春よこい
監督:三枝健起
出演:工藤夕貴 西島秀俊 時任三郎 小清水一揮 ほか
2008年5月24日(土)佐賀先行ロードショー 6月7日(土)全国ロードショー
2008年/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/108分

家族の暮らしを守るため、心ならずも人を殺してしまい、姿を消した父。残された母は気丈に暮らしを支え、息子は大好きな父の帰りを待ち続ける――。
逃亡犯を父に持つ子が、指名手配写真が張り出される時期を知って言った「父ちゃん今年もまた写真が出るね」という言葉。この言葉に込められた切ない心情がヒントとなり、映画『春よこい』は誕生した。昭和の終わりの海辺の町・唐津市呼子を舞台に、家族の絆とはなにかを問いかける。
気丈に夫を信じる主人公・芳枝を演じるのは工藤夕貴。『ヒマラヤ杉に降る雪』『SAYURI』など、国際派女優としての地位を確立した彼女が『戦争と平和』以来17年ぶりの日本映画主演を果たした。母の想いを察しつつも淋しさを隠せない息子・ツヨシを演じるのは『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの天才子役・小清水一揮。そして、家族への愛に苦悶する父・修治を『LIMIT OF LOVE 海猿』の時任三郎が演じる。
さらに、葛藤を抱えつつ母子の力になろうとする新聞記者・岡本に『好きだ、』『大奥』などの西島秀俊。職務に忠実だが人情にあふれる刑事・安藤に『オリヲン座からの招待状』でも好演した宇崎竜童。ツヨシの担任で岡本の妹・洋子に『雪に願うこと』の吹石一恵。『逃亡中の修治に心を寄せる看護婦・聡美に『疾走』の高橋ひとみ。存在感あふれる実力派キャストが揃い、家族のドラマを盛り上げる。
監督はNHKドラマの演出で数々の賞を獲得し『MISTY』『オリヲン座からの招待状』などの劇場作品を手掛けてきた三枝健起。音楽は日本を代表する作曲家の三枝成彰。「涙そうそう」が国民的ヒットとなった夏川りみが主題歌「だいじょぶ、だいじょうぶ」を優しく歌い上げる。

昭和50年代半ば。佐賀県の唐津市呼子町で釣り船と漁業を営む尾崎修治(時任三郎)は、妻と子、父親の貧しいながらも暖かい家庭を築いていた。だが、秋のある日、商売道具の漁船を借金のかたに強引に奪われそうになり、止めようとするうちに誤って借金取りの野田を殺してしまう。そして修治は、そのまま姿を消した。
それから4年後の秋、芳枝は釣り船や魚市場で働き、息子のツヨシ(小清水一揮)や、介護の必要になった父・一平(犬塚弘)の暮らしを支えていた。
いまでも父の帰りを待つツヨシは、学校の帰り、交番の掲示板に指名手配犯として張り出された修治の写真をじっと見つめる。その姿を新聞記者の岡本利夫(西島秀俊)がカメラのレンズ越しに見つめていた。
翌朝、紙面にはツヨシの写真とともに「父ちゃん、今年もまた会えたね」という見出しの記事が載った。その記事は狭い町に波紋を巻き起こす。ツヨシは学校でいじめられ、担任の洋子(吹石一恵)は兄の利夫に激しく怒りをぶつける。
芳枝もまた、魚市場から休みを出され、釣り船も休業に追い込まれてしまった。耐えてきた哀しみを嵐の海にぶつける芳枝。そのまま眠り込んだ芳枝をおぶって家に連れ帰ったのは、修治を追う刑事の安藤(宇崎竜童)だった。
記事を読んで修治が現われれば母子の苦しみも終わるかも。そんな思いで記事を書いた岡本は、芳枝に会い、自分の考えがいかに勝手なものだったかを悟り、母子が持ち続ける深い“家族の絆”を知るのだった
そしてそのころ、呼子から離れた工事現場で働く修治も、数日前の新聞の記事に息子の姿を見つけていた……。