泪壷
監督:瀬々敬久
出演:小島可奈子 いしだ壱成 佐藤藍子 ほか
2008年3月1日(土)より銀座シネパトス、K's cinemaにてロードショー
2007年/カラー/35mm/ビスタサイズ/DTSステレオ/110分

幼い日に恋した男は、妹の夫となった。妹が若くして世を去ったとき、忘れられない想いが女を突き動かす――。
映画も大ヒットとなった「失楽園」「愛の流刑地」の渡辺淳一が、男女の愛と死のかたちを描いた傑作短編「泪壷」が映画化を果たした。
メガホンをとったのは、“ピンク四天王”のひとりとして注目を集め『MOON DOG』『ドッグ・スター』など一般作でも高い評価を得る瀬々敬久。谷崎潤一郎作品を新たな解釈で映像化した『刺青 〜堕ちた女郎蜘蛛〜』に続き、文学を原作とした官能の世界に挑んだ。『ユダ』『肌の隙間』など、これまでも瀬々作品に参加してきた佐藤有記を脚本にむかえ、原作小説では描かれていなかった、主人公たちの少女・少年時代を現在と交錯させる構成によって、珠玉の文芸ロマンスとして作品を完成させた。
主人公の朋代を演じるのは、本作が映画初主演となる小島可奈子。これまで『菊次郎の夏』『ピカレスク』などの話題作に出演してきた彼女が、本作では大胆なフルヌードや、激しいベッドシーンにも挑戦。女優としての新たな一歩を踏み出している。
朋代が恋した相手で妹の夫である雄介には『Strange Circus 奇妙なサーカス』『キャプテントキオ』などで比類なき個性を見せるいしだ壱成、朋代の妹で若くして病に倒れる愁子をドラマやバラエティで広く活躍する佐藤藍子が熱演している。そのほか、三浦誠己、柄本佑、蒼井そらといった若手キャストと、及川以造や菅田俊らベテラン陣が脇を固める。
また「会いたい」のヒットで知られるシンガー・沢田知可子が、エンディングテーマ「花心 〜Lullaby〜」を提供しているのも注目だ。

中学校の臨時教員として音楽を教える朋代(小島可奈子)は、乳がんで入院中の妹・愁子(佐藤藍子)を見舞うために東京にやって来た。ベッドに横たわる愁子には、夫の雄介(いしだ壱成)が寄り添っていた。愁子は姉妹が雄介と初めて出会った日のことを思い出す。姉妹の家には、牛の骨灰を土に混ぜて焼かれたボーンチャイナの壷があった。17歳だった朋代(西村みずほ)は、その壷を雄介に見せようとして誤って割ってしまい、父の周吾(菅田俊)に怒られたことがあった。その出来事を思い出した愁子は「自分が死んだら遺骨で壷を作って、ずっとそばにおいてほしい」と雄介に頼む。
それから半年が過ぎ、愁子はこの世を去った。雄介は愁子の骨灰を持って著名な陶芸家・斯波(及川以造)を訪れ、壷の制作を依頼する。そして白い壷が完成するが、その壷にはなぜか朱色の傷がついていた。それはまるで、愁子が流す泪のようであった。
1986年の冬、朋代と愁子は、天体観測のために姉妹の暮らす地を訪れた雄介と出会った。朋代は雄介に心ひかれるが、数年後、雄介と結ばれたのは妹の愁子だった。それ以来、朋代は雄介への想いをそっと自らの胸の内に封じ込めてきた。
愁子を失い、失意の雄介の支えになりたいと思う朋代だが、妹に対する罪の意識を感じてしまう。愁子の四十九日の日、父に雄介への気持ちを悟られた朋代は家を飛び出し、同僚の皆川(三浦誠己)に誘われるまま抱かれてしまう――。
20年越しの片思い。朋代の気持ちが伝わる日は、果たしてくるのだろうか?