風の外側
監督:奥田瑛二
出演:佐々木崇雄 安藤サクラ ほか
2007年12月22日(土)新宿K's CINEMA、大阪・第七藝術劇場にてロードショー ほか全国順次公開
2007年/カラー/35mm/アメリカンビスタ/DTSステレオ/123分

好きな人を抱きしめたい、好きな人に抱きしめられたい。差別という壁に阻まれ、そんな想いを持つことすら許されない中で、互いを求めあう少女と青年。愛や夢とはぐれ、風の外側にいるふたりが、やがて優しい風に抱かれる。モントリオール世界映画祭で三冠を受賞した『長い散歩』の奥田瑛二監督待望の最新作『風の外側』は、人間の愛と夢を見つめた珠玉の恋の物語である。
舞台は美しい海峡の町、下関。本州の西南端に位置し、古くから九州朝鮮半島との交流の窓口として栄えてきた。関門海峡、フェリー、街角のリトルコリア……。本作は、そうした陰影深い歴史や文化、人間のドラマを秘めた町でオールロケーションを敢行。吹く風さえも香り立つリアルな映像美で観る人の心を震わせる。
主演には、本作が主演デビューとなるフレッシュなふたり抜擢された。青年を演じるのは佐々木崇雄。モデルとして東京・パリ・ミラノコレクションなどで活躍するほか、韓国、台湾のテレビCMにも出演し、特に韓国では高い人気を誇る。そして少女役には、奥田監督の次女である安藤サクラ。
脇を固めるのは、夏木マリ、北村一輝、監督でもある奥田瑛二など奥田組常連に、石田卓也、かたせ梨乃などが加わった豪華キャスト。さらに、ミュージシャンの大友康平、ジャズシンガーの綾戸智絵、作家の島田雅彦、スピリチュアルカウンセラーとして知られる江原啓之など、奥田監督作ならではの、多方面から集結した異色キャストが映画を観る楽しさを膨らませている。
スタッフも、合唱曲指導に三枝成彰、歌唱指導に日本を代表するプリマドンナの塩田美奈子、撮影に石井浩一、照明の櫻井雅章、音楽の稲本響、スーパーバイザーには安藤和津など、奥田監督が信頼を置く最強の布陣が揃った。
『長い散歩』で「愛」を描いた奥田監督の視線は、本作『風の外側』で、真摯に「夢」を見つめている。

オペラ歌手を夢見て、名門女子高の合唱部でソロを歌う岩田真理子(安藤サクラ)は、フェリーで登校中、がらの悪い男たちに絡まれる。掴まれた腕を振り払おうとした真理子の鞄は海に落ちてしまい、男たちの兄貴分の青年(佐々木崇雄)は、海に飛び込んで鞄を拾うと、何事もなかったように真理子に渡して去っていく。
しかし、鞄の中からは、真理子が大切にしていた楽譜がなくなってしまっていた。青年に再会した真理子は、なくしてしまった楽譜を弁償する代わりに、下校時のボディガードをつとめることを青年に約束させる。合唱部の生徒たちは、ストーカーのようにつきまとう怪しい連中に悩まされていたのだった。
その日から、青年は毎日、夕方になると校門の前に現われる。下校する真理子たちの少しあとを離れて歩き、怪しい連中を寄せつけない。真理子と青年は次第に親しくなっていき、真理子は青年に自分の夢を話して聞かせる。だが、青年はいつまで経っても自分の名前を明かそうとしないのだった。
借金取りの仕事をしていた青年は、ヤクザの田丸(北村一輝)の指示でさらなる悪事に手を染めようとしていた。一方、真理子は合唱大会のソロパートから外され、自暴自棄となる。泣きながら帰る真理子に青年は声をかけるが、真理子は彼にきつい言葉を投げかける。互いに惹かれあいながらも、ふたりの間の溝は深くなっていく――。