滝川ミサキ(藤堂海)は、ノンフィクション作家を目指している24歳。志は高いつもりだが、出版社からは企画がいつも二番煎じだと言われてばかりだ。いまはスーパーでバイト中、アパートの更新料にもこと欠くフリーター生活だ。
ある朝、ミサキに奇妙な電話がかかってくる。“滝川ミサキ”が急病で倒れ、病院に運ばれたというのだ。ミサキが“滝川ミサキ”本人であることを告げると、電話の相手は絶句する……。
面白い原稿が書けるかもしれないと思ったミサキは、バイト先の同僚・丸山アスカ(阿久沢麗加)と一緒に“滝川ミサキ”が入院している病院を訪ねる。昏睡状態のその女の顔にミサキは見覚えがあった。以前働いていた出版社の先輩でミサキの面倒をよく見てくれた吉村靖子だったのだ。
靖子が持っていた荷物は、洋服と下着と化粧品、それに現金と、滝川ミサキ名義の住民票と預金通帳だけ。なぜ、靖子はミサキの名前を名乗っていたのか? かつての職場を訪れたミサキは、靖子がある日突然、会社に来なくなり姿を消していたと知らされる。そして家族に連絡をとろうと探し当てた住所にいたのは“吉村靖子”本人だった。“吉村靖子”という名前と経歴も他人のものだったのだ。
女の容態は悪化し、最後まで本当の名前を名乗らないまま息を引き取った。死の直前、つかの間意識を取り戻した女が残した言葉を頼りに、ミサキはアスカとともに長野県の小諸市へと向かう。女の足跡を捜すミサキとアスカは、やがて女の壮絶な人生に触れることになる……。
行旅死亡人
監督:井土紀州
出演:藤堂海 阿久沢麗加 長宗我部陽子 ほか
2009年11月7日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
2009年/カラー/デジタル/112分
ある日、かかってきた1本の電話。その電話が“あなた”が突然の病に倒れたという報せだったら? どこかで“あなた”として生きてきた人間がいたとしたら? 映画『行旅死亡人』(こうりょしぼうにん)は、ジャーナリスト志望の若者が、他人として生きてきたひとりの女性の人生に迫っていく物語だ。
本作のタイトルである行旅死亡人とは、身元のわからない死者のことを指す法律用語である。現在の日本でも、日々、各地で行旅死亡人として扱われる死者がいる。1998年、ある行旅死亡人の記事が新聞の紙面を飾った。その記事で扱われた、身元を隠して生きてきた人間の人生に興味を惹かれたのが、本作の監督・脚本を手がけた井土紀州だ。瀬々敬久監督作品や木村祐一監督作『ニセ札』などの脚本家であり、監督をつとめた『ラザロ』三部作も話題となった井土紀州は、講師をつとめる日本ジャーナリスト専門学校が初めて製作する長編映画の監督依頼を受け、かつて読んだ新聞記事から発想を膨らませた作品の製作を決意する。そして井土監督作品の製作に携わってきた映像製作集団スピリチュアル・ムービーズが参加し、同校とのタッグにより映画『行旅死亡人』が完成した。
主人公のミサキには藤堂海、ミサキの友人・アスカには映画初出演の阿久沢麗加という若手を抜擢。たなかがん、小田篤、本村聡、長宗我部陽子ら実力派キャストが脇を固めた。
いくつもの謎がやがてひとつに収束していき浮かび上がる真実。往年の日本映画を彷彿とさせるような、見ごたえのある娯楽作品だ。
- 藤堂海
- 阿久沢麗加
- たなかがん
- 小田篤
- 本村聡
- 長宗我部陽子
- 監督・脚本:井土紀州
- 企画:上野昂志/柳沢均
- プロデューサー:沼口直人/吉岡文平
- 撮影・照明:伊藤学
- 録音:小林徹哉
- メイク:片桐愛未/鈴木彩
- 装飾:坂本千斗/後藤陶子/瀧口修平
- 記録:久保田貴子
- 助監督:宮田耕嗣/川崎龍太
- 制作担当:桑原広考/吉川正文
- 長野ロケ協力:宇野昭
- 製作協力:スピリチュアル・ムービーズ
- 配給協力:マジックアワー
- 宣伝協力:『行旅死亡人』製作委員会
- 製作:日本ジャーナリスト専門学校