桜が満開の季節、女衒に連れられて、吉原にやって来た8歳の名もなき少女。美しい金魚が宙を泳ぐ大門をくぐると、そこは煌びやかで妖艶な遊郭。玉菊屋に買われた少女はその日、“きよ葉”として生まれ変わった。女だらけの国が怖ろしくて脱走、あえなく捕まるきよ葉。しかし、彼女は厳しい折檻にも涙も見せず、いつしか自分の足で吉原を出る! と言い放つ。
やがて17歳になったきよ葉(土屋アンナ)は「十年に一度の天女」と楼主(石橋蓮司)が誉めるほどの女に成長し、店に立つ。一躍江戸中の注目の的となったきよ葉は、うぶな青年・惣次郎(成宮寛貴)への初恋や失恋を経験しつつ、18歳になったとき、名を“日暮”と改め、玉菊屋を背負って立つ吉原一の花魁となる。気に入らぬ客はどんなに身分が高くとも相手にしないかと思えば、自分を本気で慕う男は心から大事に扱う日暮は江戸中の男女の羨望を浴びるようになっていた。
そんな日暮に心を奪われた由緒正しき家柄の武士・倉之助(椎名桔平)が玉菊屋にやって来る。一度は彼の態度が気に入らなかった日暮だが、翌日、無礼を詫びに来た倉之助に、日暮もまた素直に自らの非を認める。日暮の馴染みとなり、本気で彼女を愛した倉之助は日暮を正式に妻として迎え入れたいと申し出、日暮の身請けが決まる。
しかし、そんな中で日暮は幼いころから見守り続けていた店番の清次(安藤政信)の存在に改めて気付いていた。身請け前の最後の客としてやって来たご隠居(市川左團次)の言葉に、日暮は忘れていた大事なものを思い出す。そして彼女が決めた生き方の選択とは――。
さくらん
監督:蜷川実花
出演:土屋アンナ 椎名桔平 成宮寛貴 木村佳乃 菅野美穂 安藤政信 ほか
2007年2月24日(土)よりシネクイント ほか全国ロードショー
2007年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/111分 (PG-12)
時代は江戸。舞台は吉原遊郭にある<玉菊屋>。幕府公認の社交の場として栄華を誇る吉原には、この世のものとは思えないほど、ゴージャスで煌びやかな世界が広がっている。この非日常的な世界で明日の“身請け”を夢見て生きる遊女たちの中でひときわ異彩を放つ遊女がいる。名前は、きよ葉。彼女は、自由を奪われた遊郭という世界で、誰にも頼らず、ただまっすぐに自分を信じて生き、やがて吉原一の花魁・日暮となる…。
主人公のきよ葉=日暮を演じるのは、モデル、女優、そしてロックアーティストと、多彩な才能を発揮している土屋アンナ。彼女の自然体でありながら、エネルギッシュでパワフルな生き方は、まさしく主人公きよ葉=日暮そのものだ。江戸に生きた、吉原が誇る花魁の誰にも媚びない“かっこよさ”“粋”“張りを土屋アンナは体現し、演じる。
監督は、鮮やかな色彩と独自の世界観で写真史を塗り替える衝撃をもたらした世界的フォトグラファー・蜷川実花。妥協が一切許されない“江戸・時代劇”で華々しく映画監督デビューを飾る。原作は「働きマン」「ハッピー・マニア」など、男女問わず幅広い年齢層にファンをもつカリスママンガ家・安野モヨコ。脚本には『タカダ・ワタル的』『月とチェリー』の監督であるタナダユキが初めて脚本家として参加。そして、初めて映画音楽を手掛ける椎名林檎がこの作品のために作り上げた曲が全編を彩る。
各界最高の女性クリエイターたちが、それぞれがもつ全エネルギーを注ぎ込み、日本映画の枠組みを軽々と飛び越えてみせる。
そしてずらりと並んだ豪華キャストが吉原に生きる。木村佳乃、菅野美穂が二大花魁を、夏木マリが玉菊屋の女将を、艶やかに演じ上げる。さらに、椎名桔平、成宮寛貴、石橋蓮司、市川左團次。そして安藤政信が女を咲かせる男の魅力を存分に振りまく。そのほか、永瀬正敏、美波、遠藤憲一、小泉今日子がヒロインを彩り、盛り上げていく。
今までにない吉原と花魁の物語を作るため、最高のスタッフが集まった。美術の岩城南海子が蜷川監督と二人三脚で取り組んだ美術セットは、非日常的でゴージャスな遊郭という空間を見事に現出させた。スタイリストの伊賀大介と杉山優子は50着を越える斬新な劇中衣裳を作り出し、まさにこれまでの着物の歴史を覆す。劇中に登場する“花”はフラワー界の異端児・東信がキャラクターに合わせロックにアレンジ。さらに、アメリカを拠点に活躍する撮影の新鋭・石坂拓郎と、これまで150本を超える作品に携わってきた“光の魔術師”照明の重鎮・熊谷秀夫が、蜷川ワールドの陰影を見事に捉えた。浮世絵を徹底的に分析し、それをベースにしながら、独自の再解釈をおこなった蜷川ワールドは、日本が失った色彩と美しい江戸を見事に現代に再現させた。
映画『さくらん』は、ヴィヴィッドで力強さに満ち、いまを生きる私たちの心に深く突き刺さる映画として完成した。
- 土屋アンナ
- 椎名桔平
- 成宮寛貴
- 木村佳乃
- 菅野美穂
- 永瀬正敏
- 美波
- 山本浩司
- 小池彩夢
- 山口愛
- 遠藤憲一
- 石橋蓮司
- 夏木マリ
- 市川左團次(特別出演)
- 安藤政信
- 監督:蜷川実花
- 原作:安野モヨコ「さくらん」(講談社イブニングKC所収)
- 脚本:タナダユキ
- 音楽:椎名林檎
- チーフ・プロデューサー:豊島雅郎
- プロデューサー:宇田充/藤田義則
- アソシエイト・プロデューサー:谷島正之
- 撮影:石坂拓郎
- 照明:熊谷秀夫
- 美術:岩城南海
- 装飾:相田敏春
- スタイリスト:伊賀大介/杉山優子
- 花:東信
- グラフィック・デザイン:タイクーングラフィックス
- 視覚効果:橋本満明
- 録音:松本昇和
- スクリプター:小泉篤美
- 助監督:山本透
- 製作担当:本藤雅浩
- ライン・プロデューサー:中林千賀子
- 製作:蜷川組「さくらん」フィルムコミッティ(アスミック・エース エンタテインメント/パルコ/テレビ朝日/講談社/朝日放送/タワーレコード NMNL/WOWOW/メ〜テレ/シネマ・インヴェストメント)
- プロダクション:アスミック・エース エンタテインメント
- プロダクション協力:フェロー・ピクチャーズ
- 配給:アスミック・エース