女優を夢見て上京してきた牧田碧(三津谷葉子)は、アルバイトで生活費を稼ぎながら劇団のレッスンに明け暮れる日々を過ごしている。ある日、碧は同じ劇団員で友人の倉崎麻美(三浦敦子)から合コンに誘われる。それは、高級ホテルのラウンジを借り切り高級シャンパンやキャビアが振る舞われる、碧の想像をはるかに越えた豪華なパーティーだった。麻美は投資会社・藤代ファンドの若き社長・藤代浩太(七世一樹)と交際しており、碧をこの起業家や御曹司たちの集まるパーティーへと誘ったのだった。藤代と甘いムードの麻美をよそに、慣れない場に緊張する碧はついつい飲みすぎて酩酊状態になってしまう。そんな碧を家まで送ってくれたのは小田島悟(金子昇)。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続ける新興ITベンチャー企業・ザップスターの社長であった。
パーティーからしばらく経ったころ、碧はネットシネマで小さいながらも役を得る。なかなかセリフを覚えられず、ぎこちない演技に監督から怒号が飛ぶ。そんな中、撮影現場に小田島が現われる。ザップスターがこの映画のスポンサーだったのだ。思わぬ再会を果たした小田島は、碧に「がんばらない人間に運は回ってこない」と励ましの言葉をかける。その言葉に素直な礼を返す碧に好感を感じた小田島は、彼女を食事へと誘う。高級ブティックで服を選び、美容院でメイクを施し、すっかりセレブへと変身した碧は、小田島とともに高級フレンチのテーブルへとつくのだった。
小田島の言葉を胸に、碧は今まで以上に稽古に励むようになる。碧と小田島の仲を知った麻美は、冷やかすように小田島に妻がいることを告げる。碧に問いただされた小田島は、妻の存在を隠していたことを詫びながら、妻の藍(喜多嶋舞)とは関係が冷め切っていることを告白する。「これからも会って欲しい」という小田島の言葉にうなづく碧。そしてふたりの関係は急速に深まっていく――。
ITバブルと寝た女たち
監督:佐藤太
出演:三津谷葉子 金子昇 ほか
2007年6月9日(土)よりキネカ大森にて2週間限定ロードショー
2007年/日本/カラー/DV/ステレオ/95分
田舎から芸能界を目指して上京した女の子が、一夜にして若きITベンチャーの雄と恋に落ちる。高級ブランド、高級レストラン、高級外車に高級マンション、そして自家用ヘリコプター。格差の広がる現代社会において、彼女が目にしたのは「勝ち組」そのもの。しかし、彼女が目にしていた大半のものは砂上の楼閣、まさに「虚像」だったのだ…。
「極道の妻たち」「私を抱いてそしてキスして」「イエローキャブ」など、取材に基づいたノンフィクションに定評のある異色の女流作家・家田荘子。その代表作のひとつであり、過去3度映画化された「バブルと寝た女たち」が4度目の映画化を果たした。不動産バブルに踊った銀座の夜の世界を舞台にした旧作とは異なり、山村一間による脚本はITバブルという虚像の世界に翻弄された若い男女の純愛と悲劇を描いている。
主人公の牧田碧を演じるのは、グラビアで注目され、最近は女優としての活躍が目覚ましい三津谷葉子。ひとりの男を一途に愛しながらもITバブルに弄ばれる純なキャラクターを熱演。また、過去にない大胆なベッドシーンを体当たりで演じている。碧を華やかな世界へといざなう若きITベンチャー企業の社長・小田島悟を「百獣戦隊ガオレンジャー」でブレイク、甘いマスクとワイルドな面をあわせ持ち幅広い役をこなす金子昇が演じている。さらに、『LOVEHOTELS ―ラヴホテルズ―』で大胆なヌードを披露した三浦敦子がさらにハードな演技に挑戦しているほか、喜多嶋舞、中島宏海といったベテラン女優陣が脇を固めている。
監督は金子修介や椎名誠の助監督をつとめ、2004年に長編デビュー作『インディアン・サマー』で注目を集めた佐藤太。「ITバブル崩壊」の中であぶりだされる人間性を描き出している。
- 牧田碧:三津谷葉子
- 小田島悟:金子昇
- 倉崎麻美:三浦敦子
- 藤代浩太:七世一樹
- 家田荘子(特別出演)
- 時枝町子:中島宏海
- 小田島藍:喜多嶋舞
- 企画・製作:松下順一
- プロデューサー:米山紳/岡田晃基
- 原作:家田荘子「バブルと寝た女たち」(講談社刊)
- 脚本:山村一問
- 音楽:MOKU
- 撮影:岡雅一
- 照明:関輝久
- 録音:山田均
- 美術:石毛朗
- 助監督:水内宏征
- 製作担当:高橋潤
- 監督:佐藤太
- 製作:アートポート
- 制作:円谷エンターテインメント
- 配給・宣伝:アートポート
- 宣伝協力:アルゴピクチャーズ