
九十九里の海にほど近い乗馬クラブ。春風優(伊藤ゆみ)は、そこで働いていた。
ある日、乗馬クラブの近くに住む木崎ケン(澁谷武尊)と両親がクラブを訪ねてきた。木崎一家は7歳のケンが喘息のため、東京から空気のいいこの地に越してきたのだ。乗馬を楽しんだケンは、厩舎にいる馬・エリザベスに興味を示して近づいた。それに気づいた優はケンを突き飛ばし「あたしの馬に近づかないで」ときつい言葉をかけるのだった。
翌日、役所にあいさつに訪れたケンの父・健史(緒形幹太)は、窓口で頭を下げる優の姿を目にする。優の父・元治(菅田俊)は九十九里にある小山競馬場で厩務員をしていたが、競馬場が閉鎖され、働きに出た先で事故で亡くなった。優は、エリザベスをもう1度小山で走らせたいという父の遺した夢を実現しようと、役所に何度も嘆願に来ているというのだ。
事情を知った健史は優に声をかけるが、優はぶっきら棒な態度をとる。そして乗馬クラブにやってきたケンにも冷たいままだ。誰の力も借りようとせず無愛想な優は、クラブの経営者で唯一の身寄りである宗司(松田賢二)と、その妻・美恵子(渋谷亜希)にとって悩みの種だった。
だが、毎日乗馬クラブに通い、無邪気に話しかけてくるケンの相手をするうちに、優は少しずつ笑顔を見せるようになっていく。まるで姉弟のように時間を過ごし、暗くなるとケンを送っていくのが優の日課になっていった。
そんなある日、宗司に仕事を頼まれた優は、ケンをひとりで帰す。しかし、夜になってもケンは家に戻らなかった。そして――。