
1980年代後半から90年代初頭。インディペンデント映画シーンでは、園子温、塚本晋也ら、現在も日本映画界で活躍する監督たちが刺激的な作品を送り出していた。
その中でも、特に異彩を放った唯一無二の存在、それが福居ショウジンだ。映像制作集団・ホネ工房を率いて『ピノキオ√964』や『ラバーズ・ラヴァー』などの作品を制作。それらの作品群は、強烈で過激な描写により“良識ある”人々から強い非難を浴びる一方、インディペンデントとしては驚異的な動員を記録し、海外でも上映、販売がされるほど熱狂的なファンを獲得した。
そして2007年。インディペンデント系若手監督のユニット“over8”のイベントにトークゲストとして出演し、刺激を受けた福居ショウジンは、10年ぶりにホネ工房を再結成。原点であるインディペンデントでの映画制作を開始した。そして完成したのが『the hiding −潜伏−』である。
別れた恋人のストーカー行為に怯えるヒロインが、自宅に侵入してきた謎の女の血液を媒介として、秘められた能力を覚醒させていく――。
予測不能のストーリーが進行する本作は、世界に類を見ないサイキック・シチュエーション・スリラーである。また、90年代に福居の伝説を体験していた、over8メンバーの蔭山周が撮影を担当したことにより、さらに凄みを増した福居の世界観を存分に体験できる作品となっている。
『the hiding −潜伏−』公開にあたり、2006年にオリジナルDVD作品として発表された「怨廻」を福居自ら再構成した『出れない』もあわせて公開される。この作品もまた、福居の新境地を示すものとして新鮮な驚きをもたらすに違いない。
これは単なる“復活”ではない。“潜伏”を経た、福居ショウジンの新たなる“覚醒”である。

元彼、伸一(友利栄太郎)にストーカー行為を受け会社を辞め、逃げるように引っ越して来たばかりの鳴海(溝手真喜子)は、心身喪失症に陥りアルコール依存の日々を送っていた。
ある日突然、謎の女・愛子(秋津ねを)が鳴海の部屋に乱入し彼女を拘束、潜伏を開始する。鳴海は愛子から凄まじい暴力を受ける。さらに、特異な「能力」を持った愛子は、自由を奪った鳴海の脳内情報をことごとく読み取っていく。そして愛子が鳴海から伸一に関する情報を引き出したとき、ふたりの前に伸一が現れる。
絶体絶命の鳴海だったが、愛子の能力が展開する中、次第に鳴海にも特異な能力が覚醒していく。
これは現実なのか? それとも狂っているのか? 覚醒の末に鳴海が見た真実とは!