そんな加世をもてあそび、新之丞と対決する番頭・島田藤弥に歌舞伎役者の坂東三津五郎、代々藩政を担う名門出身の出自をひけらかす鼻持ちならぬ役柄は、映画では初の憎まれ役。その日舞で磨いた華麗な殺陣が、クライマックスの果し合いで木村の実戦剣法と火花を散らす。
 新之丞の叔母・以寧(いね)役は桃井かおり。ハリウッド大作『SAYURI』での好演も記憶に新しいが、おせっかいで憎めない役柄は、静謐な画面に「ユーモアと動き」をもたらす貴重な存在だ。幼い頃から新之丞と加世を知り、毎日若い夫婦に仕え、時には年長者として知恵を働かせる中間(ちゅうげん)・徳平役に、近年は映画、テレビ、舞台に加え、歌舞伎出演も多い笹野高史。さらに新之丞の剣術の師匠・木部に緒形拳、毒見役の事故の責任をとって切腹する広式番・樋口に小林稔侍など、脇を固める芸達者が山田時代劇を盛り上げている。
 また、本作品の特徴のひとつが、主人公・三村新之丞の家を、屋内セットに組んだことにある。目の見えなくなった夫と妻の内面を、天候や雑音に左右されることなく、じっくり撮影するというスタイルが、本作品の世界を描くことに最適と判断されたからだ。『たそがれ清兵衛』、『隠し剣鬼の爪』の撮影・長沼六男、美術・出川三男、音楽・冨田勲、編集・石井巌、録音・岸田和美、衣裳・黒澤和子に照明・中須岳士が加わり、海坂藩のモデル・山形県鶴岡市の精神風土をセットで忠実に再現することを目指した。担当したパートにそれぞれの“一分”が込められている。
ストーリー
 三村新之丞(木村拓哉)は近習組に勤める三十石の下級武士。城下の木部道場で剣術を極め、藩校で秀才と言われながらも、現在の務めは毒見役。不本意で手応えのないお役目に嫌気がさしながらも、美しく気立てのいい妻・加世(檀れい)、父の代から仕える中間の徳平(笹野高史)と、つましくも笑いの絶えない平和な日々を送っていた。
 そんなある日、新之丞の身を、そして心も揺るがす事変が起きた。いつものように役目を務める新之丞が、藩主の昼食に供された貝の毒にあたったのだ。激しい痛みに意識を失い、居宅に運び込まれ、高熱にうなされ続けた新之丞は、加世と徳平の必死の看病で辛くも一命を取り留めたが、猛毒は新之丞の光を奪っていった。  一生を暗闇の中で過ごさねばならないと知った新之丞は、武士としての奉公もかなわず、衣食のすべてに他人の手を借りなければ生きていけないと絶望し、自ら命を絶とうとする。そんな新之丞を加世は涙ながらに思い留まらせるのだった。
 しかし、加世は愛する夫のため口添えを得ようとして罠にはまり、番頭の島田藤弥(坂東三津五郎)に身を捧げてしまう。その行為を夫婦の契りを絶つ裏切りと感じた新之丞は、加世に離縁を言い渡すと、島田との果し合いに挑むべく、剣術の稽古を始める。
 師匠・木部孫八郎(緒形拳)の助太刀の申し出も断り、新之丞はひとり藩内きっての剣の使い手である島田に挑む。「これは武士の一分にかかわることだ」。新之丞は“一分”をかけ、無謀とも思える果し合いに臨むのだった…。
スタッフ
キャスト
監督:山田洋次

原作:藤沢周平「盲目剣谺返し」(「隠し剣秋風抄」文春文庫刊)

製作代表:大谷信義/早河洋/岡素之/佐藤孝/柴田克己/喜多川擴/冨木田道臣/岩田安弘/喜多埜裕明/石崎孟/水野文英/石川治
製作総指揮:迫本淳一
製作:久松猛朗
プロデューサー:深澤宏/山本一郎
脚本:山田洋次/平松恵美子/山本一郎
撮影:長沼六男(J.S.C.)
美術:出川三男
音楽:冨田勲
照明:中須岳士
編集:石井巌
録音:岸田和美
衣裳:黒澤和子
監督助手:花輪金一
装飾:小池直実
音楽プロデューサー:小野寺重之
配給:北川淳一
宣伝:松倉浩二
宣伝プロデューサー:照本良(P2)
スチール:金田正
製作主任:相場貴和/中垣弘人
製作担当:斉藤朋彦/峰順一
制作:松竹株式会社映像企画部
協力:東宝スタジオ

「武士の一分」製作委員会:松竹/テレビ朝日/住友商事/博報堂DYメディアパートナーズ/日販/J-dream/TOKYO FM/読売新聞/Yahoo! JAPAN/マガジンハウス/朝日放送/メ〜テレ
配給:松竹
三村新之丞:木村拓哉
三村加世:檀れい
徳平:笹野高史
樋口作之助:小林稔侍
山崎兵太:赤塚真人
滝川勘十郎:綾田俊樹
加賀山嘉右衛門:近藤公園
波多野東吾:岡本信人
滝川つね:左時枝
玄斎:大地康雄
木部孫八郎:緒形拳
波多野以寧:桃井かおり
島田藤弥:坂東三津五郎

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