戦後、混乱期の東京。大谷(浅野忠信)は優れた才能を持つ小説家であるが、毎晩のように酒を呑み歩き、借金を重ね、妻以外の女と関係を持つという破滅的な生活を送っていた。貞淑な大谷の妻・佐知(松たか子)は、夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため、吉蔵(伊武雅刀)と巳代(室井滋)の夫婦が営む飲み屋・椿屋で働くことになった。
持ち前の気立てのよさと美しさで、佐知はたちまち人気者となり、椿屋はお客でいっぱいとなる。そして佐知自身も、働く自分が以前に比べて生き生きとしていることに気づいていた。
家にはたまにしか戻らないため、顔を合わせることの少なかった大谷と佐知。佐知が椿屋で働きはじめたことで、ふたりは以前より会う機会が増えていく。佐知はそれに喜びと幸せを感じていたが、それを告げられた大谷は「男には、不幸だけがあるのです」と、弱々しい言葉を返すのだった。
そんな中、大谷のファンで大谷に会うため椿屋に通っている真面目な工員・岡田(妻夫木聡)は、いつしか佐知の魅力に惹かれはじめていた。そして、佐知がかつて想いを寄せていた弁護士の辻(堤真一)も、美しさを増した佐知に好意を寄せていき、佐知の心は揺れていく。そんな佐知の様子に、大谷は自分が浮気を繰り返していることも棚上げにして、嫉妬心を抱いていく。
そして、ついに大谷は、バーで知りあった愛人の秋子(広末涼子)とともに姿を消してしまう。生きること、そして書くことに苦悩し、死を選ぼうとしたのだ……。
ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
監督:根岸吉太郎
出演:松たか子 浅野忠信 広末涼子 妻夫木聡 堤真一 ほか
2009年10月10日(土)より全国東宝系ロードショー
時代を超えて人々を魅了し、読み継がれている文豪・太宰治。その後期の傑作短編である「ヴィヨンの妻」が、生誕100年を迎えた2009年、『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』として映画化を果たした。
酒、浮気、借金と放蕩の限りを尽くす小説家。その妻は、夫に翻弄されながらも彼を愛し続ける……。
鈴木清順監督『ツィゴイネルワイゼン』、相米慎二監督『セーラー服と機関銃』などを手がけてきたベテラン脚本家・田中陽造が、太宰の「ヴィヨンの妻」に「思ひ出」「灯篭」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手」など、その他の太宰作品の要素も加えて脚本を執筆。『遠雷』『雪に願うこと』『サイドカーに犬』などの名匠・根岸吉太郎がメガホンをとった。さらに、美術に種田陽平、衣裳に黒澤和子と、実力派スタッフが参加している。
主人公の佐知を演じるのは、田中陽造が執筆時からイメージしていたという松たか子。多くのドラマや映画、舞台で活躍する松だが、意外にも本作が長編映画初主演となる。自らの代表作とすべく臨んだ役で新境地を見せる。
そして、太宰治自身を思わせる小説化で佐知の夫である大谷には浅野忠信、大谷の愛人・秋子に広末涼子、佐知に好意を抱く青年・岡田に妻夫木聡、佐知がかつて想いを寄せた弁護士・辻に堤真一と、日本映画界を代表する豪華な俳優たちが顔を揃えた。
放蕩夫のためにさまざまな苦難に直面し、周囲からは恵まれない境遇にも見える佐知。しかし彼女は決して悲観することなく、明るく、たくましく生きていく。最高のスタッフ・キャストによる、男女の本質を描いた深みある大人のラブストーリーが、いま誕生する。
- 松たか子
- 浅野忠信
- 室井滋
- 伊武雅刀
- 光石研
- 山本未來
- 鈴木卓爾
- 小林麻子
- 信太昌之
- 新井浩文
- 広末涼子
- 妻夫木聡
- 堤真一
- 監督:根岸吉太郎
- 脚本:田中陽造
- 原作:太宰治
- 製作:亀山千広/山田美千代/田島一昌/杉田成道
- エグゼクティブプロデューサー:石原隆/直井里美/酒井彰
- プロデューサー:前田久閑/木幡久美/菊地美世志
- アソシエイトプロデューサー:稲葉直人
- 撮影:柴主高秀
- 照明:長田達也
- 録音:柿澤潔
- 美術監督:種田陽平
- 美術:矢内京子
- 編集:川島章正
- スクリプター:岩倉みほ子
- 衣裳デザイン:黒澤和子
- 衣裳:古藤博
- ヘアメイク:倉田明美
- 装飾:鈴村たか正
- フードスタイリスト:飯島奈美
- 助監督:たか橋正弥
- 製作担当:岩下真司/斎藤健志
- ラインプロデューサー:宮崎慎也
- 音楽:吉松隆
- 製作:フジテレビジョン/パパドゥ/新潮社/日本映画衛星放送
- 制作プロダクション:フィルムメイカーズ
- 配給:東宝