彼女の物語
夜の街。ビルの非常階段でうずくまっていた若い女(佐伯佳奈杷)に男(田中冬星)は声をかけた。女はガランとした男の部屋へとついていく。男は、自分が末期ガンで余命わずかなことを明かす。男の想い出のフィルムを見ながら会話を交わす中で、女の中に哀しい記憶がよぎる――。
美月の物語
美月(奥真紀子)はマホ(中嶋たまみ)の部屋で目を覚ました。ふたりの関係は、恋人。マホの部屋は、美月が働く店と美月の家の中間にある。だから美月は帰りが遅くなるとたびたびマホの部屋に泊まる。マホはいつもそんな美月を笑顔で迎えてくれる。マホは男と付きあっていたが、美月と知りあってからはもう男とはセックスしないという。一途に美月を想ってくれるマホの気持ちに、美月はどこかまっすぐ向きあえない。自宅に帰る途中、電車を乗り過ごして子供のころ過ごした町に着いた美月は、変わりゆく風景を眺める中で、自分の正直な気持ちに気づきはじめる――。
ヒカリの物語
ライターの仕事をしているヒカリ(岩元英理)は、取材を済ませると内山(北澤彰斗)の住むアパートへと向かう。ヒカリはこの20歳年下の美しい青年に50万円を貸しており、彼はその金で部屋を借り、出会い系チャットのサクラのアルバイトをして少しずつヒカリに借金の返済をしている。ヒカリの自宅のマンションには夫と子供が待っているが、夫は失業中で、なかなか仕事が見つからない焦燥と引け目から抑うつ状態になっていた。かつての同僚で編集者の野々村(伊澤恵美子)は仕事のストレスから自傷行為に走る。ヒカリにとって、内山の部屋で過ごすときが心安らげる時間だった――。