小さな路地と、そこに続く短い石段。日向ぼっこする猫。世田谷区松原の閑静な住宅街に、鈴木賢治(大城英司)と吉本えり(渡辺真起子)は暮らしている。
ある日曜日の朝、賢治の母・雅子(馬渕晴子)から電話がかかってくる。雅子が次の日曜日にふたりの住むマンションに訪ねてくることになり、えりは一抹の不安を感じる。
3年前、ふたりはそれぞれの家族と別れて同棲を始めた。賢治には6歳と3歳の娘、そして妻。えりには子供はなく、夫がいた。結果的に賢治からふたりの子供を奪い、雅子からは孫ふたりを奪ったと思い込むえりは、ふたりに対して罪悪感を覚えている。一方、賢治は覚悟していたはずの後悔の念を消すことができず、えりとの入籍に進めない。えりの愛情と、えりの母親・裕恵の気遣いに、賢治は自分を責める。
お互いに自分でよかったのかと思い悩むふたり。しかし、ふたりを見守る友人たち、兄弟、叔母、そしてふたりの母の温かい思いにより、少しずつふたりは前進していく……。
ねこのひげ
監督:矢城潤一
出演:渡辺真起子 大城英司 仁科貴 螢雪次朗 ほか
2008年4月19日(土)よりシアターイメージフォーラムにてレイトショー
2005年/カラー/ビデオ/100分
それぞれ別の相手との離婚を経て、同棲生活を始めた男女。友人たちとの和やかな日々を過ごす中で胸をよぎる、仕事の悩み、別れた家族への想い……。『ねこのひげ』は、30代後半のカップルと、その周囲の人々の日常を淡々と描く中で、人の心の温かさ、大切な人を思う気持ちを描いていく、大人の恋愛映画だ。
この映画の企画、製作、脚本も手掛けたのは大城英司。映画でドラマで活躍し、本作の主演もつとめる俳優であるが、映画を作りたいという熱意からプロデューサーとして奔走、大城の主演作『ある探偵の物語』を手掛けた矢城潤一監督とともに本作を完成させた。
もうひとりの主演は、『殯の森』『愛の予感』と、出演作が海外の映画祭で高く評価されている渡辺真起子。そして、仁科貴、螢雪次朗、根岸季衣、中原丈雄ら、日本屈指の実力派俳優陣が主人公ふたりを取り巻く人々を演じる。さらに、映画のタイトルにもなっている、猫の名演技にも注目だ。
エンディングテーマは、ル・クプルのボーカリストとして活躍し、ソロ歌手としてアジアでも絶大な人気を誇るEmiと日本を代表する音楽プロデューサー3人が結成した、Emi with 森亀橋の「今がよければ」。優しい歌声が映画のラストを温かく包み込む。
懐かしい風景の残る世田谷で繰り広げられる主人公たちの和やかな日常を見つめるうちに、観客はいつしか登場人物に共感を抱き、自分の生活に想いをはせることだろう。
- 古本えり:渡辺真起子
- 鈴木賢治:大城英司
- 梅本孝司(オカマの孝子):仁科貴
- 山本義明(孝子の同棲相手):螢雪次朗
- 寺元耀子(賢治の前妻):川上麻衣子
- 中島博美(えりの幼馴染):藤田朋子
- 焼鳥屋の親父:モロ師岡
- 酒屋の店員:佐藤貢三
- ゲイバー半魚人のママ:松山鷹志
- 西條伽耶(半魚人の客):藤貴子
- 出版社社員:原田佳奈
- 吉澤幸恵(えりの叔母):根岸季衣
- 鈴木賢一郎(賢治の兄):中原丈雄
- 鈴木雅子(賢治の母):馬渕晴子
- 監督・編集:矢城潤一
- 企画・製作・脚本:大城英司
- プロデューサー:甲斐路直
- 撮影・照明:新妻宏昭
- 音楽:吉川清之
- 録音:臼井勝
- 助監督:石井晋一
- ヘアメイク:内田結子
- 音響効果:柴崎憲治
- タイトルデザイン:宮野義保
- イラスト:宮原芽映
- テーマ曲:「今がよければ」Emi with 森亀橋
- 製作:ねこのひげ製作委員会
- 配給:太秦株式会社