昭和45年春、金沢――。春日高校に不思議な魅力を持つ転校生・叶小夜子(鈴木杏)がやってくる。長くツヤのある黒髪、吸い込まれるような瞳…。同じクラスの麻井由似子(本仮屋ユイカ)やクラスメイトたちは、たちまち小夜子の虜になる。だが、遠野涼(勝地涼)だけは、小夜子の視線にただならぬ気配を感じていた。
小夜子は、このあたりの土地のほとんどを所有する名家、叶家の娘だった。涼の義理の兄である遠野暁(深水元基)は、小夜子と政略結婚させられそうになっていると涼に語る。建設会社を経営する暁の父は、叶家が所有する土地を手に入れようとしていたのだ。
しかし、小夜子は“叶家の女は、決して幸せになれない”という宿命を背負っていた。呪われた“天女の血”を引くといわれる叶家では、男が続々と死亡していくのだ。そんな宿命に抗い、血の呪縛を解くべく、自分らしく、強く生きる小夜子。だが、周りでは、小夜子と関わった者たちが、次々と命を落としていく。
そして小夜子が現れたことで、暁と涼の関係も歯車が狂い始めていく。暁はいつしか本気で小夜子を愛し執着し始め、自分を見失っていく。一方、涼も感情を抑えつつも、小夜子への想いが募っていく…。
叶家の“天女伝説”が明らかになるにつれ、叶家と遠野家の因縁、血をめぐる輪廻が明らかになっていく。暁、涼、小夜子の三角関係は、12年前の火事で失ったとされる“天女の衣”が導いた必然なのか? 小夜子は、血の呪縛から解放され、愛をつかむことができるのか?
吉祥天女
監督:及川中
出演:鈴木杏 本仮屋ユイカ 勝地涼 ほか
2007年6月30日(土)より渋谷Q−AXシネマほかにて全国ロードショー
2007年/日本/カラー/116分
心のうちを見透かすような大きな瞳、長くツヤのある黒髪――。男も女も惑わせる完璧な美貌と、17歳とは思えぬ妖艶な雰囲気を持つ、ミステリアスな少女・叶小夜子。理由あって実家を離れて育ち、12年ぶりに叶家に戻った彼女は、出会う者すべての心を奪い、虜にしていく。いったい何故、誰もが“小夜子”に惹きつけられるのか?
「BANANA FISH」をはじめ、数々の傑作コミックの生みの親として知られる吉田秋生の傑作少女コミックが待望の完全映画化を果たした。原作「吉祥天女」は“小夜子”という強烈なキャラクターの魅力から、熱狂的ファンも多く、少女コミックの枠を超え、男女問わず幅広い層から支持されている。これまでに約250万部の売り上げを記録し、1984年に小学館漫画賞を受賞している本作は、吉田の代表作のひとつとなっている。
そんな原作を映画化したのは、『ラヴァーズ・キス』(02)に引き続き、吉田作品の映像化に挑む及川中。完全映画化が待ち望まれた最高のヒロイン“小夜子”の物語を、美しくも切なく、幻想的にスクリーンで描き出す。
天女の系譜に生まれた悲劇のヒロイン・叶小夜子を演じるのは、鈴木杏。『頭文字[イニシャル]D』(05)で日本のみならずアジアでの人気も獲得し、若手実力派としてさらなる活躍が期待される女優である。これまで明るく元気な役柄を演じることが多かった彼女が、本作では大人びた妖艶な少女という、まったく違うタイプの役柄にチャレンジ。難しい役どころを見事にこなし、新境地を開いている。
そして、小夜子に憧れる女子高生・麻井由似子役には、本仮屋ユイカ。『スウィングガールズ』(04)、NHK朝の連続テレビ小説「ファイト」などで一躍注目を浴び、映画出演作が続いている彼女が、ピュアで明るい少女を好演。爽やかな笑顔で観客を魅了する。さらに、遠野涼役に、映画・ドラマ・舞台と幅広く活躍し、さまざまな役柄を演じてきた勝地涼。寡黙なキャラクターながら、持ち前の演技力で内に秘めた感情を鮮やかに表現している。また、涼の兄・暁役に、『気球クラブ、その後』の深水元基。そのほか、市川実日子、津田寛治、江波杏子といった実力派が顔を揃え、作品を支えている。
- 叶小夜子:鈴木杏
- 麻井由似子:本仮屋ユイカ
- 遠野涼:勝地涼
- 麻井鷹子:市川実日子
- 遠野暁:深水元基
- 小川雪政:津田寛治
- 叶あき:江波杏子
- 原作:吉田秋生
- 監督・脚本:及川中
- 製作:亀井修/鈴木健一/川島晴男/葛谷健一/小湊義文
- 企画:原田宗一郎
- プロデューサー:山川恵一/丸山文成
- 撮影:柳田裕男
- 美術:中川理仁
- 照明:松隈信一
- 編集:阿部亙英
- 音楽:神津裕之
- 録音:湯脇房雄
- 整音:鶴巻仁
- 主題歌:「仰げば尊し」スーザン・オズボーン(PONY CANYON)
- 製作:小学館/BLUE PLANET/ハピネット/パス・コミュニケーションズ/ソニーPCL
- 製作協力:BLUE PLANET
- 配給:CKエンタテインメント[Cubical]