パーク アンド ラブホテル
監督:熊坂出
出演:りりィ 梶原ひかり ちはる 神農幸 ほか
2008年4月26日(土)よりユーロスペースにてロードショー 大阪・第七藝術劇場、愛知・名古屋シネマテークほか全国順次公開
2007年/35mm/カラー/ビスタサイズ/モノラル/111分

都会の片隅にある少しくたびれたラブホテル。その屋上には、小さな公園があった。老人や子供が集うその場所は、都会のオアシスのような憩いの空間だった――。
『パーク アンド ラブホテル』は、それぞれに問題を抱える異なった世代の3人の女性たちと、ラブホテルを経営しながらつつましく暮らす初老の女性の出会いを描いていく、ちょっと不思議な物語だ。
監督は、本作が長編デビュー作となる熊坂出(くまさか・いずる)。短編『珈琲とミルク』でPFFアワード2005で審査員特別賞、企画賞、クリエイティブ賞の3賞を受賞。PFFスカラシップ作品として製作された本作では2008年ベルリン国際映画祭最優秀新人賞を獲得し、はやくも世界からの注目を集めている新鋭である。
主人公・艶子を演じるのは「私は泣いています」で知られる日本の女性シンガー・ソングライターの草分けであり、女優としても多くの作品で独特の存在感を発揮するりりィ。女優としてのキャリアの中で初の主演作となる本作では、59歳のヒロインの凛とした美しさを見せている。
そして、銀色に髪を染めた家出少女・美香には「仮面ライダー剣」「女王の教室」などで注目された梶原ひかり、孤独を抱える主婦・月には幅広い活動で同世代の女性から高い支持を受けるちはる、秘密を抱えるミステリアスな女性・マリカには京阪電鉄イメージキャラクター“おけいはん”に抜擢された神農幸と、個性が光る3人の女優が艶子と関わる女性を演じる。さらに、津田寛治、光石研など、実力派キャストが脇を固めている。
窮屈な都会生活の中で出会った女性たちが、他人の痛みを分かち合う中で再生に向かう物語は、観る者の心に小さな勇気を与えてくれる。

バックパックを背負い、髪を銀色に染めた少女・美香(梶原ひかり)。インスタントカメラで目につくものを撮影しながら街をさまよう美香は、少しくたびれたラブホテルのそばで不思議な光景を目にする。老人や子供たちが次々とホテルに入っていくのだ。興味を持った美香は彼らのあとに続いてホテルに入ってみる。老人や子供たちが目指すのはホテルの屋上だった。そこには、滑り台やブランコ、ベンチが置かれた公園があり、みなが思い思いに自由な時間を過ごしていた。
日が暮れ、公園でときを過ごしていた人々は自分の家へと戻っていく。しかし、美香には行く場所がない。ラブホテルのオーナー・艶子(りりィ)は、そんな美香を見かね泊めてやることにする。なにかと艶子に生意気な口をきく美香だが、艶子は彼女の心に深い孤独があることを見抜いていた……。
* * *
毎朝、ホテルの前を丁寧に掃き掃除する艶子。ウォーキングでホテルの前を通る女性・月(ちはる)とは、いつも「おはようございます」のあいさつを交わすだけの間柄だったが、小さなきっかけからその日常に変化が訪れ、月は「ここで働かせてください」と艶子に頼むのだった……。
* * *
艶子のラブホテルをたびたび利用するマリカ(神農幸)は、金属製のアタッシュケースを片手に、毎回別の男とホテルにやって来る。フロントで艶子に威張り散らすマリカは、偶然に艶子の持つ秘密を知ってしまう。そしてマリカは、その秘密と引換えにするかのように、自分の秘密を艶子に伝えようとする……。