
出版社に勤めるリョウは、新しいアパートに引っ越したばかり。面白いこともなくダラダラと日常を過ごしていた。
ある日、リョウは、隣室から漏れる女の声に気付いた。ちょっとした好奇心から、リョウは壁に耳を寄せ、隣室の音に耳をすます…。
電話の声…シャワーの音…そして喘ぎ声…
薄い壁越しに、見たこともない“隣室の女”の生活が漏れ伝わってくる。
ピンクのパジャマに、クマのぬいぐるみ。可愛くてピュアなロリータ系。だけどベッドの上では…。
壁越しの音だけを頼りに、リョウは次第に妄想を膨らませ、ついには想像の中の“隣室の女”に恋心さえ抱き始めていた。
そのころ、隣室の女=皐月は、毎日かかる脅迫電話に悩まされていた。「オマエヲ メチャクチャニ シタイ…」ひとり暮らしの皐月は、唯一の頼りである彼氏の雄太に相談を持ちかけるが、一向に脅迫電話が収まる気配はない。どうすることもできずに、彼女は見えない恐怖から目をそらすかのように、雄太の腕に激しく抱かれるのだった。 そのすべてを、リョウに聴かれていることなど知らないまま…。
一方、リョウは皐月に近付くため、徐々にその行動をエスカレートさせ始める。皐月の名前を調べ、ゴミ袋を漁り、職場を探り当てる。そしてついに、“リアル”な皐月に出会うのだった。偶然を装い何度も皐月の前に現われるリョウ。皐月も徐々にリョウに心を開き始め、ふたりの仲は急速に縮まっていく。
聴かれた女と聴く男、そして、ふたりの間を隔てる薄い壁。 その壁を超えて彼らが出会うとき、それぞれの物語は交錯し、最悪の方向へと一気に動き出すのだった…。