
『VERSUS』『楽園 〜流されて〜』などに主演し、そのたしかな演技力とクールなたたずまいで日本映画界の中で際立った個性を発揮する榊英雄。俳優としてだけではなく、オムニバス映画の一編「軍団刑事」や「終着駅の次の駅」で、監督としても高い評価を得ている。その榊英雄待望の初長編監督作品が『GROW −愚郎−』である。
なにをやってもうまくいかずに自信を失った高校生・敦の前に現われた、おっさんたちにしか見えない不良学生3人組。口が悪くて粗野だけど、義理に厚い彼らと接するうちに、敦の心に何かが芽生え始める。破天荒な設定と次々に登場する強烈なキャラに笑いながらも、核となるのは「男の友情」と少年の成長の物語。勇気を持ってスタートラインに立つ敦の姿は、観る者に大きな感動を与えるに違いない。
主人公・敦を演じるのは、『パッチギ!』やテレビ「タイガー&ドラゴン」の桐谷健太。パソコンの中にしか居場所がなく、立ち向かうことを知らない少年が“男”へと変貌していく様を爽やかに演じきる。敦と友情を結ぶ不良3人組には寺島進、木下ほうか、菅田俊という、日本映画界を代表する、強面で濃い俳優が勢揃い。おバカだけれど最高に男前なトリオをハイテンションに演じる。クラスでただひとり敦をかばうヒロインの晴香には『子宮の記憶 ここにあなたがいる』で大胆な演技を披露した若手女優の中村映里子。さらに遠藤憲一、深浦加奈子、板尾創路、渡辺裕之、三上真史など、若手からベテランまで個性豊かな面々が脇を固める。
音楽は榊監督とは私生活でもパートナーである榊いずみ。また、シナトラやMILK&WATER ら、人気インディーズバンドの楽曲が、熱いドラマをさらにヒートアップさせる。

家庭では酒乱の父親の暴力に悩み、学校ではクラスメイトのいじめから逃げ回る。そんな情けない日々を送る高校生の敦(桐谷健太)。自分には生きる価値がないと悲観した敦は、人生に終止符を打とうと、首を吊るつもりで廃墟に忍び込む。ところが、天井から吊るした紐に手をかけたそのとき、長ランを着込んだ奇妙な三人組が現われた! 泰三(寺島進)、鉄治(菅田俊)、淳一(木下ほうか)、どうみてもオッサンにしか見えない3人のとてつもないオーラとキレのいい掛け合いに圧倒され、敦はひとまず自殺を思いとどまる。そして毎日、放課後には廃墟に通い、3人のような“男前”を目指すことになる。
そんな中、いつものように滑川(三上真史)たちいじめグループから逃げ回る敦を見た体育教師の石橋(渡辺裕之)は、その逃げ足の速さに目をつけ、強引に陸上部へと引き入れる。はじめは戸惑う敦だったが、次第に走ることの楽しさに目覚め、自分に自信をつけはじめる。そんな敦を同級生の晴香(中村映里子)は嬉しそうに見守っていた。
順調に記録を伸ばす敦は、競技会に出場することになった。喜ぶ敦は、大会で優勝したら泰三たち3人のチームの一員にして欲しいと頼み込む。その言葉に、渋りながらもOKを出す泰三たち。実は泰三たちには、敦に伝えていない重大な秘密があったのだった……。