ダンススタジオで、藤堂葉月(井村空美)は、ひと組の男女が踊る華やかなソシアルダンスを見つめていた。踊っているのは、葉月の姉の陽花(さとう珠緒)と、彼女のダンスパートナーの月岡亮介(勝野洋輔)だ。
藤堂姉妹の亡き両親はソシアルダンスの名手で、このスタジオも父母から受け継いだものだ。陽花はすでに競技会で優勝する腕前だが、大学生の葉月は、古くから姉妹を知る内海(今拓哉)に競技会出場を勧められても断り続けていた。
内向的な葉月は、ただのダンスパートナーではない姉と亮介の関係を知りつつ、自分はひとり、謎の差出人から送られてくるクリムトの絵のポストカードと、つるし人形で部屋を飾るのを楽しみにしていた。
自分に姉や母のような才能はないと思っている葉月だが、競技会のためではなく、ただ好きだからという理由でひとりダンスの練習をしていた。それを見かけた亮介は、葉月の練習の相手を買って出る。
葉月と亮介が練習をしているのを知った陽花は、葉月にダンスパートナーとして滝田(古川耕史)を紹介し、競技ダンスを勧める。滝田と組んで踊ってみたものの、やはり気持ちが乗らず、葉月は練習をやめてしまう。
だが、葉月のことが気に入った滝田は、夜の神社の境内で葉月に迫る。通りかかった亮介に葉月は助けられ、自宅まで送ってもらうが、ふたりの様子に陽花は嫉妬を燃やすのだった。
やがて、亮介からペア解消を申し出されショックを受けた陽花は、雨の中をさまよい歩く。そんな陽花に傘を差し伸べたのは、彫師の青年・桐悟(鈴木一真)だった。桐悟の家を訪れた陽花は、意外な事実を知る――。
刺青 匂ひ月のごとく
監督:三島有紀子
出演:井村空美 さとう珠緒 有薗芳記 鈴木一真 ほか
2009年6月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてレイトショー
2009年/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/89分
2010年に文壇デビュー100年を迎える文豪・谷崎潤一郎。その名作のひとつである「刺青」を現代に舞台を移して映像化した官能文学ロマン「刺青」シリーズの第4弾となる最新作が『刺青 匂ひ月のごとく』だ。“姉妹”と“ソシアルダンス”というモチーフを加え、新たな官能の世界を作り出した。
主人公の葉月を演じるのはドラマ「ヤンキー母校に帰る」でデビュー、「魔弾戦記リュウケンドー」のレギュラーで人気となり、以降も映画『東京フレンズ THE MOVIE』、ドラマ「きらきら研修医」、舞台「CALL」などで活躍する井村空美。本作では美しい肉体を披露、大胆に生まれ変わる女性を体当たりで演じた。また、1ヶ月の特訓を積んで挑んだソシアルダンスも見所だ。
葉月の姉・陽花役にはさとう珠緒。普段、バラエティ番組で見せるのとは異なった官能的な表情で激しい濡れ場を演じるのに加え、ダンスパートナーを演じる勝野洋輔とともに華麗なソシアルダンスも披露する。
そして、彫師の青年・桐悟には鈴木一真が扮し、その独特な存在感で姉妹と観客を不思議な刺青の世界へと誘っていく。
監督は、NHKで「トップランナー」などドキュメンタリーをはじめ数多くの番組を手がけ、2003年以降はフリーとしてドラマ演出や脚本家、劇作家として活躍する佐藤有紀子。初の長編映画となる本作では、『夕凪の街 桜の国』の国井桂による脚本を、女性の視点で「情念」と「愛憎」を丹念に描いている。
日本では初の女流監督による谷崎文学の映画化となる『刺青 匂ひ月のごとく』。ミステリアスな展開と官能との融合により、濃厚なエロティシズムの世界が生み出された。
- 井村空美
- さとう珠緒
- 有薗芳記
- 鈴木一真
- 監督:三島有紀子
- 原作:谷崎潤一郎(中央公論新社刊)
- 脚本:国井桂/li>
- 製作:松下順一
- エグゼクティブ・プロデューサー:藤岡修
- 企画:北川光秀
- プロデューサー:奥野邦洋/小貫英明
- 撮影:会田正裕
- 照明:加藤賢也
- 録音:佐藤一憲
- 美術:井上静香
- 編集:宮崎清春
- 劇中刺青:田中光司
- ダンス振付:大竹辰郎
- 助監督:吉田和弘
- 制作担当:櫻井健作
- 音楽監督:遠藤浩二
- 製作・配給:アートポート
- 制作:本田エンターテインメント
- 制作協力:円谷エンターテインメント