大正15年7月12日。鹿児島の第七高等学校造士館と、熊本の第五高等学校の対抗野球戦がおこなわれていた。郷土の誇りを背負った因縁と伝統の対戦は七高に凱歌が上がり、5年連続の勝利に酔いしれながら七高寮歌「北辰斜に」が大合唱される。その中心には、ミスター七高生としてその名を轟かせる草野正吾(緒形直人)がいた――。
平成13年、夏。七高卒業生で、戦後は開業医を営んでいた上田勝弥(三國連太郎)は病院を息子の勝弘(林隆三)に譲り、いまは悠々自適の生活。そんな上田のもとを七高OBの本田(神山繁)が同窓会報の取材で訪れる。上田は、孫の勝男(林征生)を前に、先輩の草野や学友たちとの七高時代の思い出を語る。
しかし、かつて七高野球部のエースであった上田は、七高野球部創部100周年を記念して開催される五高との記念試合には出席しないと言う。その返事に戸惑う実行委員会の幹事たち。
戦後60年、復員して以来、青春の日々を過ごした鹿児島にも、生まれ故郷である熊本の人吉にも足を向けようとしない上田。そこには、戦場での悔恨と慙愧という深く重い理由があった――。
北辰斜にさすところ
監督:神山征二郎
出演:三國連太郎 緒形直人 林隆三 佐々木愛 ほか
2007年12月22日(土)よりシネマスクエアとうきゅうにてロードショー
2007年/カラー/ビスタサイズ/DTSステレオ/111分
かつて日本には、旧制高等学校という教育機関があった。明治時代に生まれた旧制高校は、伝統の中で学問を学ぶと同時に、狭き門をくぐりぬけたエリートたちが切磋琢磨しながら人格を形成する場でもあった。そして、太平洋戦争によって、多くの若い命が散っていき、旧制高校で育まれた絆が引き裂かれていったのであった……。
『北辰斜(ほくしんななめ)にさすところ』は、鹿児島の第七高等学校を舞台に、戦禍による永遠の決別を挟みながら、旧制高校で学んだ学友たちの在りし日と現在の姿が交互に描かれる骨太な群像ドラマである。
監督は『ハチ公物語』『遠き落日』『大河の一滴』『草の乱』などで知られるベテラン神山征二郎。本作は記念すべき25本目の監督作となる。
主人公である上田勝弥を演じるのは、名実ともに日本を代表する名優である三國連太郎。自身も中国に出征し、同じ部隊の仲間の多くを失った経験を持つ彼が、亡き友への思いを込めて熱演する。若き日の勝弥の先輩で、七高の名物男として知られる草野正吾を演じるのは緒形直人。弊衣破帽な旧制高校生ぶりは見ものだ。また、林隆三とその息子・林征生が親子役で初共演を果たすのも話題のひとつ。そして、惜しくも公開前に逝去した名優・北村和夫をはじめ、佐々木愛、坂上二郎、神山繁、織本順吉、佐々木すみ江、鈴木瑞穂など、日本映画界を支えてきたベテラン俳優陣が顔を揃える。
本作は、弁護士の廣田稔が発起人となった「映画『北辰斜にさすところ』製作委員会」が中心となり、多くの人々の支援によって製作された。かつての旧制高校にあった豊かな自由と純粋な理念、誇り高き精神。それは現代社会に生きる我々がもう1度見つめなおすべきもとではないだろうか。いま、振り返るべき歴史とはなにか、そこからなにを学ぶべきか。『北辰斜にさすところ』はあらゆる世代にそれを問いかける。
- 土田勝弥:三國連太郎
- 草野正吾:緒形直人
- 上田勝弘:林隆三
- 橋本富子:佐々木愛
- 上田勝弥(青年時代):和田光司(新人)
- 上田勝男:林征生(新人)
- 西崎京子:清水美那
- 露崎真知子:大西麻恵
- 重松俊明:波岡一喜
- 本田一:神山繁
- 海路政夫:北村和夫
- 西崎浩一:織本順吉
- 西崎公子:佐々木すみ江
- 財前一郎:鈴木瑞穂
- 天本英人:犬塚弘
- 村田聡:滝田裕介
- 赤木吾郎:土屋嘉男
- 西村順造:樋浦勉
- 下村永吉:三遊亭歌之介
- 北島憲吉:高橋長英
- 上田陽子:斉藤とも子
- 伊藤教授:河原崎建三
- 宇土虎雄:永島敏行
- 真田喜信:坂上二郎
- ナレーター:山本圭
- 監督:神山征二郎
- 製作:廣田稔/神山征二郎
- 原作:宝積光「記念試合」(小学館刊)
- 脚本:宝積光/神山征二郎
- 音楽:和田薫
- 撮影:伊藤嘉宏
- 美術:春木章
- 照明:渡辺雄二
- 録音:武進
- 編集:蛭田智子
- 装飾:相田敏春
- 音響効果:伊藤進一
- 視覚効果:松本肇
- プロデューサー:鈴木トシ子(製作委員会)/森太郎
- 助監督:日垣一博
- 製作担当:曽根晋
- 監督補:神山兼三
- 製作総務/キャスティング担当:加藤伸世
- 製作:映画「北辰斜にさすところ」製作委員会/神山プロダクション
- 協賛:日本航空
- 支援:文化庁
- 宣伝:ライスタウンカンパニー
- 配給:東京テアトル