東京小説 〜乙桜学園祭〜
監督:桜井亜美/安達寛高
出演:つぐみ 柏原収史/押井友絵 滝本竜彦 ほか
2007年6月2日(土)より、ユーロスペースにて期間限定公開
2006年/日本/カラー 『人魚姫と王子』16:9/28分 『立体東京 3D-TOKYO』4:3/34分
ふたりの映画監督がここにいる。ふたりとも本当は小説家である。デビュー作にして映画化された衝撃作「イノセントワールド」、原案だけでなく脚本にも関わった「虹の女神」の“桜井亜美”と、「ZOO」「暗いところで待ち合わせ」、そして公開が2007年6月に控えている「きみにしか聞こえない」の“安達寛高(乙一)”だ。現代の若者を鋭く、そして美しく描き、ピュアで力強い世界をかたどる桜井亜美、ときに厳しくときに優しく相反する視点で対象をみつめ、不思議な空気感を生み出す安達寛高。それぞれが「東京でひとりぼっちの少女」をテーマに<書き下ろし>た珠玉の物語たち。それらを“映像”で語ったのが、この『東京小説』だ。
きっと誰でも、心を照らしてくれる燈台を探している。「東京タワー」を少女たちの照らす燈台に見立て、次第に変化をしていく少女の「心」を、彼らならではの視点と手法で語っていく。
桜井亜美監督作『人魚姫と王子』の主人公は、心を閉ざした女の子・ナジュ。白と黒の服しか着ない彼女が、クリーニング屋で働く高瀬との出会いをきっかけに心を取り戻していく。 高瀬が染めたまばゆいオレンジ色のワンピースや、ナジュの心情を表したイエローやヴァイオレットといった色とりどりの花など、“映像”だからこそ表現できる豊かな色彩で、次第に歓びや愛情を感じていくナジュの心の変化を繊細に描く。またキャストに迎えられた映画界で活躍する若手実力派・つぐみ(『フリージア』『エクステ』)、柏原収史(『きょうのできごと』『カミュなんて知らない』)らが、現代の若者を鋭く、そして美しく綴るピュアな“桜井ワールド”を見事に体現した。
安達寛高が監督をつとめた『立体東京 3D-TOKYO』では、母親との思い出を取り戻すため東京をひとり迷い歩く少女を追っていく。偶然にも同じく東京をテーマにした写真集「3D-TOKYO」(著者・関谷隆司)の立体手法を参考にし描かれたのは、渋谷・新宿といった見慣れたはずの都市風景の新たな表情。誰も見たことがない“東京”を描き出すことで、生まれて初めて上京した少女の心情を映し出し、彼女が巻き込まれる事件、そこで起こるドラマに独特の空気感を生み出している。アトラクションイメージが強い3Dをあえて静寂な映像と組み合わせることで、新たな表現を提言しているところも安達監督ならではのこだわりだ。また、同じく作家の滝本竜彦、佐藤友哉、碧野圭が友情出演しているのも見逃せない。
人魚姫と王子
心を閉ざし白と黒の服しか着ないナジュ(つぐみ)は、その日つき合う男をダーツで決め、心に何も感じない日々を過ごしていた。ある日ナジュは、彼女に心を寄せるクリーニング屋・高瀬(柏原収史
)と出会う。彼は言う。「あなたにはもっといろんな色が似合うと思います」…。
立体東京 3D-TOKYO
うまれてはじめてやって来た東京の町で、少女(押井友絵)はバッグをぬすまれた。鞄の中には、母との大切な思い出が入っていた。それを、都会の雑踏に埋もれさせてはならない。少女は東京でさまよいあるく。母との思い出を、とりもどすために。