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『OBSESSION』(02)、『SEVEN DRIVES』(03)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2年連続入選、2005年にはそれらの代表作を集めた特集上映が池袋シネマ・ロサでレイトショー公開され注目を集めた入江悠監督の長編第1作が完成した。
本作は、中国で発生した謎のウイルスが蔓延し、統制法案により「国民保安法」が施行されようとしている近未来の日本を舞台に、冷え切った恋人との関係、弟の死、両親との確執…様々な問題を保留して生きる主人公・陽一郎の漂流と再生を描いたSFタッチのロードムービーである。
また、そのロードムービー然としたスタイルをとりいれながらも、それだけに留まらず、不穏な世界観をベースに様々な要素が取り入れられている。コミカルなアクション、シリアスな人間ドラマ、そしてクライマックスでは積雪3メートルを越える雪上のシーン、頭上を越え墜落していくジェット機……すべてを出し尽くさんばかりの壮大なスケールの世界観を目指した自主映画として製作されつつも、破綻せず長編としてのバランスを保ち、映像・音においでも完成度の高い、貫禄すら感じる作品に仕上がっている。
主演には『ユリイカ』『パビリオン山椒魚』の斉藤陽一郎、ヒロインに鳥栖なおこ(『OBSESSION』)、共演に杉山彦々(『亀虫』『パビリオン山椒魚』)、戸田昌宏(『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』)、冨永昌敬(『パビリオン山椒魚』監督)などの個性溢れる出演陣が顔を揃え、さらには謎のユニット・WONDER AUDIOらによるサウンドトラックもハイクオリティ&多種多様。キャスト・音楽ともにその世界観を彩り、支えるほどの存在感を示している。
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陽一郎(斉藤陽一郎)と倫子(鳥栖なおこ)は東京の隅に住んでいる。陽一郎は肉アレルギー、倫子は摂食障害に悩んでいる。近頃ではふたりの同居生活には喧嘩が絶えない。
そんなある日、中国大陸東北部から発生した新種の《カニエ・ウイルス》が日本に上陸し、次第に猛威をふるっていく。日本の亜種《カニエ・ウイルス》は、少しずつ人々の感染し、世の中を緩やかに歪めていく。人々は知らぬ間に感染し、ワクチンの開発も追いつかない。そして陽一郎の弟・浩次(藤井樹)が《カニエ・ウイルス》に感染してしまい、命を落とす。浩次の遺骨を届けるため、陽一郎と倫子は陽一郎の実家へと向かうが、《カニエ・ウイルス》の影響からか、思うように電車は進まない。途中下車したふたりはひょんなことから車を手に入れ、険悪なムードのまま旅が続く。
途中、木下毛利と名乗るバックパッカー風の謎の男(杉山彦々)も乗せ、ようやくたどり着いた陽一郎の地元は、都内よりもさらに不穏な空気に満ちていた…。
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