目が見えず、耳が聞こえない、という障害がある78歳の老婦人・北崎絹子(小林綾子)の小さな家が、山口県のある地方の雑木林のなかにポツンと立っていた。
ヘルパーの協力を得ながらも、ひとりで自立して生活している絹子の家に、リストカットを繰り返し、若い人生に終止符をうとうとしている15歳の少年・山口祐介(登坂紘光)がやってくる。盲聾者ではあるが、ひとりでなんでも手際よくこなす絹子の生活ぶりや、前向きに生きる魂に触れ、祐介は自分を見つめ直しはじめる。
祐介に語った絹子の人生は、実に壮絶であった。あこがれの男性と結ばれたものの、夫が出征、帰還したときには失明の身となっていた。さらに悲運とも言うべきか、失聴も加わり、光と音を失ってしまったのである。
「コミュニケーションはどうするの?」「どうやって生活しているの?」。祐介は問いかける。
「みんなちがってみんないい」と、金子みすゞの詩を明るく口ずさむ絹子のたくましい生き様に強く惹かれていく祐介は、ある決心をする――。
ヘレンケラーを知っていますか
監督:中山節夫
出演:小林綾子 登坂紘光 鈴木 重輝 左時枝 ほか
3月24日(土)より銀座シネパトスにてロードショー 全国順次公開
2005年/カラー/ビスタサイズ/105分
「みんなちがってみんないい」。これは、山口県出身の詩人・金子みすゞの有名な詩「私と小鳥と鈴と」の一節である。この、多くの人に愛された一節をの本質を問おうとする映画が『ヘレンケラーを知っていますか』である。
光と音を失いつつも、みすゞの詩を心の支えに困難に立ち向かってきたひとりの老女。自ら命を絶とうとしていた少年は、老女と出会い、生き抜くこと、希望を持つこと、そして励ますことの大切さを知るのだった…。
視力と聴力を失いつつもたくましく生きる主人公・絹子には、現在も山口県で暮らす実在のモデルがいる。日本の盲聾者福祉運動の先駆者となり「日本のヘレンケラー」と呼ばれたこの女性の人生をヒントに、映画では架空の人物が設定され、ストーリーが展開していく。
絹子を演じるのは1983年にNHK朝の連続テレビ小説「おしん」で一躍国民的人気女優となった小林綾子。映画初主演となる本作では、15歳から78歳までの絹子の半生を体当たりで演じている。かつてドラマで金子みすゞ役を演じ、みすゞの詩の朗読CDも発表している小林にとって、みすゞの詩が重要なメッセージとして使われている本作は運命的な縁で結ばれていたと言えるだろう。
監督は『ブリキの勲章』『やがて…春』『あかね色の空を見たよ』など、一貫して社会に対するメッセージを込めた作品を送り出し続けている中山節夫。本作でも、さまざまな問題があふれる現代社会に「人を思いやる大切さ」を伝えている。
本作は下関市でロケをおこなうなど、下関フィルムコミッションや下関市民の協力のもと、山口県でオールロケで撮影された。2006年6月から山口県長門市を皮切りに上映され、2007年春、待望の東京公開を果たす。
下関弁で語られる暖かな表現と、情緒あふれる町の風景が、感動の物語を演出する。山口から全国へ発せられる、無限の愛のメッセージである。
- 北崎絹子:小林綾子
- 山口祐介:登坂紘光
- 西村達郎(17歳〜37歳):鈴木重輝
- 西村達郎(80歳):夏八木勲
- 西村光子:左時枝
- 北崎イソ:倉野章子
- 北崎伊三郎:高橋長英
- 山口孝夫:酒向芳
- 山口弘美:斉藤とも子
- 佐々木先生:倉崎青児
- 大溝里子:岡本易代
- ヘルパー:きゃんひとみ
- 桐生雅子:中川杏奈
- プロデューサー:山本末男
- 監督:中山節夫
- 脚本:下島三重子
- ラインプロデューサー:佐々木裕二
- 手話コーディネーター:綾城明美
- 方言指導:武部忠夫/木原豊美
- 手話指導:南留花
- 字幕製作:飯村優子
- 振付:黒沢美香
- 撮影:古山正
- 音楽:小室等
- 照明:清野俊博
- 録音:福田伸
- 美術:高橋光
- 記録:石川恵与
- 編集:川島章正
- 助監督:山田敏久
- 制作担当:斉藤寛
- 企画・制作:(有)山口県映画センター/映画「ヘレンケラーを知っていますか」製作委員会/山口県シネクラブ協議会