昭和33年、原爆投下から13年を経た広島市街。平野皆実(麻生久美子)は原爆で妹の翠と父親を失っていた。弟の旭(伊崎充則)は疎開先の養子となり、皆実は復興が進む街で母のフジミ(藤村志保)とふたり暮らしていた。
ある日、皆実は会社の同僚・打越(吉沢悠)から、愛を打ち明けられる。しかし、皆実は原爆で死んだ妹の翠や父親の存在が心の傷になっていた。自分が生き残ったことに負い目を感じ、幸せに飛び込めない皆実を、打越は優しく受け止めるが、やがて皆実には原爆症の症状が現われる…。
平成19年の東京。定年退職を迎えた父親の旭(堺正章)、研修医の弟・凪生(金井勇太)と3人で暮らす石川七波(田中麗奈)は、このところ旭が不審な行動をとることを心配していた。今夜もひとりで出かける旭のあとをつけた七波は、小学校時代の同級生・東子(中越典子)と偶然に再会し、東子とともに旭のあとを追って広島へと向かう。
旭が立ち寄る先や会う人々を遠目に見つめる七波は、広島での体験を通して、家族が背負ってきたものや、自分自身のルーツに想いを馳せていくのだった…。
夕凪の街 桜の国
監督:佐々部清
出演:田中麗奈 麻生久美子 吉沢悠 中越典子 ほか
7月28日(土)よりシネマスクエアとうきゅうほか全国ロードショー
2007年/35mm/カラー/ビスタサイズ/ドルビーステレオ/118分
広島に原爆の閃光が光ってから62年。現在では広島の街も新しくなり、一見平和が戻ったように見えるが、あのときの閃光は人の生と死を分け、生き残った人のその後の人生を大きく変えていった。そして、彼らの子供たちの運命をも…。
過去と現代に生きるふたりの女性を通して、現在までにいたる原爆の影響を描いた、こうの史代のマンガ「夕凪の街 桜の国」。第8回文化庁メディア芸術祭大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞し、世界10ヶ国で出版され、海外からも注目を集める感動の物語が、ついに実写映画化を果たした。
この作品で描かれるのは、時代の異なるふたりの女性の人生。ひとつは、原爆投下から13年後の広島で暮らす平野皆実の物語。母親との平穏な生活や、想いを寄せる男性の存在に幸せを感じる一方、被爆した心の傷や、生き残った罪悪感に苦しむ。もうひとつは、現代の東京に暮らす石川七波の物語。家族に内緒で出かける父親のあとをつけて広島へと行き着き、伯母・皆実の遺した想いや家族のルーツを見つめなおしていく。
監督は『半落ち』『四日間の奇蹟』『出口のない海』など、これまでも人間と家族の想いを見つめ続け、、情感溢れる秀作を生み出してきた佐々部清。本作でも切なくも温かい命の尊さを語りかける。
主人公・石川七波には、デビュー作『がんばっていきまっしょい』から2006年の『暗いところで待ち合わせ』まで、鮮烈な演技で注目を集め続ける田中麗奈。平野皆実を演じるのは『カンゾー先生』や『どろろ』などの劇場作品に加え、テレビ「時効警察」でも好演の麻生久美子。ほかにも、若手実力派の吉沢悠、中越典子、ベテランの藤村志保や堺正章など充実のキャスト陣が顔を揃えている。
登場人物の何気ない日常生活や、家族、兄弟、恋人との愛のあふれた人生を描くことにより、生きることの喜びや平和への願いが静かに胸に沁み入る名編が、ここに誕生した。
- 石川七波:田中麗奈
- 平野皆実:麻生久美子
- 打越豊:吉沢悠
- 利根東子:中越典子
- 石川旭(青年時代):伊崎充則
- 石川凪生:金井勇太
- 平野フジミ:藤村志保
- 石川旭:堺正章
- 監督:佐々部清
- 製作:松下順一
- 企画プロデュース:加藤東司
- プロデューサー:白井正明/米山紳
- 原作:こうの史代「夕凪の街 桜の国」(双葉社刊)
- 脚本:国井桂/佐々部清
- 音楽:村松崇継
- 撮影:坂江正明
- 美術:若松孝市
- 照明:渡辺三雄
- 録音:高野泰男
- 編集:青山昌文
- 装飾:柳沢武
- スクリプター:山下千鶴
- キャスティング:杉野剛
- 助監督:山本亮
- 製作担当:吉崎秀一
- 製作プロダクション:円谷エンターテインメント/シネムーブ
- 製作:アートポート/セガ/住友商事/読売テレビ放送/東北新社/TOKYO FM/双葉社/東急レクリエーション/読売新聞大阪本社/ビッグショット/シネムーブ/広島テレビ/山口放送/福岡放送
- 配給・宣伝:アートポート