深夜、少女が1台の乗用車の社内に引きずり込まれる。翌朝、少女は無残な死体となって川べりで発見された。現場に駆けつけた刑事の織部孝史(竹野内豊)と真野信一(伊東四朗)は、死体に強姦と薬物注射の痕跡を発見する。
少女のは、会社員の長峰重樹(寺尾聰)の娘・絵摩と判明する。妻を亡くして以来、ひとり娘の成長を心の支えとして生きてきた長峰の落胆は計り知れないものがあった。絶望し、無気力な日々を送る長峰の家の留守電に、匿名の密告電話が入る。その電話が伝えるのは、絵摩を殺した犯人の名前「スガノカイジ」「トモザキアツヤ」の名前と、トモザキの住所だった。
警察から捜査の進展状況を知らされることもなく苛立ちを覚えていた長峰は、電話に疑いを抱きつつも教えられた伴崎のアパートを訪ね、そこで絵摩殺害の証拠を見てしまう。激しい怒りに襲われた長峰は、伴崎に刃を突き立てる――。
やがて、捜査本部の織部と真野のもとに姿を消した長峰から1通の手紙が届いた。そこには、長峰が伴崎を殺害した事実と、少年法で保護される未成年の少年犯への刑罰の軽さへの疑問、そして復讐の虚しさを知りつつも犯人を許せない心情が綴られていた。警察が守るべきものの不条理に、刑事たちは苦悩する。
全国に指名手配された長峰は、もうひとりの犯人・菅野を追い長野へとやってきていた。長峰が滞在するペンションのオーナー・木島(山谷初男)と娘の和佳子(酒井美紀)は偽名を使って宿泊する長峰の正体を知りつつも、気づかぬ振りをする。そして、織部と真野も菅野が長野にいることを突き止めていた。こうして被害者の父親と刑事たちは対峙することになる――。
さまよう刃
監督:益子昌一
出演:寺尾聰 竹野内豊 伊藤四朗 ほか
2009年10月10日(土)より全国ロードショー
最愛の娘を少年たちに惨殺された父親。少年法によって“保護”されている犯人の名前を知ったとき、父親は自らの手で復讐を誓い、刑事は父親を追う。それぞれが守ろうとするものは、なんなのか――。
日本推理作家協会賞作『秘密』や、直木賞受賞作『容疑者Xの献身』をはじめ、『手紙』「白夜行」など多くの作品が映画化・ドラマ化されている人気作家・東野圭吾。その作品の中でも問題作との声も高い『さまよう刃』が、待望の映画化を果たした。
娘を殺した犯人を追う主人公・長峰重樹を演じるのは寺尾聰。『半落ち』『博士の愛した数式』などで見せた重厚な存在感で、主人公の苦悩を巧みに表現している。
長峰を追う若き刑事・織部には、『冷静と情熱のあいだ』や新境地を見せた『あの空を覚えている』の竹野内豊。ベテラン刑事の真野にはコメディからしリアスまで幅広い役どころをこなす伊藤四朗が貫禄の演技を見せる。そのほか、長峰の滞在するペンションの娘に酒井美紀、その父親に山谷初男など、充実のキャストが揃った。
監督・脚本は『ひまわり』『贅沢な骨』など行定勲監督作品のプロデュース・脚本をはじめ、多くの作品で脚本家として活躍し、2008年に『むずかしい恋』で監督デビューした益子昌一。撮影に日本・中国双方で活躍する王敏、音楽に押井守監督作品をはじめ幅広いジャンルを手がける川井憲次ら実力派スタッフとともに、重厚な作品を作り出した。
少年犯罪の実状と被害者家族の心情という、現在の社会に大きく関わる問題を取り上げ、観る者の心に深く訴えかける衝撃作の誕生だ。
- 長峰重樹:寺尾聰
- 織部孝史:竹野内豊
- 真野信一:伊東四朗
- 木島隆明:山谷初男
- 木島和佳子:酒井美紀
- 監督・脚本:益子昌一
- 原作:東野圭吾「さまよう刃」(角川文庫刊)
- 製作:平城隆司/中曽根千治
- 企画:川田直美/梅澤道彦/遠藤茂行
- プロデュース:香月純一
- プロデューサー:石田基紀/山田兼司/長澤昌子
- 撮影監督:王敏
- 照明:三善章誉
- 美術:福澤裕二
- 装飾:柴田博英
- 録音:山方浩
- 特機:露木聡
- 衣裳:平尾俊
- ヘアメイク:中西樹里
- 編集:三條知生
- 音響効果:西村洋一
- スクリプター:二階堂舞子
- 助監督:早川喜貴
- キャスティング:小林勝絵
- 制作担当:安田邦弘/甲斐路直
- 音楽:川井憲次
- 制作プロダクション:オニオン
- 製作:『さまよう刃』製作委員会
- 配給:東映