歓喜の歌
監督:松岡錠司
出演:小林薫 伊藤淳史 由紀さおり 浅田美代子 安田成美 ほか
2008年2月2日(土)よりシネカノン1丁目、渋谷シネアミューズCQNほか全国ロードショー
2007年/カラー/ビスタサイズ/DSR/112分

暮れもおしせまった12月30日、とある地方都市の文化会館で働く飯塚主任はとんでもないミスに気がついた。よく似た名前のふたつのグループを翌日のコンサートにダブルブッキングしてしまったのだ! そして飯塚主任の長い1日が始まった……。
「いまもっともチケットが取れない落語家」と言われる立川志の輔。現代を生きる人々の悲喜こもごもを絶妙の観察眼ですくいとった新作落語の中でも、特に名作との呼び声が高い「歓喜の歌」が映画化を果たした。
主人公・飯塚主任を演じるのは、圧倒的な演技力で映画ファンから高い支持を受ける小林薫。『コキーユ』以来、約10年ぶりの主演となる本作では、優柔不断でことなかれ主義の男が人生に大切なものを見出していく過程をたくみに表現している。“みたま町コーラスガールズ”のリーダー・五十嵐純子役には『大河の一滴』以来6年ぶりのスクリーン復帰となる安田成美が多忙な毎日の中でも明るさをを失わない主婦を好演している。そして、もうひとつのコーラスグループ“みたまレディースコーラス”を率いる松尾みすず役を日本を代表する歌手のひとりである由紀さおりが演じているのをはじめ、根岸季衣、藤田弓子、片桐はいり、土屋久美子など個性豊かなコーラスグループのメンバーにも注目だ。
さらに、飯塚主任の妻・さえ子に浅田美代子、娘・千夏に於保佐代子、飯塚の部下・加藤に伊藤淳史、純子の夫・恒夫に光石研、怪しい男・葛飾にでんでんなどベテランから若手まで多彩なキャストが揃った。
監督は2007年の『東京タワー オカンとボクと、時々オトン』が大ヒットを記録した松岡錠司。群像劇に定評のあるその手腕を本作でも存分に発揮している。
ごく普通の日常を懸命に生きる人々が、大晦日に起こす奇跡。そこには、観る者それぞれが自分の姿を重ね合わせ、深い感動を覚えるに違いない。

小さな地方都市・みたま町の文化会館に勤める飯塚主任(小林薫)は、自分はいい加減なわりに他人には厳しい男。既定の時間となったと、老人会のカラオケ大会も電源を切って強引に止めてしまうような杓子定規な公務員だ。
暮れもおしせまった12月30日、飯塚主任は1本の電話を受ける。“みたま町コーラスガールズ”というママさんコーラスからの翌日の会場予約の確認だった。調子よく対応する飯塚に、脇で聞いていた部下の加藤(伊藤淳史)が重大な事実を指摘する。大晦日の会館利用予約は“みたまレディースコーラス”だというのだ。よく似たふたつのコーラスグループを、同じ日、同じ時間にダブルブッキングしたまま、半年も放置してしまっていたのだ!
どうせ趣味のママさんコーラス、理由を話せばなんとかなると甘く考えていた飯塚主任。しかし“みたまレディースコーラス”はセレブな女性たちが集まった由緒あるグループ。かたや“みたま町コーラスガールズ”はパートや家事で忙しい主婦たちが1年前に結成したばかりと、正反対のふたつのグループ。それぞれ創立20周年、結成後初となる記念のコンサートということもあり、互いに一歩も譲らない。
“ガールズ”のリーダー・五十嵐純子(安田成美)は“レディース”のリーダー・松尾みすず(由紀さおり)に「今年だけ、一緒に歌いませんか?」と提案するが、ふたつのグループの招待客をあわせると会館の客席には入りきらない。打つ手なしか?
おまけに別居中の妻・さえ子(浅田美代子)と娘・千夏(於保佐代子)との話し合いも控え、さらに以前に熱を上げていたホステスの情婦らしい男(でんでん)から、立て替えたツケを払えという電話までかかってきて、てんてこまいの飯塚。
果たして、大晦日の夜に、歓喜の歌は響きわたるのか?