
誰もが迎える死。人はそれに直面したとき、あらためて自分の人生を振り返ることになるだろう。残りの人生をどう生き、どう死ぬのか。そして家族は、その決断をどう受け止めるのか。そんな“生と死”、家族の絆、夫婦の愛のかたちを真正面からとらえた感動作が誕生した。
原作はさまざまな流行を生み出し、時代の寵児と呼ばれてきた秋元康の初長編小説。監督は『Focus』『g@me』など、サスペンスからヒューマンドラマまで幅広く手掛ける井坂聡がその手腕を発揮し、大人の上質なエンターテイメントとして映画を完成させた。
主人公・藤山を演じるのは『SAYURI』『バベル』で国際的な評価も高まる役所広司。余命半年と宣告された中で、最後まで自分の人生をまっとうしようとする迫真の演技を見せる。藤山の妻・美和子には、20年ぶりの映画出演となる今井美樹。死に直面した夫の決意に動揺しながらも、夫を支え続けようとする妻を演じ切る。そして、息子の俊介には『パッチギ!』などで注目を集める若手実力派の塩谷瞬、娘のはるか役には今年の高校野球甲子園ポスターのイメージキャラクターをつとめる話題の新人・南沢奈央が扮するほか、井川遥、高橋克実、手塚理美、笹野高史、伊武雅刀、岸部一徳ら、個性と演技力を兼ね備えた豪華キャストが集結し、重厚なドラマを紡ぎ出す。
「今」という時間を生きる喜びと、人を愛することの尊さ――この秋、永遠に心に刻まれる愛の感動作がスクリーンに登場する。

妻とふたりの子ども、幸せな家族4人。会社での地位も得て順風満帆に暮らす藤山幸弘(役所広司)は、今まさに人生の“円熟期”を迎えていた。だが、ある日突然、末期の肺がんだと宣告される。
余命半年という医師の言葉に戸惑いながら、藤山が選択したのは、延命治療ではなく、人生をまっとうすることだった。それは「死」の覚悟ではなく、「生」への執着。藤山は残された時間に、今までに出会った大切な人たちと直接会って、自分なりの別れを告げようと決意する。想いを伝えられなかった初恋の相手(手塚理美)、些細なことで喧嘩別れしたかつての親友(高橋克実)、絶縁していた実兄(岸部一徳)……。言い残してきたことがある人たちと再会し、自分が生きてきた時間を噛みしめる藤山。だが、妻の美和子(今井美樹)には、病気のことを告げられずにいた。23年間ともに生きていた妻だからこそ、伝えられないことがあった。
藤山は大学生の息子・俊介(塩谷瞬)にだけ自らの病気を話し、美和子と妹のはるか(南沢奈央)を支えるように伝えていた。しかし、藤山はある日会社で倒れてしまい、それをきっかけに病名は医師から美和子へと知らされる。夫が事実を隠していたことに衝撃を受ける美和子。なぜ延命治療を受けないのかと問う美和子に、藤山は未来でなく「今」を生きていたいと語る。悩んだ末に、美和子はそんな夫のすべてを受け入れようと決意する――。