夕映え少女
監督:山田咲/瀬田なつき/吉田雄一郎/船曳真珠
出演:吉高由里子 高橋和也/山田麻衣子 高橋真唯 柏原収史/波瑠 韓英恵 三村恭代 河合龍之介/田口トモロヲ 宝積有香 五十嵐令子 円城寺あや いしのようこ ほか
2008年1月下旬 渋谷ユーロスペースにて公開
2007年/カラー/ヴィスタサイズ/ステレオ/100分(4本計)
「伊豆の踊子」など知られる文豪・川端康成の作品は、時代を越えて多くの人々を魅了し、これまでさまざまな監督の手によって映像化されてきた。その作品は川端の生誕から100年を越えた今も若いクリエイターたちを刺激する。川端の初期短編集から女性を描いた4本を選び、気鋭の監督4人がメガホンをとったオムニバス映画『夕映え少女』が誕生した。
本作は、北野武、黒沢清の教授就任で話題となった東京藝術大学大学院映像研究科の二期生全員が参加し、一般劇場公開をめざして制作した作品である。山田咲、瀬田なつき、吉田雄一郎、船曳真珠という4人の監督をはじめ、約30人の学科生がそれぞれの学ぶ領域で力を発揮。教授陣らのアドバイスも受けつつ、企画立案、資金調達から、脚本作り、撮影、ポスプロ、宣伝に至るまで、映画制作のほぼ全過程を学生の手によりおこなった。
若きクリエイターたちの熱意に応え、キャストにも充実のメンバーが揃った。蜷川幸雄監督『蛇にピアス』の主演に抜擢され話題の吉高由里子をはじめ、高橋真唯、波瑠、河合龍之介ら、注目度急上昇中の若手俳優陣が顔を揃えているのは見逃せない。そして『カミュなんて知らない』などの若手実力派・柏原収史、唯一無二の個性を見せる田口トモロヲらの放つ存在感が、作品世界をガッチリと固める。
ひとりの女の再生を描いた「イタリアの歌」、若い娘の不思議な心理に視点を向けた「むすめごころ」、歓楽街に生きる三姉妹の絆を描く「浅草の姉妹」、川端自身を思わせる作家の目を通してある少女をめぐる事件を見つめた「夕映え少女」。4作に共通するのは、“今の世にも変わらぬ若いおんなごころの不思議”である。昭和10年前後、第2次大戦前夜の日本と、そこで繰り広げられた女たちの生き様が“おんなごころ”をキーワードに紐解かれる。
「イタリアの歌」
大学の実験室で爆発事故が起こる。女助手(吉高由里子)は火傷を負いながらも命を取り留めるが、博士(高橋和也)は全身火傷で手の施しようがなかった。病院で死の迫る博士の悲惨な姿を目の当たりにしながら、女助手はひとりで生き抜く決心を固める――。
「むすめごころ」
咲子(山田麻衣子)と静子(高橋真唯)は親友同士。咲子は自分の恋人である武(柏原収史)を、静子に譲ろうとする。思惑通りに仲の深まっていく武と静子の裏側で、咲子はふたりの幸せを願いながらも、嫉妬心に苛まれ、やがてひとつの愛をあきらめつつある自分に気付く――。
「浅草の姉妹」
東京の魔窟と呼ばれた、浅草の歓楽街。そこでたくましく生きる三姉妹がいた。彼女らは三味線弾きやレビューの踊り子をこなして互いに支えあっている。あるとき不良仲間から長女(三村恭代)を救い出そうと、次女(波瑠)と三女(韓英恵)がしめしあわせる――。
「夕映え少女」
作家・瀬沼(田口トモロヲ)は、一枚の絵画に導かれ、海岸の保養地に赴く。そこで見たのは、あの絵に描かれた夕映えのように美しい少女(五十嵐令子)の姿と、それに惹かれる大人の女性たち。胸を患って静養している少年と少女との恋愛は、やがてロマンに向かって突き進む――。