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卍 まんじ

2006年3月25日(土)より、ユーロスペースにてレイトショー

2005年/日本/カラー/80分
イントロダクション
 女と女。肉体と肉体。欲望と欲望。些細な好奇心からはじめた遊戯がいつしか陶酔へと変わり、許されぬ肉欲に自我を開放しながら気付かぬうちに破滅へ向かう。そこにあるのは嘘か真か。幻か現実か。ただひとつ確かなのは、一度脚を踏み入れてしまった禁断の世界を失って生きるのこの世は地獄、ということだけ…。
 文豪・谷崎潤一郎によって1928年(昭和3年)に発表された問題作「卍」。同性愛をテーマに、稀有な経験を告白するひとりの女の説話体で書かれたこの小説は、昭和が始まったばかりの日本にセンセーションを巻き起こした。この官能物語は時代を越えて多くの映画人を魅了し、古くは鬼才・増村保造監督が若尾文子と岸田今日子を主演に手掛けた作品、樋口可南子が体当たりの熱演を見せた作品、さらにはドイツとイタリアの合作による作品など、今までに幾度となく映像化されてきた。そして今、当代きっての異端監督とふたりの美しい女優により、新たな衝撃作が誕生した。
 弁護士の夫を持ち、社会的にも経済的にも恵まれた生活を送る女・園子と、彼女の前に現れた妖艶な女・光子。ふたりは園子の夫も巻き込んで次第に悦楽の迷路へと彷徨いこんでいく。本作はそんな園子の回想をとおし、究極のエロスとタナトスを大胆に描いていく。
 主人公の園子役には写真家・荒木経惟に見初められ、8年の長きにわたって彼の創作活動のミューズとなり続けた秋桜子。天才アラーキーを虜にした魅力に満ち溢れている彼女は、視線ひとつで女の嫉妬と悦びを体現する。彼女と同性愛の関係を結ぶ光子には『フィラメント』『花と蛇2』の不二子。眩しい肢体を惜しげもなくさらけ出し、エキセントリックな役柄に説得力を与える。そしてドラマ「教師びんびん物語」で一世を風靡し、近年は『花と蛇』『コアラ課長』などで存在感を発揮する野村宏伸が園子の夫・謙二を、『恋する幼虫』『真夜中の弥次さん喜多さん』をはじめ、映画、舞台、テレビで強烈な個性を放つ荒川良々が光子の婚約者・綿貫を演じる。
 監督・脚本は『クルシメさん』『恋する幼虫』『楳図かずお恐怖劇場』の一編『まだらの少女』など、その特異な作風が絶大な支持を集め、カルトな人気を誇る井口昇。背徳の物語をコミカルなまでにカリカリュアライズし、究極の純愛映画の域にまで高めた彼の手腕が存分に堪能できる。
ストーリー
 出会いは天王寺のとある美術学校だった。弁護士の夫を持ち、なに不自由ない裕福な生活を送る園子(秋桜子)は、校長に描いた絵を揶揄され、悔しさから泣いていた。そこにハンケチを差し出したのがモダンな洋装の女性・光子(不二子)であった。光子は、校長は光子の縁談を破談にするために光子を同性愛者に仕立てようとしており、園子は光子の相手として使われたのだという。園子と光子は、校長に一泡拭かせようと“同性愛ごっこ”をはじめ、周囲にその様子を見せびらかすのだった。
 しかし、ふたりの付き合いは“ごっこ”を越えたものになっていった。園子は夫が不在の間に光子を家に呼び、体を重ね合わせるようになる。園子は光子の美しい肉体にすっかり魅了されてしまっていた。
 その関係はすぐに園子の夫・謙二(野村宏伸)の知るところとなり、園子は光子と会うことを硬く禁じられてしまうが、光子への想いの深さから園子は体に変調をきたし、心配した謙二はしぶしぶながら園子と光子の付き合いを認めるのだった。
 こうして園子と光子は、謙二公認のもと、これまで以上に濃密な関係を繰り返す。しかし、そんな日々は長くは続かなかった。光子には綿貫(荒川良々)という婚約者がいたのだった。狡猾な綿貫は言葉巧みに園子へ近づいて“ふたりで光子を愛し、抜け駆けを許さない”という誓約書に血判を押させると、その誓約書を種に謙二を脅迫してきたのだった。光子は、綿貫の手から逃れるために、心中を装うことを園子に提案する…。
スタッフ
キャスト
原作:谷崎潤一郎「卍」(中央公論社刊)
監督・脚本:井口昇

製作:松下順一
企画:加藤東司/武内健
プロデューサー:今井朝幸/小貫英樹/佐藤嘉一
音楽:清水真里
撮影:武山智則
照明:横路和幸
美術:吉村昌吾
録音:塩原政勝
VE:角本輝夫
編集:斉藤和彦
助監督:村田啓一郎
制作担当:大谷弘

制作:円谷エンターテインメント
製作:アートポート
配給・宣伝:アートポート
柿内園子:秋桜子
徳光光子:不二子
綿貫栄次郎:荒川良々
柿内謙二:野村宏伸

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