百万円と苦虫女
監督:タナダユキ
出演:蒼井優 森山未來 ピエール瀧 竹財輝之助 斎藤隆成 ほか
2008年7月、シネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋ほかにてロードショー
2008年/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD・DTSデジタル/121分

『リリイ・シュシュのすべて』で映画デビュー以降、『害虫』『花とアリス』など話題作に続々出演、『フラガール』では多くの映画賞を受賞し、日本を代表する若手女優となった蒼井優。『さくらん』の脚本や、監督作『赤い文化住宅の初子』で注目を集める女流監督・タナダユキ。いま、日本映画界で輝きを放つふたりの女性が出会い、1本の映画が誕生した。
ひさびさの単独主演作となる『百万円と苦虫女』で蒼井優が演じる鈴子は、家族からも友達からも少し距離を置く不器用な女の子。アルバイトで百万円が貯まるごとに引越しを繰り返し、いろいろな人たちと出会う中で、鈴子はちょっとづつ自分の正直な気持ちと向き合いはじめる。
鈴子と出会う人々を演じるのは、充実のキャスト陣。海の家で鈴子に屈託なく話しかけてくる青年・ユウキには『未来予想図 〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜』などで注目度上昇中の竹財輝之助。不器用で寡黙だが根は優しい桃畑農家の春夫には多くの作品で個性的な存在感を見せるピエール瀧。ひたむきに働く鈴子に心惹かれていく大学生の亮平には『世界の中心で愛をさけぶ』の森山未來。そして笹野高史、佐々木すみ江といったベテラン陣や、江口のりこ、嶋田久作、モロ師岡、堀部圭亮ら個性派が脇を固める。
主題歌は、人気バンド・クラムボンの原田郁子が、ソロとして初めて映画のために書き下ろした「やわらかくて きもちいい風」。映画のラストに流れるこの曲は、鈴子の旅立ちを祝福するかのように、すがすがしい余韻を残す。

佐藤鈴子(蒼井優)は、短大を卒業後、就職浪人中でウェイトレスのアルバイトをしている21歳。ある日、バイト仲間のリコからルームシェアを持ちかけられ実家を出ることにするが、それがきっかけで一騒動が勃発。鈴子は警察のお世話になることに。
再び実家へと戻ってきた鈴子は、中学受験を控える弟の拓也(齋藤隆成)から食事の席で「受験に響く」と非難され、家族の前で「百万円貯まったら出て行きます!」と宣言。その日から、新聞配達、ビル清掃、苦情受付係のバイトを掛け持ちして懸命に働く。
狭い町だけに、鈴子が警察の厄介になった噂はたちまち広まり、買い物中の鈴子は昔の同級生にからかわれる。「前科者」とあざ笑う同級生たちに反撃する鈴子の姿を、小学校でいじめにあっている拓也が物陰からそっと見つめていた。帰り道、鈴子に追いついた拓也は、家を出たら手紙をくれるようにと声をかける。
やがて、百万円を貯めた鈴子は、実家を出る。海辺の町ではサーファーのユウキ(竹財輝之助)、山間の村では桃畑農家の絹さん(佐々木すみ江)と息子の春夫(ピエール瀧)と出会いながら、また百万円を貯めては次の土地へと旅を続ける鈴子。そしてやってきた地方都市のショッピングセンターでアルバイトを始めた鈴子は、バイトの先輩で大学生の亮平(森山未來)と出会う――。