
いつか自分の夢を実現させるため、危険な高層ビルの窓拭きで生計を立てる若者たち――。そんな彼らの青春をすがすがしく描いた感動作が誕生した。原作は太宰治賞受賞作家の辻内智貴による同名小説。読者からの熱狂的な支持を集め、早くから映像化が望まれていた作品の、待望の映画化である。
窓拭きをしながらバンド・デビューを目指すタツオを演じるのは、『パッチギ!』で日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、出演作が続々待機中の塩谷瞬。本作ではバンドのボーカルという役柄のため、歌とギターのトレーニングを積んで撮影に臨み、見事な歌声も披露している。タツオの歌に触れ、新たな一歩を踏み出す決意をする加奈子役には『スウィングガールズ』などで注目を集め、NHKテレビ小説の主演も決定、さらなる活躍が期待される貫地谷しほり。手話の特訓を積み、聾唖の女性という難役に挑んでいる。そして、阪神タイガースの投手から俳優に転進した嶋尾康史が、寡黙な中に熱さを秘める萩原役で見事な演技を見せる。タツオや萩原とともに働く若者たちには忍成修吾、脇知弘、川村陽介、高岡蒼甫という旬の若手俳優陣が集結。さらに平田満、オセロの中島知子、鈴木砂羽、仲村トオル、石田えり、近藤芳正、遠藤憲一、村田雄浩と豪華なメンバーが顔を揃えた。また、嶋尾康史の後輩にあたる阪神タイガースの福原忍と安藤優也が友情出演しているのも見逃せない。
監督は長編第1作『花』で高い評価を受けた西谷真一。撮影はカンヌ映画祭大賞作『殯の森』も手掛けたベテラン・中野英世。手持ちカメラを駆使した高層ビルの窓拭きシーンは見所のひとつだ。
劇中でタツオが歌う曲を提供したのはメンバー全員20歳の新進4人組バンド・MOLE HILL。新曲『青空』を映画のために書き下ろし、メンバーふたりはバンドメンバー役で映画に出演もしている。
この作品は、自分探しに懸命な若者たちへ勇気と希望を贈る応援歌でもある。この映画を観終わったとき、きっとだれもが青空を見上げて深呼吸したくなるに違いない。

バンドでデビューを目指しながら、ビルの窓拭きの仕事をしているタツオ(塩谷瞬)と勇介(忍成修吾)。ふたりが働く清掃会社には、一馬(川村陽介)や工藤(脇知弘)たち、自分の夢を持ちながら仕事に励む若者たちが集まっていた。彼らの兄貴分である萩原(嶋尾康史)も、妻の恵子(鈴木砂羽)に支えられながら、作家を目指して文章を綴り続けていた。
ある日、タツオは清掃中にビルで働くOLとぶつかってしまう。彼女は擦り傷を負ったタツオに絆創膏を渡すと、なにも言わずに立ち去っていく。それから数日後、公園でバンドの練習をするタツオたちをひとりの女性が見つめていた。タツオは彼女が数日前のOLだと気づく。その女性・加奈子(貫地谷しほり)は耳が聞こえなかったが、タツオたちの演奏を全身で感じて感動の涙を流していた。その日から、タツオと加奈子のささやかな交流が始まった。
一方、一馬は、タツオたちがバイトで演奏をしているキャバレーのホステス・シルビア(中島知子)に真剣な恋をしていた。彼女との結婚を夢見て、これまで以上に仕事に励む一馬だったが、ビルの清掃作業中に転落事故を起こしてしまう――。