
2001年に刊行された小説「リアル鬼ごっこ」は、“王”の命令により、佐藤という名字の人間がつぎつぎと捕まっていくという、斬新でユニークな設定が若年層を中心に絶大な支持を集め、文庫版をあわせ100万部を越える大ベストセラーとなった。著者の山田悠介を一躍人気作家の地位へと押し上げたこの話題作が、待望の映画化を果たす。
監督・脚本は監督デビュー作となる2002年公開の中編ホラー『もうひとりいる』で注目を集め、プロデューサーとしても『渋谷怪談』シリーズや『スピードマスター』などを手掛けてきた柴田一成。長編初監督となる本作では、脚本に2年を費やし、原作の設定に独自のアイディアを加え、映画ならではの新たな魅力を持った作品として完成させた。
出演は、突然“鬼”に追われるという状況に戸惑いつつも“王”の謎に迫っていく主人公・佐藤翼に石田卓也。『蝉しぐれ』でスクリーンデビューを飾り、その後も『夜のピクニック』、主演作『グミ・チョコレート・パイン』などで活躍する邦画界期待の若手が、まさに体当たりの熱演を披露している。翼の妹で物語の鍵を握る佐藤愛には『カナリア』での演技が高く評価され、『檸檬のころ』『神様のパズル』など主演作が相次ぐ谷村美月。さらに『クローズ ZERO』の大東俊介、『東京フレンズ The Movie』の松本莉緒などの若手キャストに加え、吹越満、柄本明という個性派が脇を固め、ベテランならではの存在感を見せる。
逃げる“佐藤”と追いかける“鬼”との手に汗握るアクションシーンを手掛けたのは、国際的に活躍するアクション監督・谷垣健治。リアルな身体感覚を感じさせるそのアクションは、この映画の大きなみどころだ。そして『笑う大天使』で監督としての評価も高い小田一生がスーパーバイザーをつとめたVFXシーンや、気鋭のスペシャルメイクアップアーティストであるマイケル・T・ヤマグチによる特殊メイクが、作品世界に一層の厚みを与えている。また、発表する曲が常にチャート上位をにぎわす歌姫・KOTOKOが主題歌を担当しているのも話題だ。
フレッシュなキャストと実力派スタッフによりスクリーンに描き出される映画『リアル鬼ごっこ』は、誰もが予想しなかった、新鮮な驚きをもたらすに違いない。

日本で一番多い名字である“佐藤”。その“佐藤”姓の人たちの死が相次ぐという事件が世間を騒がせていた。年齢、性別もまちまちで、死因もさまざま。それぞれの死に関連性も見出せない。“佐藤”姓という共通点を除いては……。
高校生の佐藤翼(石田卓也)は、酒におぼれる父親の輝彦(吹越満)とふたり暮し。母親は妹の愛を生んだあとに亡くなり、愛(谷村美月)は、言葉も話せず感情を表すこともできず、生まれてからずっと入院したままだ。
ある日、病院に愛を見舞った帰りの翼は、佐藤洋(大東俊介)が率いる不良グループと出会う。幼馴染みの翼と洋だが、いつしか洋はヤクザの手下のようなことをはじめ、いまやふたりは犬猿の仲。つけ狙う洋のグループを天才的な逃げ足で翻弄してきた翼だが、今日は周りを囲まれて絶体絶命のピンチ!
しかし、翼が気づくと、洋をはじめ周りを囲んでいたはずの不良たちの姿は消えていた。唖然とした翼は通りがかったクラスメイトに話しかけるが、彼らは翼のことなど知らないという。おまけに翼が“佐藤”だと知ると逃げるように立ち去っていく。事情が飲み込めない翼の目に飛び込んできたのは、必死の形相で走ってくる洋の姿。反射的に逃げ出す翼だが、洋も誰かから逃げているようだ。洋を追っていたのは、全身をまっ黒な服に包み、赤い目を光らせた“鬼”。追われていたのは洋だけでなく、逃げまどう人々の悲鳴が街中に響きわたる。翼もわけもわからないまま、“鬼”から逃げて、ひたすらに、走る!走る!! 走る!!! いったい、なにが起こっているんだ!?