都心から離れた穏やかで上品な住宅地・希望ヶ丘。その一画に猫田千吉(宮川一朗太)と弘子(さとう珠緒)の夫婦が住んでいた。サラリーマンの千吉と専業主婦の弘子、周りからは幸せそうに見えるふたりだが、実はふたりの間には人には話せない秘密があった。千吉はED=勃起不全で、もうずいぶんの間、夫婦の営みがないのだ。
ある朝、千吉は通勤途中のバス停で、隣に住む近藤(伊藤克信)から、近所に住む夫たちの集まりへと誘われた。その集いとは「マスによる男の自立」を目指す秘密結社“男の自立の会”だった! とはいえ実態は単に妻とのセックスの拒絶する会だったのだが、その会はEDの千吉にとって心安らぐ場となるのだった。
千吉が“男の自立の会”に出席している同じころ、猫田家には近所に住む風水に詳しい主婦・サヤカが訪れ、弘子に夫婦の関係の危機を指摘すると「このままではどんな幸せも手のひらから逃げていく」と断言。弘子はショックを受ける。
なんとか幸せな生活を手にしようとする弘子は、風水グッズを買いあさり、夜はさまざまな手を尽くして千吉に迫るのだが、その異様さに千吉はますますEDの症状を強くしてしまう。
ところが、そんな千吉も会社で秘書の貞江(範田紗々)に色っぽく迫られると勃起するのだった。専務(桜金造)と貞江がたびたび社内で情事を繰り広げているのを知った千吉は、小型カメラを仕掛けて、専務と貞江の情事を盗撮して密かな楽しみにしていく……。
希望ヶ丘夫婦戦争
監督:高橋巖
出演:さとう珠緒 宮川一朗太 ほか
2009年6月13日(土)よりユーロスペースにてレイトショー ほか全国順次公開
2009年/HD/ビスタサイズ/88分
ATG作品や『帝都物語』『姑獲鳥の夏』、そして「ウルトラシリーズ」をはじめとする円谷プロ作品で、没後もなお熱狂的な支持を集める映画監督・実相寺昭雄。映像以外でもオペラ演出や文筆など多方面で才能を発揮した実相寺は、いくつもの官能小説を著した。そのひとつであり、1970年代に発表された問題作が、映画『希望ヶ丘夫婦戦争』として映像化を果たした。
一見幸せそうな夫婦が抱えている“性”の問題。夫は秘密クラブに入り“男の自由”としての快楽を追求しようとし、夫の愛を取り戻そうとする妻は、その美しい肉体をもてあます……。
1979年にもにっかつロマンポルノの1本として映画化された同作だが、今回の映画化では、現代の世相を反映した要素も盛り込み、現代の夫婦の物語として蘇らせた。
主演をつとめるのは、バラエティ番組をはじめテレビ・映画で大活躍するさとう珠緒。大人の女性の可愛らしさと、その一方で抱える欲求、そして心の闇を見事に表現し、女優としての資質を存分に発揮している。その夫には『家族ゲーム』で主演デビュー以来、映画・ドラマで幅広い役柄をこなす宮川一朗太。そのほか、伊藤克信、イジリー岡田、桜金造ら個性派と、川村亜紀、範田紗々ら女優陣が脇を固める。
監督は『infinity ∞〜波の上の甲虫〜』などの高橋巖。助監督として実相寺昭雄監督に師事した実相寺ワールドの継承者が、実相寺門下の若いスタッフを束ね、テンポよい演出でユーモラスな中に人間の心の奥深さを描き出してみせた。
- さとう珠緒
- 宮川一朗太
- 伊藤克信
- イジリー岡田
- 桐島優介
- 古屋暢一
- 小川はるみ
- 伊藤聖子
- 川村亜紀
- 紫とも
- 桜金造
- 範田紗々
- AI.NEO
- 監督:高橋巖
- 原作・企画:実相寺昭雄/実相寺知佐子
- 製作:小林洋一
- プロデューサー:太田裕輝/鈴木政信
- アシスタントプロデューサー:中川憲子
- 脚本:松本恭佳
- 撮影:八巻恒存
- 照明:丸山文雄
- 録音・整音:星一郎
- 美術:内田哲也
- ヘアメイク:水野みゆき
- 衣裳:川崎健二
- 編集:矢船陽介
- 助監督:安原正恭
- 制作担当:高橋誠喜
- 音楽:松永宏紀
- 制作協力:株式会社コダイ
- 制作・配給:株式会社バイオタイド
- 宣伝協力:太秦
- 製作:株式会社エースデュース