
ただひたすら田んぼだけが広がる中に建っているプラスティック工場。そこが木下律子(森谷文子)の職場だ。工場の製品から不良品をより分け、機械の調整をし、製品を運ぶ。そんな単調な作業を繰り返す毎日を律子は送っている。家に帰ると仕事から帰ってきた夫(西本竜樹)との会話はほとんどなく、食事も寝るのも別々の、ただ同じ家に暮らしているだけの関係だ。
ある日の工場からの帰り道、律子は大きな買い物袋を抱えた妊婦を見かけ、気さくに声をかけて荷物を持つ。そして律子は、その妊婦と思いがけず再会を果たすことになる。臨時パートとして、その妊婦・山田千夏(今野早苗)が工場にやってきたのだ。
無職の夫(朝真裕稀)に替わり妊娠中にもかかわらず自分が働くという千夏に、律子はじめ工場の一同は感心。先輩の律子は親切に工場の仕事を教え、千夏も律子に信頼を寄せていく。
その一方で、千夏との出会いは律子の心にある傷を呼び覚ましていた。だが、千夏と一緒に時間を過ごす中で過去のつらい経験を明かすことができた律子は、その傷を乗り越えていこうとする。
律子は夫との関係を修復しようと努力を重ねていくが、その気持ちは夫には届かず、すれ違いが重なっていくだけだった。
そんな中、千夏の夫は仕事を見つけ、工場まで千夏を送ると優しい言葉をかけて仕事へと向かう。その様子を見かけた律子の中には、暗い感情が芽生えはじめていた。
「あなたが普通にできることが、私にはできない……」。律子の心の中の暗い感情は、徐々に大きさを増していく……。