青い鳥
監督:中西健二
出演:阿部寛 本郷奏多 伊藤歩 ほか
2008年11月29日(土)より新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
2008年/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSR/105分

生徒の自殺未遂という事件から立ち直りつつある中学校。そこに赴任してきたひとりの臨時教員の行動は、校内に波紋を呼び起こす――。
重松清の同名短編小説を原作とした『青い鳥』は、いじめの問題をとりあげた作品である。教育現場を描いた作品は数多くあるが、その中で『青い鳥』が異彩を放っているのは、主人公・村内先生の独特なキャラクターだ。吃音をもっている村内先生は、言葉がうまく出せないゆえに、全身で想いを伝えようとする。その姿は孤高の求道者のようにも映る。『青い鳥』は、そんな村内先生と生徒が、ひとりの人間と人間として向き合っていく物語だ。
その村内先生を演じるのは阿部寛。優しい中に決して揺るがない芯の強さをもった眼差しと、キャラクターの奥深さを感じさせる佇まいで、これまでにない教師像を作り上げた。
そして、生徒の園部真一には本郷奏多。同級生を追い込んだのは自分ではないかと自らを責め続ける少年の苦悩を、持ち前の繊細さで見事に表現してみせる。
真一の同級生たちには、太賀、荒井萌、篠原愛実、高田里穂、山崎和也、新木優子ら、期待の若手キャストが顔を揃えた。そして教師としての姿勢に悩む若い教師・島崎を伊藤歩が演じる。
監督は原田眞人や篠原哲雄、マキノ雅彦らの助監督をつとめるほか、テレビドラマ演出も手がけてきた中西健二。監督デビュー作となる本作では、劇中の村内先生の姿と重なるような、真摯な演出で物語を描いていく。
村内先生が伝えようとするのは、建前や奇麗事ではない。それは、ときとして生徒たちに痛みをもたらす。だが、その痛みなしに前に進むことができるのだろうか? この映画を観る者も、生徒たちと同じように痛みを感じるかもしれない。その痛みから目を逸らさずに向き合おう。それがきっと、村内先生の想いにこたえることだ。

3学期が始まる日、東ヶ丘中学2年の園部真一(本郷奏多)は、登校の途中に遠回りをして一軒の店に立ち寄る。真一の視線の先には、コンビニの閉ざされたシャッターと、閉店を告げる貼り紙があった。
東ヶ丘中学では“ベストフレンズ運動”がおこなわれ、校内には、生徒の意見を募る“青い鳥BOX”が設置されていた。教師や生徒たちが大きな声であいさつを交わし、学校は明るい雰囲気に満ちているように見えた。
真一のクラスである2年1組では、休職した担任の代わりが誰になるのか、生徒同士が噂しあっている。そこに現われたのは、見知らぬ臨時教員・村内(阿部寛)だった。村内のあいさつに生徒たちは驚く。村内は極度の吃音だったのだ。思わず笑い出す生徒に村内は言う。「先生はうまく喋れません。でも本気で喋ります。だからみんなも本気で聞いてください」。そして村内は、転校していった生徒・野口の机を教室に戻させると、その机に「野口くん、おかえり」と話しかける。
次の日からも、村内は「野口くん、おはよう」と無人の机にあいさつをする。やがてその行動は、保護者やほかの教員の間で問題視されていく。野口は、クラス内でのいじめを苦に自殺未遂を起こし、転校していった。家がコンビニを経営する野口を、クラスメイトたちは「コンビニ君」と呼び、店の商品を万引きしてくるよう強要していたのだ。野口の自殺未遂はマスコミでも大きく報道され、校内は揺れた。2年1組の元の担任・高橋の休職も、その重圧によるものだった。
真一も1度だけではあったが、いじめに加担した。その事実は、いまも真一の心を苦しめていた。そして、村内の行為は、平穏を取り戻したかに見えた2年1組の中にも波紋を広げていく――。