
かつての恋人との思い出を胸に、バイクで北の街を目指すひとりの女性。彼女は、旅の途中で不思議な青年と出会う――。
俳優・作家として多彩な才能を発揮する大鶴鶴丹が『となりのボブ・マーリィ』以来14年ぶりに手がけた監督作品『私のなかの8ミリ』は、オートバイと8ミリフィルムへの愛情が込められた、ファンタジックなロードムービーだ。
主人公のミハルを演じるのは岡田理江。ドラマ「愛の劇場 再婚一直線!」「新・科特研の女」などで女優として活躍するほか、NHK「探検ロマン世界遺産」のリポーターやフジテレビ「熱血!平成教育学院」など幅広い活動で知られる彼女が、人生の岐路に立った女性をナチュラルに演じている。また、大型バイク免許所持という特技を活かし、バイクに乗るシーンも自ら演じている。
ミハルの前に現われる青年には、NHK大河ドラマ「葵 徳川三代」や映画『ホタル』『砂時計』の高杉瑞穂。そのほか、長谷川初範、湯江健幸、星野園美、赤座美代子と、確かな演技力を持った実力派俳優陣が脇を固める。
そして写真家・桐島ローランドが撮影監督をつとめていることも、本作の大きな話題のひとつだ。数々の話題作で知られる桐島ローランドは、同時にパリ・ダカールラリーの二輪部門に参加し完走を果たすほどのバイク好きでもある。映画撮影監督デビューとなる本作でも、バイクの持つ魅力を映像として鮮やかに映し出してみせた。
ミハルの旅を静かに見つめるような本作は、観客の心にもともに旅をするような感覚を呼び起こすに違いない。

北の街を目指してバイクで走るミハル(岡田理江)。彼女の頭によぎるのは、映像カメラマンを目指していたかつての恋人が撮った、自分の写った8ミリフィルムの映像の記憶だった。
久しぶりのバイクで勘が鈍っていたミハルは、峠の道で運転を誤り、草むらに投げ出されてしまう。草むらに寝転んだままのミハルに、ひとりの青年(高杉瑞穂)が心配して声をかけてきた。
青年のバイクのタンクに残る傷を見て、不思議な気持ちにとらわれるミハル。ミハルは青年と行動をともにすることになった。 山の中で一息つくミハルに、青年は8ミリカメラを向ける。時代遅れの8ミリフィルムの映像が好きだという青年に、ミハルは言う。「頭の中にある想い出の色に似ているのかもしれない」と。
ふたりは、峠を越えて日本海へと出る。青年は去っていき、ミハルは久しぶりの運転で調子の悪くなったバイクを地元のバイク屋(長谷川初範)に預け、旅館で一晩を過ごした。
翌日、整備の終わったバイクで走り出したミハルの前に、再びあの青年が現われた。まだ遠い目的地までの道程を、ミハルは青年とともに走ることになる。
夜になり、山の中で一夜を越すことになったふたり。焚き火の火を見つめながら、ミハルは自分が北へ向かう理由を青年に話しはじめる……。