聡子(美元)は、夫・秀之(大森南朋)と子供と3人、平穏に暮らしている。しかし聡子の胸の奥には、見えない不安がいつも付きまとう。おぼつかない足下。ぽかりと空いてしまった穴は、どうやって埋めるのだろう。聡子は携帯の出会いサイトに書き込み、男と情事を重ねていく。気づいたときには抜けられない闇に堕ちていた。優しい声の男(田口トモロヲ)はヤクザで、聡子は売春を強要されていた。
携帯の着信が鳴るたびに聡子は身震いする。脅迫され、強要され、どこへも逃げられない。その中で初めて生まれた悦び。一方。秀之は変わっていく妻の姿に戸惑いを感じつつも、ただ見つめることしかできず、妄想の世界へと入り込んでいく。
そしてもうひとり、聡子を見つめる少年がいた。母親を助けようとしたために捨てられてしまった稔(高良健吾)。稔は、聡子に母の姿を重ね、聡子を助けようとするのだった。
稔と聡子が出会ったとき、聡子の心の中に潜んでいた欲望が疼き始める。私を憎んで下さい。罰を与えて下さい。こうして私は本当の愛を知るのだから……。
M
監督:廣木隆一
出演:美元 高良健吾 大森南朋 田口トモロヲ ほか
2007年9月、ユーロスペースにて公開
2006年/35mm/カラー/ヨーロピアン・ビスタ/ドルビーSR/110分
“闇”は、あなたのすぐ近くにも潜んでいる――。快楽という本能に目覚めた時、女はどうなるのか。そんな女に直面したとき、男たちはどう感じ、行動するのか。女性が奥底に持つ心情をセンセーショナルに描いた作品が登場した。
ノワール小説の旗手・馳星周が、背徳の世界を覗いてしまった者たちの苦悩や絶望、快楽を描いた中篇集「M」を、監督としても活躍する斎藤久志がひとつの物語として脚本化。その脚本を『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』の廣木隆一が“欲望”という名の本質をあらわに描き出す。「人間が持つ本当の姿を描きたい」と熱望した廣木隆一は、誰もが持っている、しかし直視したくない、認めたくない欲望を、ときにシビアに、ときに優しく描き出している。
主人公・聡子の不安定な心情を演じきったのは、映画初出演にして主演に抜擢された美元(ミヲン)。2000年度ミスユニバースジャパンを受賞、その後ショーモデルとして活躍している彼女が、聡子のとまどい、不安、そして子供を守ろうとする“母”の姿を見事に体現している。聡子を救おうとする少年・稔には高良健吾。本作での演技が評価され、第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で特別賞を受賞、また青山真治監督作品『サッド・ヴァケイション』に出演するなど、今注目の若手俳優である。また、廣木監督から厚い信頼を得ている大森南朋、田口トモロヲも出演。
音楽、主題歌は、Poralis やohana での活躍も目覚ましいオオヤユウスケ。監督からの熱いオファーを受け、劇中音楽を書き下ろした。そして、本作に共鳴した荒木経惟氏がポスタービジュアルを急遽撮り下ろすなど、贅沢な顔合わせとなっている。
- 美元
- 高良健吾
- 平山広行
- 渋川清彦
- 戸田昌宏
- なすび
- 奥田恵梨華
- 馳星周
- 蜷川みほ
- 大口広司
- 大森南朋
- 田口トモロヲ
- 監督:廣木隆一
- 原作:馳星周(文春文庫刊)
- 脚本:斉藤久志
- エグゼクティブ・プロデューサー:宮崎恭一
- プロデューサー:石原真/陶山明美
- ラインプロデューサー:金子哲男
- 撮影:鈴木一博
- 照明:上妻敏厚
- 録音:深田晃
- 美術:林千奈
- 編集:菊池純一
- 助監督:宮城仙雅
- 製作担当:曽根晋
- 音楽:オオヤユウスケ
- エンディングテーマ:オオヤユウスケ「おだやかなひかり」
- 音楽エンジニア:Kazuyuki Matsumura a.k.a ZAK
- ミュージシャン:原田郁子/宮田まこと
- メインビジュアル撮影・題字:荒木経惟
- 製作プロダクション:バサラ・ピクチャーズ
- 製作:ザックコーポレーション
- 宣伝:スローラーナー
- 配給:ハピネット