ボクサーを志しながらも、悪い仲間とつるんだ挙句、いいように利用されて警察の世話になった伸吾(斉藤慶太)。姉の洋子(北川弘美)は、ヤクザの夫の暴力に耐えかねて実家に戻ってきた。母親の敏子(田中好子)は、そんなふたりを心配しながら必死に生活をやりくりしている。親子3人の心には同じ穴が開いている。「親父」という穴が――。
盆をむかえようというある晩のこと、洋子の夫・津川(榊英雄)が洋子を連れ戻そうと乗り込んでくる。敏子の制止を振り払い、容赦なく暴力を振るう津川。姉と母を守ることもできず無力に立ち尽くす伸吾。家族の身が危険にさらされたそのとき、17年前の火事で命を落としたはずの父親・竜道(JJ.Sonny Chiba)が帰ってくる。
しかし、突然の父の帰宅を姉弟はすぐに受け入れることはできない。そんなふたりをよそに、竜道はこれまでの不在を埋めるように、家族の前に立ちはだかる問題や、ふたりを襲う暴力に対し、全身全霊をかけて立ち向かっていく。
熱く強い父の姿に徐々に安心感を覚え、いつしか家族の調和を取り戻していく伸吾たち。その一方で敏子は、鬼神のような竜道の姿を違った思いで見つめていた。
線香花火に願った思いを抱えて帰ってきた“親父”の秘密とは……。
親父
監督:千葉真一/井出良英
出演:JJ.Sonny Chiba(千葉真一) 田中好子 斉藤慶太 北川弘美 ほか
2007年8月25日(土)よりQ-AXシネマにてレイトショー
2006年/カラー/ステレオ/108分
命をかけて火事から家族を守り、散っていった“親父”。大黒柱を失った母や子供たちの心はバラバラとなったまま、十数年が過ぎた。愛情を求め、安らぎを欲しながら、常に満たされないときを過ごした家族を修復できるのは“親父”ただひとりだった……。
かつて、家族の中心となるのは“親父”であった。威厳を発揮し、家族を守り、妻や子供たちを先導する役割を果たしたいた。そこには無償の愛が存在し、父親の偉大さと強さがあった。映画『親父』は、死んだはずの“親父”が帰ってきたある家族の姿をとおし、家族愛と夫婦愛、そして勇気と心の絆を描く感動の物語である。
原作は小学館ビックコミックスペリオールに連載されていたもりやまつるの同名コミック。主演に日本のみならず、タランティーノ監督をはじめ世界中に熱狂的なファンを持つ“世界のカリスマ”千葉真一(JJ.Sonny Chiba)。圧倒的な存在感と百戦錬磨を潜り抜けてきた者だけが持つ包容力で、これ以上ない適役の昔ながらの“親父”沼田竜道役を演じきる。また本作は千葉の1990年の『リメインズ 美しき勇者たち』以来17年ぶりとなる監督作である(井出良英と共同監督)。主演と監督を兼ねるのは千葉にとって初めての試みであり、そのチャレンジ精神はとどまるところを知らない。妻・敏子役に『黒い雨』『ありがとう』の田中好子。夫を亡くして以来、家族の要として働きながら、父親の替わりにはなれないことを痛感する難しい役柄を絶妙に体現。ふたりの息子である伸吾役にはテレビ「ウォーターボーイズ2」や『タッチ』の斉藤慶太。純粋だが向こうみずな青年をいきいきと演じ、新境地を開拓した。さらにテレビやグラビアで活躍する北川弘美、『VERSUS』の榊英雄、『しゃべれども しゃべれども』の松重豊、作家としての活動に加え、近年は俳優としての存在感も増す筒井康隆、石井輝男監督作品などで異才を放った亀石征一郎といった個性的な面々が出演し脇を固める。
どの時代でも変わらない、親が子を思う気持ち。そしてそこにある深くになにものにも替えがたい愛情。『親父』は、そんなシンプルでありながらも現代を生きる人々が忘れてしまいがちな感情を見事に描いている。観終わったあと、父親のことをふと思い出すような、そんな映画なのだ。
- 千葉真一(JJ.Sonny Chiba)
- 田中好子
- 斉藤慶太
- 北川弘美
- 榊英雄
- 筒井康隆
- 松重豊
- 亀石征一郎
- 監督:千葉真一/井出良英(共同監督)
- 原作:もりやまつる「親父」(小学館刊)
- 脚本:亀石太夏匡/井出良英
- 製作プロダクション:近代映画協会
- 製作:チェイスフィルム
- 配給:チェイスフィルム エンタテインメント