
ときに天正3年(1575年)、長篠の戦いで甲斐の武田勢を破った織田信長(椎名桔平)は、翌天正4年(1576年)、その天下統一事業を象徴するかのごとき巨城を、琵琶湖を臨む安土の地に建築することを決意した。信長がそのために白羽の矢を立てたのが、今川義元との戦以来、十数年に渡って才気を評価してきた熱田の宮大工・岡部又右衛門(西田敏行)であった。
「安土の山をまるごとひとつ、三年で城にせよ」。信長の直々の命を受け、即座に重責を引き受けた又右衛門であったが、城造りを指揮する総棟梁は、金閣寺を建立した京の池上家、奈良の大仏殿建造を担った中井一門といった名だたる番匠たちとの指図(図面)争いによって決めるという。一世一代の大仕事に、寝食すら忘れて指図作りに没頭する又右衛門。そしておこなわれた指図争いにおいても見事に勝利を納めた。
こうして、前代未聞の城造りが始まった。門下の大工たち、そして妻・田鶴(大竹しのぶ)と娘・凛(福田沙紀)に支えられながら、又右衛門は築城を進めていく。しかし、巨大な城を支えるためにはその主柱(大通し柱)に、これまでになく巨大な檜が必要であった。理想の木材は木曽上松にあると踏んだ又右衛門は、意を決して信長の敵方・武田勝頼の領国に危険を顧みず分け入っていく。一方、安土の作事場では新たな戦乱の暗雲が立ちこめ、又右衛門の帰還を待つ大工たちも戦地への出立を余儀なくされる。さらに、妻の田鶴にも病魔が迫っていた。やがて勃発する悲劇的な争い、仲間の死。果たして、又右衛門は信長の野心を現実のものにすることができるのだろうか……。