とある地方の街、舞坂町。旅行会社に勤め、この街に来て1年になる北原修路(江口洋介)は、毎日変わり映えのしない職務をこなし、近所の定食屋で夕食を食べ、贅沢とは程遠いアパートでひとり夜を過ごす。北原はそんな平凡な日々、そしてのんびりとしたこの街が嫌いではなかった。
そんなある日、町の広報紙に「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日は5月7日」というお知らせが小さく掲載される。戦争が始まったにも関わらず、いつもどおりの穏やかな街。しかし、開戦から12日目、仕事中の北原のもとに電話がかかってくる。「辞令交付式の件でお電話差し上げました」。電話の向こうの女性は事務的に告げるが、北原はさっぱり事情が飲み込めない。その日の夜、いつもの定食屋で食事をしていた北原は、広報紙に「戦死者12名」の文字を見つけて驚く。本当に北原の知らないところで戦争がおこなわれているのか?
帰宅した北原は、町役場の「戦争推進室」から自分宛に送られた封筒を見つける。そこに再びかかってくる女性からの電話。今、街でなにが起きているのか? それを知るために北原は電話相手の女性に会いにいく。町役場で待っていたのは、戦争推進室の香西(原田知世)という女性だった。そして北原は、特別偵察業務従事者の辞令を受けることになるのだった――。
となり町戦争
監督:渡辺謙作
出演:江口洋介 原田知世 瑛太 岩松了 ほか
2007年2月10日(土)より新宿ガーデンシネマほかにて全国順次公開
2006年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSR/114分
2005年、第17回小説すばる新人賞の選考会で議論を引き起こした小説「となり町戦争」。作者の三崎亜記はこの作品でデビューを果たし“10年に1度、出るか出ないかの逸材”と賞賛を受け、一躍文学界の注目の的となった。静かな日常と“見えない”戦争が並走する世界を描いた「となり町戦争」は、静かに表現することで戦争本来の怖さを伝え、2005年1月の発売以来新人としては異例の売り上げを記録し、現在も版を重ねている衝撃の小説が、ついに映画化を果たす。
ある日届いたとなり町との戦争のお知らせ。偵察業務に就かされた“僕”は、その業務遂行のために、対森見町戦争推進室の“香西さん”と夫婦生活を始める…。
知らず知らずのうちに戦争の中心へと巻き込まれていく主人公の北原を演じるのは『戦国自衛隊1549』(2005)や『ギミー・ヘブン』(2006)など話題作への出演が続く江口洋介。北原と奇妙な夫婦生活をおくることになる戦争推進室の香西役には『姑獲鳥の夏』『大停電の夜』(2005)の原田知世。そして『サマータイムマシン・ブルース』(2005)の瑛太、劇作家としても活躍する岩松了、ベテラン余貴美子らが脇を固める。
監督は鈴木清順の愛弟子である渡辺謙作。1998年に『プープーの物語』で監督としてデビュー、『ラブドガン』(2004)で注目を集めた期待の新鋭である。
主人公は自分の置かれている非常事態を理解できぬまま、いつの間にか戦争に巻き込まれ協力していく。一見、絵空事のようにも思えるが、これは我々の周りのある一線が越えた瞬間に起こりかねない、最も身近な戦争である。ここに描かれたリアリティは、観る者のたしかな恐怖と共感を呼ぶに違いない。
- 北原修路:江口洋介
- 香西瑞希:原田知世
- コート姿の男・智希:瑛太
- 舞坂町町長:菅田俊
- 舞坂町役場戦争推進室室長補佐・前田善朗:飯田孝男
- ツーリストスカイ従業員・本田:小林麻子
- 舞坂町役場戦争推進室室長・室園絹子:余貴美子
- 監督:渡辺謙作
- 原作:三崎亜記「となり町戦争」(集英社刊)
- 脚本:菊崎隆志/渡辺謙作
- プロデューサー:鍋島壽夫/菊地美世志
- 撮影:柴主高秀
- 照明:蒔苗友一郎
- 録音:柿澤潔
- 美術:浅野誠
- 編集:日下部元孝
- 音楽:Sin
- 助監督:小波津靖
- 製作プロデューサー:フィルムメイカーズ
- 製作:フューチャー・プラネット/角川ヘラルド映画/衛星劇場/パパドゥ音楽出版
- 配給:角川ヘラルド映画