
幸せに暮らしていた4人の家族に突然降りかかった悲劇。父、母、兄はそれぞれに重荷を背負いながら、それでも懸命に生きていく。『あの空をおぼえてる』は、心に傷を負った家族の再生の物語だ。
原作はジャネット・リー・ケアリーの同名小説。『非・バランス』『天使の卵』など、登場人物の心理を繊細に描くことで定評がある冨樫森監督が、日本映画界期待の若手とベテランが一堂に会したスタッフを率いて、愛と生、そして永遠の別れという、シンプルでありながら最も深遠なテーマに迫った。
殺伐とした事件が続発する現在で、家族、そして人を思う気持ちを描こうとするこの映画の真摯な姿勢は、竹野内豊に7年ぶりの映画出演を決意させた。「今だからこそ、作るべきだ」と思える脚本に出会った竹野内が、一家の父親・雅仁に扮し、子供に注ぐ惜しみない愛情と愛する者を失った苦悩を、全身で表現している。母親・慶子役には「踊る大捜査線」シリーズなどを経て、現在は舞台にも活躍の場を広げる水野美紀。妹を失ったあとも明るく振舞おうとする兄・英治には『涙そうそう』『マリと子犬の物語』で名演技を見せた天才子役・広田亮平。そして家族を照らし出す明るい存在である妹・絵里奈役で“天使の笑顔”を持つと評された吉田里琴が愛らしい存在感を見せる。
さらに、冨樫監督作品『非・バランス』で深い印象を残した小日向文世をはじめ、小池栄子、品川祐、中嶋朋子、徳井優など、多彩なキャストが顔を揃えている。
エンディングを飾る主題歌は、平井堅が本作のために書き下ろした「いつか離れる日が来ても」。「大切な人を想う強さと儚さ」を込めたこの曲が、観客の心を揺さぶる。
大切な人を失ってしまったとき、残された者にできること――それは、失った人を忘れないこと。そして精一杯、前を向いて生きること。『あの空をおぼえている』は、観客に人が生きていく希望と勇気を伝えてくれるに違いない。

地方都市で暮らす4人の家族がいる。写真館を営む父・深沢雅仁(竹野内豊)とリトミック教室で働く母の慶子(水野美紀)。小学4年生の英治(広田亮平)と、幼稚園児の絵里奈(吉田里琴)の兄妹。元気いっぱいでおてんばな絵里奈を、ちょっとシャイだが優しい英治は、いつもそっとも見守っている。慶子のお腹の中には新しい命が宿っており、イタズラ好きのゴールデン・レトリバーの金之助も加わった深沢家は、笑いの絶えない幸せな家庭だった。
しかし、そんな深沢家にある日、突然の悲劇が訪れる。買い物に行く途中の英治と絵里奈が交通事故に遭ったのだ。英治は生死の境をさまよいつつも一命をとり止めたが、絵里奈の小さな命は失われてしまった。
子供たちだけで外出させてしまったことを悔やみ、自分を責める雅仁。娘を失った悲しみに、満足に食事も摂らなくなってしまった慶子。退院した英治はつとめて明るく振舞おうとするが、家の中には重苦しい空気が流れるだけだった。
英治は、明るく迎えてくれる同級生や、担任のユリコ先生(小池栄子)、スクールカウンセラーの福田(小日向文世)たちと過ごす中で、悲しみを抱え込み閉じていた心を、徐々に開きはじめるが……。