
滝川ミサキ(藤堂海)は、ノンフィクション作家を目指している24歳。志は高いつもりだが、出版社からは企画がいつも二番煎じだと言われてばかりだ。いまはスーパーでバイト中、アパートの更新料にもこと欠くフリーター生活だ。
ある朝、ミサキに奇妙な電話がかかってくる。“滝川ミサキ”が急病で倒れ、病院に運ばれたというのだ。ミサキが“滝川ミサキ”本人であることを告げると、電話の相手は絶句する……。
面白い原稿が書けるかもしれないと思ったミサキは、バイト先の同僚・丸山アスカ(阿久沢麗加)と一緒に“滝川ミサキ”が入院している病院を訪ねる。昏睡状態のその女の顔にミサキは見覚えがあった。以前働いていた出版社の先輩でミサキの面倒をよく見てくれた吉村靖子だったのだ。
靖子が持っていた荷物は、洋服と下着と化粧品、それに現金と、滝川ミサキ名義の住民票と預金通帳だけ。なぜ、靖子はミサキの名前を名乗っていたのか? かつての職場を訪れたミサキは、靖子がある日突然、会社に来なくなり姿を消していたと知らされる。そして家族に連絡をとろうと探し当てた住所にいたのは“吉村靖子”本人だった。“吉村靖子”という名前と経歴も他人のものだったのだ。
女の容態は悪化し、最後まで本当の名前を名乗らないまま息を引き取った。死の直前、つかの間意識を取り戻した女が残した言葉を頼りに、ミサキはアスカとともに長野県の小諸市へと向かう。女の足跡を捜すミサキとアスカは、やがて女の壮絶な人生に触れることになる……。