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近年、心に染み、泣ける純愛映画のヒットが続いている。先の見えない世の中、予想のつかないことが日々起こっている。変わらないはずの人を愛する心も、少しずつ変わっているのかもしれない。だからこそ、人々は純愛映画は人々の憧れと共感を呼ぶのだろう。『全身と小指』は、世の中の倫理観や道徳、常識にそむく兄妹間の愛、誰にもいえないふたりだけの秘密の恋を描いている。今までの純愛映画の表現から一歩踏み込んだ愛の物語と言える。
主人公・純に、力強く安定した演技で魅了する池内博之。揺れる想いと苦悩を見事に演じている。妹・久美にモデルとしてカリスマ的な人気の福田明子。初主演とは思えないほど堂々とした、そして可憐な存在感にあふれている。共演にテレビやラジオの司会などで馴染み深い恵俊彰、『ハッシュ!』『帰郷』など日本映画に欠かせない独特の存在感を持つ片岡礼子、若者に強い支持を受ける劇団“THE SHAMPOO HAT”を主催する赤堀雅秋、『LOVE KILL KILL』の街田しおん、そして山口美也子、西岡徳馬と個性的なベテラン俳優が脇を固める。
監督・脚本・原作は堀江慶。俳優でもあり、学生時代に製作したオリジナル監督作『グローウィン グローウィン』が学生映画としては異例の高い評価を集め、以降『渋谷怪談』や『ベロニカは死ぬことにした』などを監督、舞台の演出も手掛けるなど多彩な活動を続ける27歳の俊英。“男女の恋愛観の差”というテーマで大学のときから暖めていたオリジナル原作を、7年のときを経てついに映画化した。
壊れそうなくらい繊細で危ういテーマを、海、真っ青な空、緑あふれる草原、ゆったりと流れる時間の中、美しく紡ぎあげた渾身の一作。
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海辺に建つ二階建ての大きな家。純(池内博之)と妹の久美(福田明子)は、部屋の中で禁断の関係を持つ。
それから7年、郊外で“移動デリヘル”のオーナーとして無気力な生活を送る純は、ヘルス嬢のユリ(街田しおん)と曖昧な関係を続けながら、人知れず心理カウンセラーの武田(恵俊彰)の元に通っていた。デリヘルの客として知り合った武田は純の良き理解者であった。純は武田の前で「記憶喪失障害」を装っていた。その純の不可解な行動に気づいていた武田は、純の隠された記憶を探ろうとする。純と久美がふたり映っていた写真を頼りに樹海へと来た武田と純は、アカリ(山口美也子)という女性に出会う。彼女は久美と会ったことがあるらしかったが、なぜ純と久美が樹海に来ていたか、その謎は解き明かされなかった。
そのころ、故郷の家では、長女・美由紀(片岡礼子)の出産に立ち会うため、父・泰三(西岡徳馬)と母・民代(石垣光代)は家を空けていた。ひとり家に残る久美の前に、純が現われる。7年ぶりの再会を果たしたふたり。ぎこちない空気がふたりの間に流れる。それは、ふたりしか知らない兄妹を越えた想いだった…。
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